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オリンピアン育成で大事なのは? 「アジアの鉄人」が語るアスリートの育て方(下)

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ロンドン五輪でハンマーを投じる室伏広治さん=2012年8月3日
ロンドン五輪でハンマーを投じる室伏広治さん=2012年8月3日
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 ハンマー投げで日本選手権を10連覇し、1972年ミュンヘン大会から4大会連続で五輪代表入りした「アジアの鉄人」こと室伏重信さん(74)。2004年アテネ大会で金メダルを獲得した広治さん(45)の父親としても知られる。将来アスリートとして活躍させるために重要なのは「センスを磨くこと」だという。センスとは一体何か。(鈴木俊輔)

センスを磨け

 未来のアスリートにとって重要なのは「体力」「体形」「センス」を見極め、磨くことだと説く重信さん。中でも幼児期には、センスに重きを置くべきだという。

 センスとは一般的に、感覚や感性を指す。生まれながらの才能に近い印象も持たれるが、「後天的な要素が大きい」。

 重信さんのいうセンスは、体を動かす感覚。幼少期に、さまざまな動きを体に覚えこませることで、磨かれていく。

 ハンマー投げと同じ投擲(とうてき)種目であるやり投げを例にとる。やり投げは、オーバースローでやりを投げ、その距離を競う競技だが、幼少期からやり投げを専門に打ち込む子供は少ない。

 新しい競技に出合ったとき、全く新しい動きに挑戦する人と、過去に経験した“何か”に似た動きをするの人では、競技を始めた時点で差がついている。

 やり投げでは、野球やドッヂボールなどの経験があれば、その感覚を生かすことができる。「オーバースローで物を投げる感覚を体が知っているかどうか。初めての選手は、その感覚をつかむだけでも苦労する」

 こうした感覚は、年齢を重ねれば重ねるほど覚えるのが難しくなる。幼少期により多くの経験を積むことが重要だ。

ハンマー投げとバレエ

 「ハンマー投げでいえば、体を回転させる感覚を知っているかどうかです」

 では、回転するスポーツとは何か。「海外のトップ選手で、幼少期にバレエをやっていたという選手がいた。私の場合は小学校のころ、同級生とケンカをしたときの感覚。殴ることを知らず、相手をつかんで振り回していたんです。(インターハイを制した)円盤投げは川で石を投げる『水切り』に似ていましたね」。

 では、息子の広治さんには一体どんなスポーツを回転の感覚を養わせたのか。

 「本人がやってみたいというので、広治が10歳のときにハンマーを持たずに、ターンをする『空ターン』という練習を教えました」

 いきなりハンマー投げの練習メニューで回転の感覚を養った。

 「1日に6時間、3日続けてやらせました。広治もよくやったと思いますよ」

さまざまなスポーツを

 とはいえ、広治さんもすぐにハンマー投げを専門としたわけではなかった。

 「水泳、野球など本人がやりたがったものは全部やらせた。ハンマーをやりたい、と言い出して本格的に始めたのは高校からです」

 現役時代は鋼の肉体を誇った広治さんも、当時は「ハンマーは無理だろう」と思われるほどの細身だった。ところが、ハンマーを握ると鮮やかに回転してみせた。10歳のときに繰り返した動きを体が覚えていた。当時、大学生を指導していた重信さんは「学生よりうまいんですよ。やはり幼いときに基本を教えるのは大切だな、と思いましたね」

 そこからの飛躍は、言うまでもない。高校2年で高校記録を出し、インターハイを制覇。高校記録、学生記録、日本記録と次々に塗り替え、ついには世界の頂点にまで上り詰めた。

 スポーツ界全体に目を向ければ、幼少期から特定のスポーツに打ち込んできた選手が多い一方で、中学や高校で別の競技から転向した「異色の経歴」の持ち主も少なくない。

 「幼少期から専門のスポーツがあってもいい。でも、週に1回でいいから別のスポーツもやらせてみること。それが専門のスポーツに生きることもあるし、思わぬ競技につながることもあります」

 大きな可能性を秘めたわが子の教育に、参考にしてみてはいかがだろうか。

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