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【エンタメよもやま話】17年間で米国から370万人の職を奪った国とは…

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大統領専用機搭乗前に記者団に話をするトランプ米大統領。18日には、米製品の輸出に関し「何でもかんでも安全保障を根拠にして、米製品の購入を難しくすべきではない」とツイッターで述べた=18日、メリーランド州(ロイター=共同)
大統領専用機搭乗前に記者団に話をするトランプ米大統領。18日には、米製品の輸出に関し「何でもかんでも安全保障を根拠にして、米製品の購入を難しくすべきではない」とツイッターで述べた=18日、メリーランド州(ロイター=共同)

 さて、今週ご紹介するのは、米国の経済に関するお話です。

 中国の中央部にある湖北省の省都、武漢市から全世界に拡大した新型のコロナウイルスによる肺炎が世界で猛威を振るっていますが、米国では最近、この新型肺炎とは別のところで“やはり中国はわが国を脅かす脅威だ”との見方が広がっています。それは、最近、しかるべき団体の調査で、米国人の雇用が中国によって大きく奪われていることが明らかになったからです。今回の本コラムではこの一件について説明いたします。

    ◇   ◇

 1月30日付の米経済ニュース専門局CNBCや米紙ロサンゼルス・タイムズ(いずれも電子版)などが驚きをもって伝えているのですが、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟した2001年以降、米国と中国との間で貿易不均衡が拡大し続けた結果、2018年までに米で370万人もの雇用が中国によって奪われたことが明らかになったのです。

 米ワシントンDCにある無党派・リベラル系のシンクタンク「経済政策研究所(Economic Policy Institute=EPI)」が同日、発表した調査結果をもとに、複数の欧米主要メディアが報じたところによると、2001年以降、米国が巨額の対中貿易赤字を抱えた結果、2008年のリーマンショックで職を失った170万人を含む計370万人の雇用が消失したのです。

 失われた雇用全体の約4分の3にあたる280万人は製造業に従事する人々でした。世界の全産業の中で、米国が伝統的に優位性を保っていた分野です。米国が抱える対中貿易赤字は今も拡大を続けており、農業部門を除く分野では雇用者数が増加し続けているにもかかわらず、全米50州で雇用状況に悪影響を与えていたのです。

 そして全米50州のうち、最も大きな打撃を受けていたのはカリフォルニア州で、65万4100人の雇用が失われていました。以下、テキサス州(33万4800人)、ニューヨーク州(18万5100人)、イリノイ州(16万2400人)、フロリダ州(15万700人)-と続きます。

 なぜカリフォルニア州が最悪だったのか。理由は簡単。最も悪影響を受けていたのが、シリコンバレーで働く人々のように、コンピューターや電子部品の製造といった先端技術分野の仕事に従事していたからです。こうした人々は、中国のせいで2001年から2018年までに134万600人が失業の憂き目に。この数字は全失業者数(370万人)の36・2%を占めていました。最も打撃を受けた議会地区の上位10カ所のうち、6カ所はカリフォルニア州内で、うち4カ所はシリコンバレーやサンフランシスコのベイエリア地区で、失業者の80%はこうした仕事に従事していたといいます。

 また、ジョージア州の1つの地区とノースカロライナ州の2つの地区も、コンピューターや電子部品、繊維、アパレル、家具といった製造業に従事している人々が大きな打撃を受けていました。

 2018年以降、顕在化している米中貿易戦争ですが、米側で最も被害を受けているのは穀倉地帯のグレイン(穀物)ベルトを含む中西部の農家と言われてきました。

 しかし、実は、コンピューターや電子部品といった先端技術分野の仕事に従事する人々が多いシリコンバレーに代表される西海岸も、中国での製造業の活況による被害を大きく受けていたことが分かったのです。

    ◇   ◇

 「経済政策研究所(EPI)」の調査結果によると、米の抱える対中貿易赤字は2001年の830億ドルから2018年には4195億ドルに増えました。2001年に中国がWTOに加盟して以来、年平均で198億ドル、率にすると10%ずつ増加していたのです。

 毎年の対中貿易赤字額を合計した総額は、WTO加盟後の2002年から2018年までで4兆7000億ドルにもなりました。

 とはいえ、2018年から2019年11月までは一転、減少しました。しかし、これはここ数年、米国が力を入れていたシェールオイル(地下深くの頁岩=けつがん=層と呼ばれる硬い地層に含まれる原油)の輸出が増えたためで、石油製品以外では増加を続けています。

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 今回の調査結果について、「経済政策研究所(EPI)」の貿易・ものづくり政策に関する研究部門の責任者、ロバート・スコット氏は前述のCNBCに「過去20年間で、米は500万人近くの製造業の雇用を失った。一般の米国人にとって壊滅的な打撃である」と強調。

 さらに、コンピューターや電子部品といった先端技術分野で中国に職を奪われた人々が想像以上に多かったことについて、前述のロサンゼルス・タイムズ紙にこう訴えました。

 「中国の経済はローテクで労働集約的だと思うかもしれません。しかし昨今は、扱う製品も、繊維やアパレル、ハイテク製品、コンピューター、携帯電話、電子機器、ビデオのスクリーンなど、急速にグレードアップしています。そしてそれは、米の雇用を奪う最大かつ唯一の産業なのです」

 実際、2018年に米が先端技術の分野で抱えた対中貿易赤字額は1346億ドルで、この年の対中貿易赤字全体の32・1%を占めました。

 これとは対照的に、2018年の先端技術製品の分野での対中貿易黒字額はわずか65億ドル。米の先端技術製品における貿易収支額は、2001年から2018年に1327億ドルも減少していたのです…。

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 巨額の貿易赤字を長年、放置した結果、莫大な富と雇用を海外に奪われてしまった米国ですが、ドナルド・トランプ米大統領が目の敵(かたき)にする中国のせいで、米の雇用が大きく奪われていたことが今回、数字の上ではっきりしたわけです。

 とはいえ、今回の「経済政策研究所(EPI)」の調査結果に疑問を呈する声もあります。ロサンゼルスのコンサルティング会社「ビーコン・エコノミクス」のエコノミスト、クリストファー・ソーンバーグ氏は前述のロサンゼルス・タイムズ紙に「中国と貿易取引を行わなければ、これまで彼らが奪った多くの仕事が魔法のように現れるという仮定に困惑させられる」と前置きし「メキシコ、ベトナム、インドネシアに対する貿易赤字の影響も見過ごせない」と述べました。

 しかし、トランプ米大統領が憤慨するように、中国が米の多くの雇用を奪っていることは他のデータからも明らかなのです。2018年5月14日付の米金融情報サイト、マーケット・ウォッチなどによると、米では名門マサチューセッツ工科大学(МIT)のデビッド・アーサー氏やアップジョン研究所のスーザン・ハウスマン氏といった気鋭の経済学者たちによって、米の雇用を大きく奪ったのは、企業が進めるロボット化よりも中国であるとの研究結果が出ているからです。

 「経済政策研究所(EPI)」のロバート・スコット氏は前述のロサンゼルス・タイムズ紙に「巨額の対中貿易赤字を削減するには米ドルと他国の通貨との為替レートの再調整しかない」と断言し、「米ドルの価値を25%、もしくは30%下げる必要があります。しかし、ウォール街は強いドルを好むため、トランプ米大統領はこうした通貨問題に積極的に取り組みませんでした。しかし、この方法が海外企業への製造委託のコストを安くするのです」と訴えました。

 今回、明らかになった「経済政策研究所(EPI)」の調査結果を受け、これまで制裁関税による報復合戦を繰り広げてきた米中貿易戦争は新たな展開を迎えるかもしれません…。        (岡田敏一)

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【プロフィル】岡田敏一(おかだ・としかず) 1988年入社。社会部、経済部、京都総局、ロサンゼルス支局長、東京文化部、編集企画室SANKEI EXPRESS(サンケイエクスプレス)担当を経て大阪文化部編集委員。ロック音楽とハリウッド映画の専門家、産経ニュース( https://www.sankei.com/ )で【芸能考察】【エンタメよもやま話】など連載中。京都市在住。

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