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買い物難民を救えるか 地域カーシェアの実力度

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 地域で車を共同利用する「コミュニティ・カーシェアリング」。高齢化社会となり、地方では公共交通機関が利用者の低迷などで存続の危機に直面する中、住民がボランティアで運転手を務め、移動が困難な高齢者らの外出を地域で支える試みとして注目されている。鳥取県では昨年11月に県西部の2地区で始まり、試験運用を行うところもある。

永江地区のコミュニティ・カーシェアリングで共同利用している車=鳥取県米子市
永江地区のコミュニティ・カーシェアリングで共同利用している車=鳥取県米子市
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東日本大震災で生まれる

 鳥取県米子市。中心部から南東約6キロの高台にある永江地区。団地を通る坂道を高齢者が重そうな買い物袋を手に登っていた。

 昭和40年代に開発された県内最大規模の住宅地。ピークの60年に約4400人が暮らしていたが、現在は約2600人。2・7%だった高齢化率は39・7%になっている。

 平成23年には団地内唯一のスーパーが撤退。25年に自治会がボランティアで「支え愛の店ながえ」を立ち上げたが、採算面から生鮮食品を扱えなくなった。

 団地外のスーパーまで約1キロ。坂を登るのが住民の負担になっている。そこで、地元住民が昨年11月に始めたのがコミュニティ・カーシェアだ。

 日本カーシェアリング協会(宮城県石巻市)によると、コミュニティ・カーシェアは、東日本大震災で被災した石巻市で寄付車両を活用して始まった。現在では宮城、鳥取、岡山、滋賀の4県15地区に広がっている。

利用者ニーズに柔軟に対応

 永江地区で運営を担うのが「永江ささえ愛カーシェアクラブ」。日本カーシェアリング協会から貸与を受けた軽乗用車1台を会員で共有し、車両を使うごとに利用者がガソリン代などの経費を積立金としてクラブに支払う仕組み。一定期間ごとに過不足を清算し、利用に応じて返金か追加徴収する。

永江地区のコミュニティ・カーシェアリングの総合窓口「支え愛の店ながえ」=鳥取県米子市
永江地区のコミュニティ・カーシェアリングの総合窓口「支え愛の店ながえ」=鳥取県米子市
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 導入前に約2カ月間、試験運用を実施。乗り合いでの「買い物ツアー」を企画し、最初は好評だったが、次第に人が集まらなくなった。そうした低迷から脱却するきっかけとなったのが石巻市への視察。同市では利用者、運転手とも和気あいあいと活動を楽しみ、温泉などさまざまな場所に出かけていた。

 市役所、コンサート、墓参り…。永江地区も需要に柔軟に対応するようになると口コミで評判が広がり、会員が増加。月の利用者も試験運用時の倍に増えた。

 ボランティアで運転手を務める松本喜男さん(70)は「カーシェアが地域を生き生きとさせる手段になっている」と痛感する。

 ただ、運転手の平均年齢は70歳を超えており、今後の継続に課題も残る。木下博夫会長(75)は「若い世代の運転手を募るとともにお出かけツアーなども実施し、地域のコミュニケーションの輪を広げたい」と意気込む。

車いす利用者の通学を助ける

 鳥取県中部の倉吉市小田東地区でも1月下旬から試験運用が行われている。

小田東地区でのコミュニティ・カーシェアリング試験運用へ向けた車両の引き渡し式=鳥取県倉吉市
小田東地区でのコミュニティ・カーシェアリング試験運用へ向けた車両の引き渡し式=鳥取県倉吉市
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 きっかけは、車いすを利用する男児の4月からの進学。中学校までは遠く、自力での登下校は困難。地域で通学の支援を模索する中でたどりついたのが、カーシェアだった。男児の父親(39)は「皆さんに協力していただきありがたい」と感謝する。

 ただ、会員9人のうち運転手が8人。継続に向けては会員の確保や体制づくりが欠かせない。

 田中康夫代表(70)は「地区の住民にカーシェアを知ってもらい、本格的な開始につなげたい」と話す。

「住み続けるのが難しくなる」

 コミュニティ・カーシェアの取り組みは、高齢化や過疎に悩む地区の参考になりそうだ。

 高齢化率が約50%という鳥取市佐治町で1月26日、地域交通の在り方を考えるシンポジウムが開かれた。主催した同町小さな拠点事業推進委員会の小谷繁喜会長は約70人の参加者に対し、町内路線バスの状況について「税金を使って空気を運ぶことが本当に地域のためになっているのか」と訴えた。

 シンポでは永江地区の事例が紹介され、今後の交通の在り方を意見交換。小谷会長は「コミュニティ・カーシェアなど共助交通について考えていかなければ近い将来、この町に住み続けるのが難しくなる」と警鐘を鳴らす。

 市によると、市内路線バスの利用者は、平成20年からの10年で13%減少し、運転手不足も深刻化。市が補助金など年約2億2千万円を支出しないと運行を維持できなくなっている。市は昨年末に公表した市生活交通創生ビジョン素案で、今後5~10年に廃止される可能性が高い民間バスなどの12路線を提示したりもしている。

 公共交通が岐路に立つ中、地域の足をどう確保するのか。コミュニティ・カーシェアの成否が注目される。

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