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【経済インサイド】波紋呼ぶ「明治のアイス、賞味期限設定」 食品ロス削減の潮流に逆行も

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明治のアイスの包装に表示する賞味期限のイメージ
明治のアイスの包装に表示する賞味期限のイメージ

 明治が1月下旬、市販するアイスクリーム全商品について、令和3年4月をめどに賞味期限を設定すると発表したことに対する波紋が広がっている。同社は「消費者からの要望に応えた」と説明するが、もともとアイスクリームは食品表示基準により、賞味期限の表示を省略できる「品質変化が少ない食品」とみなされており、関係者からは食品ロス削減のトレンドに逆行する可能性も高いとして、戸惑いの声が聞かれる。

 同社が1月22日に行った報道陣に対する説明では、同社が販売するアイス約30品目のうち、まず「エッセル スーパーカップ」シリーズの7品目について、6月の出荷分から先行して賞味期限を記載。他の商品も順次切り替え、3年4月をめどにすべての市販アイスで表示するという。

 記載する賞味期限は、スーパーカップでは一部を除き、製造日から2年後に設定する。海外事例を参考したほか、保存試験の結果で決めたという。

 実は、アイスには賞味期限を表示する必要がない。

 内閣府の食品表示基準によると、アイスは砂糖や食塩、酒類などと並んで、消費期限や賞味期限を省略できるとされる。消費者庁の担当者は「マイナス18度以下で保存されるならば、品質変化が少ない」と科学的根拠を説明しており、メーカー各社も「要冷凍(マイナス18度以下で保存)」などと記載することで賞味期限表示を省略している。

 それにも関わらず、あえてアイスの賞味期限表示に踏み切った理由について、担当者は消費者に対する意識調査の結果を示した上、「消費者の食の安心に対する意識が高まっている」と強調。「アイスはいつまで食べられるのか」といった消費者からの問い合わせが年々増加し、「賞味期限の表示を希望する声が多かった」と説明する。

 だが、賞味期限の表示は関心が高まる食品ロス削減の流れに水を差す可能性がある。期限を過ぎたアイスを消費者が廃棄する場面が想定されるほか、小売業界には期限の3分の1を過ぎた商品を仕入れない「3分の1ルール」と呼ばれる商慣習がある。最近は「3分の1」の緩和が進んでいるが、期限表示により廃棄の可能性は出てくる。

 今回のニュースが報じられて以降、ネット上には「これまで問題ないとされていたのに…」「フードロスの観点からは大きな負担」など、明治の措置を疑問視する声があふれた。

 発表時の明治と報道陣の質疑応答も食品ロス関連に集中した。食品ロス削減は国連の持続可能な開発目標(SDGs)でも目標の一つに設定されており、最近は食品を取り扱う関連企業共通の関心事項となっていただけに、今回の措置は潮流に逆行しているのではないかとの観点からだ。

 担当者は「食の安全」や「消費者の声」の2点を繰り返し強調した上で、食材を必要な家庭や施設へと橋渡しする「フードバンク」との連携強化を進めるとしたが、「これまでの高い保存性を自己否定するに至ったのはなぜか」について明確な回答はなかった。

 「2年」という期限についての説明にも歯切れの悪さが残った。

 明治は海外事例を基に、平成28年から保存試験を実施。「2年で品質劣化が少ないことが確かめられた」とするが、「3年では劣化がみられたのか」といった報道陣の質問には「試験は2年で終えた」と回答。28年時点は食品ロスの話題が現在ほど盛り上がっていなかった点を踏まえると、試験が「いつまで品質保証ができるか」ではなく、期限設定ありきで進められたことが見て取れた。

 他メーカーも明治に追随する動きはないようだ。あるメーカーの担当者は「安全性が法令で担保されている」と、現状では検討もしていないという。別のメーカーの担当者は「表示すべきは賞味期限ではなく、なぜ品質劣化が少ないのかの説明にすべきでは」と、トップメーカーの不可解な決定に首をかしげる。

 食品ロス問題に詳しいジャーナリストの井出留美氏は「たとえばデンマークでは、牛乳のパッケージに賞味期限の意味を表示しており、それが食品ロス削減に貢献する企業の啓発活動」と事例を挙げた上で、「世界の潮流が賞味期限の簡略化に動く中、あえて賞味期限を表示する明治の方向性は意外」と話している。(経済本部 佐久間修志)

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