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テレビで引っ張りだこ 「なにわのエジソン」が“珍発明”にこだわる理由

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急須を使わずにお茶を飲む珍発明品「おちゃっぱー」を着用する木原健次さん。完成を目指し、改良が続けられている=大阪府八尾市(西川博明撮影)
急須を使わずにお茶を飲む珍発明品「おちゃっぱー」を着用する木原健次さん。完成を目指し、改良が続けられている=大阪府八尾市(西川博明撮影)
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 テレビ番組などで「なにわのエジソン」と呼ばれる珍発明家が大阪府八尾市にいる。元会社員の木原健次さん(81)だ。40歳から余暇を使って趣味と実益を兼ねた発明のアイデアを練ることに夢中となり、これまでの約40年間に浮かんだ発明のアイデアは5千点をくだらない。失敗の連続だが、世の中に笑いを提供するユーモアたっぷりな珍発明を続ける理由は、独自の人生哲学にあるようだ。(西川博明)

100冊にアイデア5千以上

 木原さんによると、この40年間で考えた「5千点はある」という珍発明のアイデアは大学ノートで約100冊分に記されている。

 最近、テレビ番組で紹介されたのは、急須を使わずにお茶を飲む珍発明品「おちゃっぱー」。水道ホースの先に茶こしが付けられており、茶葉を入れた茶こしを口にくわえ、ホースに湯を流せば、そのままお茶が飲める…というものだ。湯を流すためにドローンやラジコンを使うなどの改良を重ねているが「また失敗作。80歳を超え、僕のアイデアも限界にきている」と寂しそうな表情で語る。

 妻の啓子さん(78)が「ガラクタばかりでしょう」と笑い飛ばす自宅の納屋には試作品約500点が所狭しと並ぶ。100円ショップなどで買った日用品をアレンジした品々だ。

 例えば、かぶり物に卓球のラケットがついており、顔や首を動かして卓球をするという「顔面ピンポン」は、他人を笑わせる典型的な珍発明品だ。一方、床に散らばる複数のピンポン玉を一気に拾えるゴムひもつきのかごや、片目だけ覆われた視力検査用メガネなどはひょっとしたら使えるかも…と思わせる。

 当初は企業などに売り込み、商品化で副収入を狙ったが「断りの連続。ボールペン1本が同封された丁重な断りの手紙もあった」(木原さん)。

関西から「負けてたまるか」

 けいはんな学研都市で知られる京都府精華町出身の木原さん。農家の次男として生まれ育ち、高校卒業後は大手企業で経理担当の社員として働いた。そんな木原さんが珍発明にのめりこむきっかけは昭和53年、40歳のときに書店で「発明は誰にでもできる」というテーマの本に出会ったことだった。そこには、主婦が考案した発明が商品化され、一獲千金を得たという実例が記されていた。

 「凡人に無縁と思ったが、僕も一獲千金は夢ではない」。影響された木原さんは賞金が出る発明コンテストに応募を重ね、55年にはフジテレビの珍発明コンテスト番組で3位入賞。60年の関西テレビの番組では、草履の裏にゴム印を張り、床に並べた年賀状にスタンプを押せる珍発明品「青竹踏みスタンプぞうり」で初めて優勝し、その後は週刊誌などで「なにわのエジソン」と紹介されるようになった。

 もっとも「エジソンのように、世の中に役立つことはしていない」と木原さん。珍発明を続ける理由については「日本は何でも東京に一極集中で…。関西で頑張って、珍発明で人を笑わすことがあってもええやないか、という関西人のノリですわ」と語る。ただ、当時、子供は小学生で同級生にからかわれたという。

 「家族に迷惑をかけたという複雑な気持ちでした」

実は…唯一の商品が発売

 失敗続きの木原さんに朗報が訪れたのは、発明をはじめてから約30年が経過した平成20年、70歳のときだった。

 プラスチック成形加工業の旭電機化成(大阪市東成区)が手を汚さずに焼き鳥やみたらし団子の串を簡単に抜ける「串抜き皿」(2枚入り、税抜き700円)を発売したのだが、その際に木原さんが考案したプラスチック容器に切れ端を入れる珍発明「ワンカット片」を採用したのだ。

 同社の原守男専務は、テレビ番組で「ひとつも採用されない木原さんの珍発明の商品化に協力する話になった」と明かしている。

 商品はインターネット通販などで累計約1万5千個が販売された。「初めて商品化してもらい、それだけで満足。お金が欲しいことに越したことはないが…」。木原さんはこう振り返る。

 木原さんが珍発明を続ける中で、自身に言い聞かせてきた基本姿勢がある。(1)頭は使ってもお金は使わない(2)考える時間は長く、作る時間は短く(3)欠点のない珍発明はない(4)遊び心を大切に(5)社会の良俗に反しない-の5カ条だ。

 「珍発明がテレビなどで取り上げてもらえるのは、社会が明るくて平和。それでええのんちゃうかと」

 80歳を超え、体力的な衰えが出てきたと木原さん。ただ、珍発明は「ボケ防止にもなるし、僕の唯一の生きがい」ときっぱり語る。新たなアイデアを創造する意欲は衰えていない。

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