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10度を下回らない海、養殖ノリの生産減続く

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束ねられたのり。箱詰めにして出荷する=兵庫県淡路市の「巌水産」
束ねられたのり。箱詰めにして出荷する=兵庫県淡路市の「巌水産」
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 日本の食卓に欠かせないノリの取引価格が生産の減少により高値で推移している。全国有数の産地として知られる兵庫県の淡路島や播磨灘でも生産減が続いているが、原因として漁業関係者が口をそろえるのが、今シーズンの記録的な「暖冬」。生産海域の海水温が平年より2度ほど高く、収穫期の短縮も余儀なくされそうだ。近年は瀬戸内海の“きれい過ぎ”問題もあって養殖ノリの「色落ち」も懸念されており、高値はしばらく続きそうだ。(勝田康三)

収穫期にも遅れ

 兵庫県では、淡路島周辺や神戸市から赤穂市にかけての播磨灘で養殖ノリの生産が盛んに行われている。各港近くに加工場が並び、船から水揚げされたノリを洗ったり乾燥させたりして1枚(縦19センチ、横21センチ)のノリに仕上げていく。

 大阪湾に面した海域がエリアの森漁協(淡路市)の副組合長で、ノリ加工会社「巌水産」を営む森吉秀さん(59)は昨今の生産減について「周辺海域の水温がこの時期の適温の10度以下にならない。暖冬が原因だ」と強調する。

 森さんによると、今年1月末の周辺海域の水温は12度ほど。かつて、この時期には養殖に適した8~9度ほどまで下がっていたが、ここ数年は10度を下回らない。水温が適温にならないと、生育の遅れや病気の恐れが高まるという。

 淡路島周辺の収穫時期は12月ごろから4月ごろまでだが、「始まりは遅く、終わりは早くなった」というのが生産者の共通認識。島内の漁協関係者でつくる淡路水交会の東根寿(ひさし)会長は「生産枚数は(大不漁とされた)昨期並みになりそうだ」と表情を曇らせる。

価格高騰で…

 兵庫県のノリ生産量は、平成26年度の16億枚から昨年度は13億枚まで落ち込んだ。ただ、生産量減少は兵庫だけの話ではない。県漁連のり海藻部の藤沢憲二部長によると、26年度に81億枚あった全国の生産量は、昨年度は63億枚にとどまり、今期は1月末現在で25億1千万枚(昨年同期比3千万枚減)。最終的には昨年度と同程度になる見通しだ。

 一方、生産量の低下に伴い取引価格は高騰。全国の1枚平均は26年度が10・48円に対し、30年度は13・04円だった。さらに今年1月末の平均単価は14・85円(同50銭高)と高値で推移している。

 価格高騰は当然、一般消費者にも影響する。スーパーなどの小売店では価格を維持したまま枚数を減らしたり、容器入りの味付けノリも枚数は変えずにカットを小さくしたりして対応している店が多いといい、藤沢部長は「工夫はしているが、実質上の値上げになっている」と指摘する。

「きれい過ぎ」も影

 今のところ淡路島のノリの出来は良好だが、毎年1~2月に懸念されるのが栄養不足による色落ちだ。店頭に並ぶノリは黒々としているのに対し、色落ちした茶色や赤色は商品価値がないとされる。

 色落ちの原因について「この時期は少雨で川からの流水が少ないうえ、海がきれいになりすぎて栄養塩が低下するからだ」と話すのは、仮屋漁協組合長の岡田光司さん(72)。今月4~5日、栄養不足を補うため、地元の川の堰(せき)にたまった泥を海に流す「かいぼり」の作業に参加した。

 陸上のため池や川の泥にはノリの栄養塩となる窒素やリンが含まれている。かつては川からの水で海は栄養塩に満ちていたが、排水基準の強化などにより海がきれいになりすぎ、栄養塩が足りない状況に陥った。ある漁業関係者は「これ以上生産量が落ち込み、ノリが高すぎて消費されなくなれば元も子もない。こんな状態が続けば日本の食生活も変わるかもしれない」と危機感を募らせる。

 このため兵庫県では昨年12月に条例を改正し、窒素やリンなどを含んだ水を排出できるよう、県独自の下限値を設定。「豊かな海」づくりに力を入れ始めた。岡田組合長は「すぐに効果が出るとは思わないが、こうした努力は必要だ」と話している。

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