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【ビジネス解読】社会問題解決で起業へ N高生発ブランドも

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紫外線(UV)カットという機能性を軸に据えたファッションブランドの立ち上げを目指す倉田速音さん(右)=1月16日、東京・北参道
紫外線(UV)カットという機能性を軸に据えたファッションブランドの立ち上げを目指す倉田速音さん(右)=1月16日、東京・北参道

 社会や人々が抱える問題の解決を目指して事業を立ち上げる「社会起業」への関心が高まっている。扱うテーマは環境問題から国内の格差問題まで多岐にわたり、若い世代が起業を目指すケースも目立つ。背景にあるのは働き方に対する意識の変化。高収入よりも、国などが扱い切れない問題に取り組むことで得られるやりがいに魅力を感じる若者が増えているという。ただ、社会問題の解決は容易ではないうえ、事業継続のための収益性の確保も必要で、社会起業には絶妙なバランス感覚が求められる難しさもある。

同じ悩みの人たちへ

 「クラウドファンディングを始める段階で、何着かの服を出しておきたい。全く違う素材のもので」

 1月中旬の東京都内のビルの一室。長めの袖のセーターを着た、茶色い髪の男子高校生の口調に自然と熱がこもった。

 自らのファッションブランドの立ち上げを目指す17歳の倉田速音(はやと)さん。通信制高校「N高校」の2年生だ。この日は試作品作りの打ち合わせのため、東京・北参道のファッション関連企業アミアズを訪れた。ブランドの軸には「紫外線(UV)カット」という機能性を据え、おしゃれなデザイン性と両立させる構想だ。

 起業を意識したのは中学3年生の時に読んだ実業家、堀江貴文氏の本がきっかけ。進学先にインターネット動画による通信教育で単位がとれるN高を選んだのも、生徒による事業立ち上げをサポートする部活動「起業部」があるからだった。

 ファッションには中学生時代から関心があった。同時に後天性の尋常性白斑という病にも悩んでいた。肌から色素が抜け落ちて白くなり、長時間紫外線にあたると炎症を起こす。外見の違いは気持ちを内向きにさせた。それでも気に入った服を着て鏡の前に立つと自然と気持ちが上向いた。

 「同じ悩みをもつ人たちに、ファッションで前向きになる手助けをしたい」

 N高進学後、同じ病を抱える患者たちと交流するうちにこんな考えが浮かんだ。UVカットの生地を使い、紫外線をさえぎる長めの袖や大きなフードをデザインにとりいれながら、色や質感にもこだわる。ターゲットに日焼けを気にする女性も含めれば、需要は決して小さくないとの読みもある。

 もちろん、起業は簡単ではない。UVカット性能の外部機関による審査、中国の生産工場の長期休暇、クラウドファンディングでの資金集め、実際の販売商品の生産にかかる期間などを考えれば、順調に進んでも商品の販売は来年5月。当初見込んでいたN高在学中の販売は難しそうだ。

 それでも今は活動自体を楽しめている。「悩んでいる人たちに喜んでもらえればうれしい。お金のための起業というのは僕の考えとは違う」。

高まる社会問題解決

 社会起業で扱われる課題はさまざまだ。気候変動問題や持続可能な社会の実現を見据えた活動といった地球規模のテーマだけでなく、教育格差解消のための学びの場の提供、障害者雇用の創出を狙ったビジネスの立ち上げといった個人に寄り添った活動が求められるテーマもある。

 こうした社会問題の解決のための起業は、経済的に十分な蓄えを得た五十代以降の人材が第2の人生でのやりがいを求めるケースが定番だ。しかし、近年は大学生ら若者の起業も目立つという。

 平成5年の活動開始から、社会起業を支援する取り組みを続けているNPO法人ETIC(エティック)の加勢雅善マネージャーは、「社会起業に対する意識は明らかに高まっている」と話す。「若い世代で社会によくない事業をやりたいという人はいない。今はベンチャー企業を立ち上げるケースでも社会の役に立つことは大前提になっている」と実感している。

 ただ、社会問題の解決は一筋縄ではいかない。さらに、貧困家庭や生活困窮者といったサービスを受ける側から料金をとることが難しいケースでは、立ち上げた事業を継続していくこと自体が容易ではない。

 それでも若い世代が社会起業に関心を抱く背景には、価値観の変化がありそうだ。

 社会起業に詳しい静岡県立大学の大久保あかね教授は、学生の就職活動に関わる中で、「かつてのような一流企業一辺倒ではない、高収入が一番という考え方に縛られない学生が増えていると感じる」と指摘。その一方で事業継続のためにはビジネス感覚を持つことも必要だとして、社会起業に取り組むには社会問題への意識と収益性へのこだわりの「バランス感覚を持つことが必要だ」としている。(経済本部 小雲規生)

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