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【深層リポート】東京五輪まで半年 観光誘客のチャンスだが自治体の動き鈍く 栃木

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国内外から多くの観光客を集める世界遺産「日光の社寺」の一つ、日光東照宮の陽明門(根本和哉撮影)
国内外から多くの観光客を集める世界遺産「日光の社寺」の一つ、日光東照宮の陽明門(根本和哉撮影)

 栃木県内の自治体で、今夏に開催される東京五輪・パラリンピックに合わせた観光誘客の動きが鈍い。東京都心からのアクセスが良好で、世界遺産を有する日光など豊富な観光資源を持つ栃木にとって、五輪は大きなチャンスのはずだが、誘客事業に関し、県内の自治体は「特に予定していない」「検討中」などとそっけない。背景には費用不足や編成のタイミングなど、自治体の予算を取り巻く問題があるようで、このままでは今夏の好機を逃してしまうかもしれない。

国内旅行希望多数

 五輪は、栃木のように競技開催が全くない自治体にとっても、訪日外国人客(インバウンド)誘客の武器となる。日本政策投資銀行と日本交通公社がまとめた「DBJ・JTBF アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査(2019年度版)」によると、アジア、欧米、オーストラリアの海外旅行経験者で東京大会観戦希望者のうち、「開催地以外の地方への小旅行」を「したい」「どちらかといえばしたい」と答えた人は9割以上に上っている。

 栃木は、県都の宇都宮市まで都心から東北新幹線で約50分、東北自動車道で約2時間の好アクセス。日光以外にも、那須高原や鬼怒川温泉といった人気観光地、宇都宮餃子などの名物を多く抱える。

 また東京大会の期間中、JR東日本はインバウンド向けに管内の新幹線や特急が3日間乗り放題となる特別パスを発売予定。日光市には、世界的有名ホテル「ザ・リッツ・カールトン」が東京大会直前の5月にオープンするなど、追い風が吹いているように見える。

予算不足、編成時期

 県も東京大会を好機と捉え平成27年、「東京オリンピック・パラリンピック等に向けたとちぎビジョン」を策定。ところが、県内自治体の誘客に向けた動きは活発とはいえない。背景には、地方自治体が抱える予算編成上の問題がある。

 まずはどこの地方も頭を悩ませる「予算不足」だ。観光産業が盛んな那須町でさえ「予算がなく、観光誘客に関しては例年通り」(観光商工課)とし、東京大会に特化した観光関連事業の予定はないと説明する。

 バスケットボール会場となるさいたま市内で、東日本の自治体と連携した日本酒PRイベントの実施を検討している宇都宮市も、多くの人が集まる競技会場付近での積極活動には二の足を踏む。競技会場付近は人気が高く、広告・宣伝費が高額になるためだ。「他の自治体主体のイベントに参加するなど、費用を抑えながらの活動を検討している」(同市観光交流課)と厳しい現状を明かす。

 予算編成のタイミングなど、自治体の仕組みの都合上、柔軟に動けないという声もある。「市主体の誘客事業は特にない」とした日光市観光交流課は「来年度の予算がまだ組まれていない。4月の人事異動で組織が変わり、なかなか動けない面もある」と話す。

 市のPR動画を作成し、期間中に都内で放映する予定の栃木市など、積極的な動きを見せる自治体もあるが、県内全体としては少数派だ。開幕まであと半年。好機をつかむのか、逃すのか、自治体の本気度と工夫が問われている。

      ◇

【東京五輪・パラリンピックの誘客事業】 都の予測によると、大会期間中の会場来場者数は1日あたりで最大約90万人にも上る。政府は▽宿泊施設の整備▽多言語化への対応▽ボランティア、ガイドの活用▽地方への周遊ルートの形成-などを通じ、誘客活動を推進。1年間での訪日外国人客の目標は4000万人に設定している。また政府は、観光ブランドイメージを上げ、大会期間後にも継続して日本を訪れてもらう人を増やすことも狙う。

【記者の独り言】

 栃木に着任してから約2年、県内をあちこち回ったが、世界にも誇れる素晴らしい観光地、名物がたくさんあると感じる。ところが近年は県内の宿泊客数が伸び悩むなど、魅力をうまく生かし切れていないのも事実だ。東京から日帰り可能な距離ということもあるが、「前に出ない県民性」からくるPR下手も理由として指摘されている。

 予算など厳しい事情はあれど、各自治体にはこの好機を生かすため、知恵を振り絞ってほしい。(根本和哉)

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