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【ビジネス解読】不祥事の全容見えぬ日本郵政 完全民営化は「絵に描いた餅」に

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記者会見中、資料に目を通す日本郵政の増田寛也社長=1月31日午後、東京都内のホテル
記者会見中、資料に目を通す日本郵政の増田寛也社長=1月31日午後、東京都内のホテル

 かんぽ商品の不正販売に端を発した日本郵政グループのガバナンス不全は、トップ3人が年明け早々に交代するという事態に発展、日本郵政の新社長に就任した増田寛也氏は「信頼回復」を最優先する考えを強調する。だが、新たに約6万人が不利益を被った疑いがあることが発覚するなど、不祥事の全容はいまだ明らかではない。今後も事業の停滞は避けられず、次の株式売却も見通せない。このままでは完全民営化など「絵に描いた餅」になりかねない。

販売再開時期は不透明

 「速やかに調査を進め、顧客の不利益を一刻も早く解消する」

 1月31日、増田氏は記者会見で、不利益を被った疑いのある約6万人(約22万件)の契約内容を追加調査することを明らかにした上で、こう語った。

 金融庁などの行政処分は3月末までだが、増田氏は「(保険販売の再開時期は)申し上げる段階にない」と語るにとどめた。

 もともと、グループ内では「処分解除後も半年程度は再開できない」との見方があった。というのも「まずは管理職の研修、さらには現場の社員研修をそれぞれ数カ月単位で行う」(日本郵便幹部)と考えていたためだ。

 そこに追加調査が加わることで、再開はさらにずれ込むとみられる。

 顧客の不利益解消を優先するためだが、かんぽ生命保険は民営化・分社化以降、満期解約などによる契約減を新規契約で補えていなかった。そこに今回の販売自粛・停止、さらには途中解約が追い打ちをかける。

 昨年度までは170万件余りあった年間の新規契約(個人保険)も今年度は58万件程度と、実に3分の1に落ち込む見通しだ。これに保険金返金や不正の調査費用など…。最終的な損失額がどこまで拡大するかは、いまだ見通せない。

土曜休配も実現せず

 一方、日本郵便も深刻だ。かんぽ生命からの窓口委託手数料は年間約4000億円に上る。長期の販売停止で手数料収入の激減は避けられない。

 さらに、一連の問題のあおりを受け、はがきや手紙の土曜日配達などを廃止する郵便法改正案の提出が今通常国会でも見送られる。

 改正案は郵便市場の縮小や人件費高騰に対応するものだ。もちろん土曜休配だけでは劇的な業績改善は見込めないが、一定の収益改善効果はある。(平成30年12月17日付本欄「『土曜休配』も劇的な採算改善は望めず 続く日本郵便の苦悩」参照)

 そもそも日本郵便は、郵政民営化法で全国一律サービスを義務づけられる。また、第三種(定期刊行物)、第四種(点字郵便など)という格安な政策料金で配達する制度も国営時代のまま残り、毎年約70億円の赤字を垂れ流している。(令和元年10月12日付本欄「かんぽ不正販売、中途半端な民営化に問題あり」参照)

 こうした構造上の赤字体質のなかで、手数料収入が大幅に落ち込み、土曜休配も実現しないとなれば、日本郵便のさらなる業績悪化は避けられず、それは親会社の日本郵政を直撃する。

株式売却見通せず

 日本郵政とかんぽ生命の株価は不正販売によって、大幅下落したままだ。それは、両社が「投資対象ではない」という市場の声だ。

 現在、日本郵政への政府出資比率は約57%。本来なら昨年秋に株式の最終売却を行い、民営化法が定める3分の1超まで比率を下げるはずだった。

 また、日本郵政はかんぽ生命の株式の約65%を保有する。日本郵政の出資比率が過半の現状では、新商品の認可などに大きな制約がある。だから、かんぽ生命は、まずは同比率を5割未満にすることを目指してきたが、当然ながら現状ではそれすらおぼつかない。

 郵政民営化委員会の岩田一政委員長は1月の委員会で、増田氏と日本郵便社長、かんぽ生命社長に「民営化の終了(完全民営化)時にどういったビジネスモデルを展開しているか3人で共有してもらいたい」と注文したという。

 しかし、日本郵政によるかんぽ生命やゆうちょ銀行の株式売却は、民営化法のあいまいな規定もあって元来、全株放出には懐疑的な見方も少なくなかった。(平成30年4月1日付「【日曜経済講座】迷走する日本郵政グループ 描けない完全民営化のスキーム」参照)

 そこに今回の終わりの見えない不祥事に対する投資家の厳しい見方が加わり、現状では完全民営化など「夢のまた夢」といった感すらある。(福島徳)

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