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【ラグビー通信】今季でSR除外のサンウルブズ 初の白星発進ができた理由

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初戦のレベルズに勝利し、観客にあいさつするサンウルブズフィフティーン=レベスタ
初戦のレベルズに勝利し、観客にあいさつするサンウルブズフィフティーン=レベスタ
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 前評判を覆す上々のスタートを切った。スーパーラグビー(SR)の日本チーム、サンウルブズは2月1日に福岡・レベルファイブスタジアムで行われたレベルズ(オーストラリア)との今季初戦に36-27で競り勝ち、SR参戦5季目で初の白星発進となった。今季限りでのSR除外が決まり、トップリーグ(TL)とシーズンが重なった影響で昨年のワールドカップ(W杯)日本代表勢不在で臨むラストシーズン。過去5戦5敗の難敵から挙げた殊勲の白星の背景には、「W杯翌年」という事情とこの試合に懸けたコーチ陣、選手たちの奮闘があった。

 「3、2、1、ゼロ!」。1万426人が来場したスタジアムにカウントダウンの声が響く。80分終了を確認してボールを外にけり出し、ノーサイドの笛が鳴ると、サンウルブズの選手たちは次々と抱き合って喜びをあらわにした。2勝14敗の最下位に終わった昨季、国内では1勝も挙げられなかったチームがいきなりの白星。SRデビュー戦でいきなり先制トライを挙げ、チームを勢いづけた共同主将のCTB森谷は「準備したことを出せてうれしい」と笑顔を見せた。

 SRは15チームを5チームずつ、3カンファレンスに分けて行われる。レベルズは昨季7勝9敗と、サンウルブズと同じオーストラリア・カンファレンスで2位に食い込んだ難敵。過去5度の対戦でサンウルブズが勝ったことはなく、昨季は敵地で15-42、ホームでは7-52の完敗を喫していた。

 ただW杯イヤーを終えた今季は有力選手の移籍が相次ぎ、再構築を迫られるチームがSRにも続出。第1節では、2016年王者で5季連続4強以上のハリケーンズ(ニュージーランド)が、ニュージーランド代表バックスのB・バレットがチームを去った影響からか、昨季の南アフリカ・カンファレンスで最下位に沈んだストーマーズに0-27で完敗する波乱も起きている。

 レベルズも例外ではなく、SHゲニア、SOクーパーがTL下部の近鉄へ移籍。元オーストラリア代表ハーフ団がチームを離れた穴は決して小さくない。加えて例年なら1月にTLや日本選手権を終えて本格的に動き出すサンウルブズと、その数カ月前から合宿に入る他のチームとでは準備にも大きな差が生じていたが、W杯出場選手の休養確保もあり、今季は各チームとも短い調整でシーズン入り。

 W杯オーストラリア代表5人を抱えるレベルズのベッセルズ監督は「プレシーズン期間が数週間と短く、その影響がいろいろな面が見えた」と連係不足に落胆。「次の試合まであまり時間がない。すぐに準備しないと」と気持ちを奮い立たせたが、7日の第2節でも昨季2戦2勝だったブランビーズ(オーストラリア)に26-39で敗れた。

 一方のサンウルブズも、昨年のW杯に出場した選手はジョージア代表フッカーのブレグバゼだけとはいえ、集合は1月5日。初戦までの準備期間は4週間と決して長くはなかった。この期間を最大限に有効活用しようと思案を重ねたのがコーチ陣。レベルズ戦の翌週に試合がない日程も踏まえ、大久保ヘッドコーチは「テストマッチ(代表戦)のつもりで準備してきた」と一戦必勝を呼びかけてきた。

 主に攻撃を担当する沢木コーチングコーディネーターも「スキルの成長は時間がかかる。1番早く成果が出るのはフィットネス」と主に体力強化のメニューを課し、防御には多少目をつぶってでも運動量で攻め勝つスタイルをチームに浸透させた。

 ここまで日本代表と兼務するケースが多かったコーチ陣が一新された影響も大きいようで、オーストラリア出身のロック、ストーバークは「相手が手の内を知らないのは強み。ベストの力を出せればどんな相手も怖くない」と手応えを口にする。

 選手たちの反骨心や向上心も見逃せない。昨年、W杯日本代表入りを逃したフランカー布巻はW杯戦士の活躍で来場者が急増しているTLを引き合いに「見とけよ、って感じだった」。昨季は代表の別動隊にも位置付けられたサンウルブズとの行き来に心身とも疲弊していたことを明かし、「本当にコミットできたか、難しい面もあった。今年に関してはそこに違いがある」とサンウルブズに全力投球できる強みを口にする。

 途中出場した早大4年のSH斎藤は「練習に向かうまでの準備や練習後のケア。プロの意識は大学生とは違う」と多くを学びながら奮闘。WTBでフル出場した天理大3年のフィフィタも「ここからがスタート。まだ時間はあるので、いい準備をしたい」と目標に掲げる23年W杯日本代表入りを目指して研鑽(けんさん)を積む覚悟を示す。

 今季のチームスローガンは「KEEP HUNTING(キープ・ハンティング)」。オオカミにちなんだチーム名に絡め、現状に満足せず、狩り(ハント)になぞらえて挑戦を続けていく姿勢を明示した。W杯で活躍した日本代表選手はおらず、今季を最後にSRから除外されることが決まっている。それでもチームに悲壮感はなく、15日のチーフス(ニュージーランド)戦(東京・秩父宮ラグビー場)では開幕2連勝を貪欲に狙う。

 初戦を終えた沢木コーチングコーディネーターは今季への決意をこう口にした。「まだハンティングの始まりです」

(運動部 奥村信哉)

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