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網で捕らえた天然野鴨の味に驚き 新潟に伝わる真冬のジビエ

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名物料理「鴨やき」。新潟・潟東で捕れた天然野鴨を使用している=新潟市西蒲区(池田証志撮影)
名物料理「鴨やき」。新潟・潟東で捕れた天然野鴨を使用している=新潟市西蒲区(池田証志撮影)
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 新潟市郊外の田園地帯、潟東(かたひがし)地域。この地では古くから、越冬のために飛来した野鴨を食してきた。昭和から続く「割烹(かっぽう) 長吉」(新潟市西蒲区)は、知る人ぞ知る野鴨料理の名店だ。猟銃で撃って捕らえることが多い野鴨だが、長吉は地元の猟師が独特の網猟で生け捕りにしたものを直接仕入れ、血抜きをしてから調理するので新鮮で臭みが少ない。真冬のジビエを一口食べようと、わざわざ首都圏から足を運ぶ客もいるという老舗の舞台裏には、猟師と料理人のたゆまぬ努力があった。(池田証志)

無双網漁

 新潟市西部に広がる田んぼの中にたたずむ2階建ての建物が長吉の店舗。毎年冬になると、地元の猟師たちが「無双網」と呼ばれる仕掛けで捕まえた野鴨を持ってやってくる。

 無双網猟は、水を張った田んぼが猟場。寝かせた長さ4、5メートルの竹ざお2本の間に15メートル程度の長方形の網を張り、これを操作して鴨を捕らえる。

 猟場には「呼び鴨」と呼ばれる養殖の鴨を20~30羽放ち、コメなどのエサをまいておく。猟師たちは見張り小屋に潜み、深夜から未明にかけ、野鴨たちが呼び鴨につられてくるのを待つ。野鴨が十分に集まったところで、無双網を遠隔操作で反転させて捕獲するのだ。

 「猟場選び、エサのまき方、いい声で鳴く呼び鴨を育てることが大事です」と網猟のコツを話すのは、長吉の社長で料理人の小林修一さん(50)。自身も網猟免許を持っているという。

鴨と思えぬ食感

 「猟銃で撃った野鴨は血抜きをしっかりできないので、臭みが残るし、汁も濁ってしまう。うちは、網で生け捕りにした野鴨を店で血抜きしていますからね」

 畳が敷き詰められた長吉の和室で、仲居の女性が笑顔で説明してくれた。注文したのは、鴨肉を鉄板で焼いて食べる「鴨やき」。皿に盛りつけられた野鴨の胸肉は赤肉があずき色に輝き、美しい。こってりと乗った白い脂身に思わず唾を飲み込んだ。

 「焼きすぎないように、さっとあぶって食べてください」

 アドバイスに従い、ガスコンロの上に乗った鉄板に胸肉を置く。両面に焼き色を付けた後、小皿に盛った岩塩を軽く付け口の中に放り込んだ。鴨の胸肉というと歯応えを期待していたが、想像以上の柔らかさにびっくり。続いて広がる脂身の甘味、それでいて後を引かないさっぱり感…。驚きの連続だ。

 脚は胸肉より焼くのに少し時間がかかったが、コリコリとした歯応えがよい。1羽から2つしか取れないという希少部位、ささみはひときわ柔らかだ。確かにどれも臭みはまったく感じられなかった。

 名物、鴨やきをたっぷりと楽しんだ後、野鴨の骨団子が入った「鴨汁」をいただいた。野鴨とネギから染み出しただしが溶け合い、まさに「カモネギ」状態。最後の一滴まで残らず飲み干した。締めはコシヒカリを使った鴨汁のおじや。コメはもちろん、長吉で出される野菜の多くは地元産で、農業法人「新潟ひかりっこ」が作ったものだ。

良いものを出したい

 「最近は猟師の高齢化が深刻な問題です」と小林さん。出入りの猟師たちは計15人が約5チームに分かれて猟をしている。その多くが70代。自営業者やサラリーマンなどが趣味の延長でやっている。寒い季節、夜中に小屋の中でじっと野鴨を待つのはさぞしんどいことだろう。

 料理人も夜のうちに野鴨の血抜きをし、早朝から下ごしらえをして、昼からの営業に備える。小林さんも猟期中はほとんど家に帰れず、店で寝ているという。

 「猟師から調理人まで、いいものを出したいという意識がないとできません。お客さまの反応が良いと、心の芯からうれしくなります」

 猟期は11月15日から翌年2月15日の3カ月間。野鴨には限りがあるが冷凍保存してあり、予約すれば猟期以降でも注文できる。春には和庭園に咲く桜の花が美しい。花見をしながら「鴨やき」を箸で突くのもいいかもしれない。

【メモ】 割烹長吉 不定休。営業時間は午前11時~午後10時。野鴨料理は8千円から(税別。飲み物・席料別途。宴会の人数により価格が異なる)。北陸自動車道・巻潟東インターチェンジから車で約10分。新潟市西蒲区山口新田91。電話は0256・86・2618。

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