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長岡藩士のファストフード「桜めし」 司馬映画「峠」の主人公、河井継之助も絶賛

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長岡藩士のソウルフード「桜めし」=新潟市中央区(池田証志撮影)
長岡藩士のソウルフード「桜めし」=新潟市中央区(池田証志撮影)
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 新潟県長岡市には「桜めし」と呼ばれる伝統的な食事がある。大根のみそ漬けを細かく刻んでご飯と炊き込んだもので、別名「みそ漬け飯」。「質撲剛健」「常在戦場」を信条とする長岡藩士が有事の際にさっとかき込み、すぐに出かけられるようにと好んで食したファストフードだ。戊辰戦争に遭遇する長岡藩を描いた映画「峠」(司馬遼太郎原作)が今秋公開されるが、主人公の藩士、河井継之助もこよなく愛した。映画公開を控え、長岡市のみそ製造会社がリニューアル発売した「桜めしの素」を味わってみた。(池田証志)

 「みそ漬け飯ほどうまいものはない」

 幕末の世に生まれ、後に長岡藩の家老となる藩士、河井継之助は、領内にある庄屋の屋敷で出された桜めしをこう言って食べた。司馬遼太郎の大作「峠」のワンシーンだ。

 奥羽越列藩同盟に加盟する決断を下し、北越戦争を指揮した継之助はいまでも長岡市民にとって郷土の偉人だ。新潟赴任直後に読んだ名著の興奮を思い出しながら、地元長岡市にあるみそ製造会社「柳醸造」を訪ねた。

伝統食をリニューアル

 「昔はみんな、自宅でみそをつくっていて、大きなみそ樽(だる)の中に大根とかキュウリを何本も入れてました」。柳醸造の柳和子社長(66)は、桜めしの原点である大根のみそ漬けのつくり方を教えてくれた。これを細かく刻んでご飯と一緒に炊いたり混ぜたりすれば桜めしになる。

 「素朴な味ですが、おにぎりやお茶漬けで食べてもおいしいんですよ」と柳社長。同社の事務所兼工場がある同市三島地域は良い水が出ることから、酒やみそ、しょうゆなどの醸造が盛んだった。

 明治20年に米穀商として創業した同社は大正に入ってしょうゆ、みその製造・販売を始め、昭和55年から浅漬けも手掛けるようになった。桜めしの素は20年ほど前に冷蔵保存版がつくられた。当時から、「懐かしい」と買い求めていくお年寄りが後を絶たないという。

 1月から販売を始めたリニューアル版は、刻んだ大根のみそ漬けの水分を取ってから熱処理を施すことで常温保存ができるようにした。「お土産用に持ち運びやすくしてほしい」という顧客のニーズに応えたものだ。

 30~40本の樽を持ち、約5種類のみそを年間計400トン生産する同社。「若い人にも目を向けてほしい」と“醸し”(発酵食品)の人気に乗って、チーズにみそをブレンドした「やなぎのピザ」や玄米みそを使った「新潟発酵カレー」などの新商品を連発するアイデア会社でもある。

飽きのこない味

 桜めしを実食しようと、新潟市に戻り、なじみの店でご飯を用意してもらった。木製の器に入れられたほかほかのご飯の上に、濃いオレンジ色の桜めしの素をかけると、蒸気と一緒に上がってきたみその豊潤な香りにふわっと包まれた。

 「いい匂いですね」

 店のシェフが思わずつぶやく。

 しゃもじでかき混ぜる度に、白いご飯がやさしいオレンジ色に染まっていく。

 「そろそろいいでしょう」

 茶碗(ちゃわん)に盛り付けられた桜めしを箸に乗せ、口元へ運ぶ。よく醸されたみその香りが心地よく嗅覚を刺激し、味覚の良さも間違いない予感がする。温かいご飯を口に入れると、予感は確信に-。白米の甘味と大根のみそ漬けの塩味、すえた香りが絶妙のバランスで融合し、体の芯から幸福感がわき上がってきた。柔らかいご飯に混ざった大根のコリコリとした歯応えが、食べることを飽きさせず、至福の時間が続く。

 史実に基づく小説「峠」では、長岡城に迫る明治新政府軍の砲声が響く中で、継之助が桜めしを4杯も食べたというくだりがある。この後、奇跡的な勝利と敗北を味わうことになる悲劇の主人公、継之助は郷土の味をかみしめながら、何を思っていたのだろうか-。長岡藩士のソウルフードを食べながら、しばらく思いを巡らせてみた。

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