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汚れにくい窓ガラス 障害者の清掃サービス好評

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窓ガラスのコーティング作業をするジルベルトの利用者=神戸市須磨区
窓ガラスのコーティング作業をするジルベルトの利用者=神戸市須磨区

 障害者が働きながら技能を身につける「就労継続支援A型事業所」の閉鎖や障害者の大量解雇が相次いでいる。同事業所は立ち上げが容易なため近年急増していたが、経営難に陥る場合も少なくない。この状況を打破しようと、神戸市の事業所が窓ガラスの清掃の手間を大幅に省くコーティング剤を開発し、清掃サービスに乗り出した。コーティングは細かい作業に集中できる障害者の特性を生かせると口コミで話題を集め、赤字経営の脱却に成功しつつある。経営難に苦しむ全国の事業所で説明会を開くなど、普及拡大にも尽力する。(木下未希)

安価な業務しかなく

 コーティング剤を取り入れた清掃サービスを展開するのは神戸市須磨区の事業所「ジルベルト」。知的障害のある兄を持つ福田裕士さん(30)が平成28年から運営を担っている。

 利用者は一般就労を目指す知的障害や精神障害のある男女約20人。当初はろうそくやマスクの検品、簡単なパソコン業務などの短期的で安価な業務が続き、経営は赤字へと転じた。

 福田さんは「利用者に払う給料分の売り上げが確保できず、国からの給付金で補填(ほてん)せざるを得なかった」と振り返る。

 この苦境を打開しようと30年、コーティング剤などを製造する東洋技研(同市)と業務提携。細かい作業に集中できる障害者の特性を生かすために清掃事業への進出を決めた。

事業収入が倍増

 通常は車のボディーに使われ、ほこりなどの付着を防ぐコーティング剤を店舗や住宅の窓ガラスに使用できるよう改良。清掃のための人手確保に苦しむスーパーやコンビニからの需要をつかみ、1カ月で50件超の受注を確保した。

 清掃事業展開前は、事業収入が利用者に払う給料の4割程度しか稼げていなかったが、事業展開後は収入が倍増するなど黒字経営が目前まできている。

 また、「神戸コーティング施工協会」を立ち上げ、赤字経営に陥る全国の事業所に説明会などを開催。10都道府県の28社が同様の事業を展開するなど、全国的に広がりをみせている。

縮小の流れ止まらず

 就労継続支援A型事業所は昨年8月時点で全国に3807カ所ある。運営者には国から給付金が利用者の人数や労働時間に応じて支払われている。

 しかし、収益を確保できない状態でも給付金を当て込んで安易に参入する事業所が少なくないことから、厚生労働省は29年4月に給付金から障害者の賃金を支払うことを禁じるなど、支給の要件を厳しくした。

 これを受け、29年度だけで303事業所が廃止を余儀なくされた。また、10人以上の障害者を解雇した事業所は29年度は46に上り、計約1200人が職を失った。30年度も37事業所の計700人以上が解雇されるなど、事業所縮小の流れは止まっていない。

 障害者の就労に詳しい近畿大教職教育部の向後礼子教授は「赤字経営が続いた場合、解雇される利用者が増えるだけでなく、生産性が高くて一般就労が可能な利用者を事業所が囲ってしまうケースが生じてくる」と指摘した上で、「運営者は福祉専門で学んできた人が多く、経営やビジネスの知識に乏しい傾向がある。利用者の望むキャリアを幅広く選択できる事業所であれるよう、中小企業診断士などの専門家に相談できる窓口を設けるなど、各自治体が支援体制を整えるべきだ」としている。

     ◇

就労継続支援A型事業所 障害者総合支援法(旧障害者自立支援法)に定められた就労支援事業の一つで、一般企業で働くのが難しい65歳未満の障害者が仕事をしながら知識の習得や技術訓練ができる。事業所は障害者と雇用契約を結び、原則として都道府県ごとに定める最低賃金以上を支払う。

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