PR

【安倍政権考】東京・望月記者「官房長官番が質問妨害」投稿は事実と異なる

PR

菅義偉官房長官の記者会見で挙手する東京新聞の望月衣塑子記者(手前)=2月13日、首相官邸
菅義偉官房長官の記者会見で挙手する東京新聞の望月衣塑子記者(手前)=2月13日、首相官邸

 東京新聞記者の望月衣塑子氏が菅義偉官房長官の記者会見をめぐり、自身のツイッターで事実と異なる情報を発信し、インターネット上で拡散している。菅氏の担当記者(番記者)らが望月氏の質問を妨害すると決めたという内容だが、番記者の立場から自身や周囲を見渡しても、そうした事実は一切ない。産経新聞が東京新聞編集局を通じて望月氏に発信の根拠などを尋ねたが、「回答を差し控える」と返答。誤った情報の発信をめぐる経緯は説明しなかった。

(政治部官房長官担当 大島悠亮)

 問題のツイートは1月29日に投稿された。

 「なんと(官房長官の)番記者たちが『望月が手を挙げても指させない』と内々で決めたとの情報が届いた」

 望月氏は番記者が協力して記者会見から排除している事実があるかのように書き込み、菅氏の記者会見で自身が指名されないことへの不満もつづられていた。

 だが、番記者の間でそのような「決めごと」を内々で話し合ったり、決定した事実は断じてない。記者会見は、出席する記者が所属する社や記者自身の問題意識、疑問点を政府側に率直にぶつける場であり、可能な限り多くの記者が自由に質問すべきだという認識を番記者の間では共有している。投稿前に、番記者が所属する内閣記者会への取材や確認の問い合わせはなかった。

 望月氏の誤った情報発信について、産経新聞は2回にわたり東京新聞編集局と、同編集局を通じて望月氏本人に見解を質した。

 6日には文書で、ツイート内容に対する会社として認識や削除の意思の有無、望月氏への会社としての対応などを質問した。同編集局からは指定した期限内に回答があったものの、複数の質問にまとめて「望月個人のアカウントによるツイートであり、回答を差し控える」と返答するだけだった。

 一方、望月氏は問題のツイートをした後に「『内々で決めた』との情報だったが、実際は、私の抗議以降菅官房長官側が激怒し、番記者が指名を促しづらい状況に追い込まれているようだ」との別のツイートを投稿している。

 産経はこの投稿の意図も尋ねたが、同編集局は「当初の内容を修正するツイートをしているのは、ご指摘の通りだ」と回答した。問題のツイートが誤りだったことを事実上認めた。

 ただ、この修正ツイートの内容も事実ではない。

 回答を受け、産経新聞は10日に改めて「望月氏個人のアカウントであることが理由で回答が難しければ望月氏本人に質問させてほしい」として、東京新聞編集局に望月氏本人あての質問状を送った。

 質問状では、投稿の経緯や根拠、あいまいな情報の確認方法、投稿の削除の意思などについてただしたが、同編集局から返ってきた回答は「質問の内容を本人(望月氏)に伝えましたが、いずれも回答を差し控えると申している」というそっけないものだった。

 13日正午現在、ツイートは削除されておらず、閲覧できる状態が続いている。この間、ツイートが転載され、間違った事実に基づき菅氏の番記者が批判を受けている。きわめて残念な対応だ。

 望月氏のほかのツイート内容などを総合すると、問題のツイートは昨年12月ごろから記者会見で指名されないことに不満を募らせ、投稿したと推測される。実際、この1週間前の1月22日の記者会見では望月氏が質問の機会を得られないとして抗議する一幕があった。

 この日の会見で、菅氏は「最後の1問」として望月氏を指名した。これに望月氏は「2問聞きたい。長官から不当な扱いを受けている。21日から手を挙げているが、私だけ指されない」と訴えた。

 たしかに、昨年12月ごろから望月氏が指名される回数が減ったのは事実だろう。だが、回数が減ったのは望月氏だけではない。首相官邸で1日2回行われる菅氏の記者会見は、菅氏が国会日程や公務で多忙なため、無制限に続けることはできない。

 さらに国会開会中は菅氏は本会議や予算委員会、内閣委員会などの答弁に出席が求められる。記者会見の時間の確保はさらに難しくなる。

 また、正月休みや盆休みの前後は記者会見の回数が1日1回となり、各社による質問をめぐる競争が増す。望月氏の質問が減った昨年12月以降は記者会見の回数が1回に減っていた期間も含まれている。

 これに加え、昨年11月ごろから安倍晋三主催の「桜を見る会」をめぐる質問が急増した。最近は記者会見の開始時間の遅れが問題視されることもあるが、菅氏周辺によると「桜を見る会などをめぐって細かい内容の質問が出ることを想定し、きちんと質問に対応する答弁を準備しているため」だという。

 望月氏は東京新聞記者の資格で記者会見に出席している。同じ会見の場には、東京新聞の菅氏の番記者もいる。望月氏が指名されなくても番記者は質問できたケースもある。時間的な制限などで原則1社1人しか指名されない現状を考えると、決して東京新聞が菅氏から「不当な扱い」を受けているわけではない。

 どうしても望月氏本人が質問しなければならないのなら、東京新聞の内部で調整すべきだろう。

 今月10、13両日の記者会見では望月氏も指名された。これを機会に記者会見が正常化することを期待するが、その前に望月氏は果たすべき責務がある。問題のツイートの削除だ。

 このツイートをもとに事実と反するネット記事なども出てきている。望月氏はわかりにくい修正ツイートで中途半端に問題を終わらせるのではなく、削除した上できちんとした訂正の投稿をすべきだ。

 「都合の悪いことには口をつぐみ、説明に努めようという姿勢は見られない」

 東京新聞は1月25日の社説で安倍晋三首相の国会答弁をこう批判した。所属先でありながら明確な回答や対応を避ける東京新聞編集局や、自身への質問には答えない望月氏。ぜひ自社の社説を読み直してほしい。

この記事を共有する

おすすめ情報