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【政界徒然草】立ちはだかる「中山方式」 首相は乾坤一擲の勝負に出るか 迫る憲法改正のタイムリミット 

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参院本会議で施政方針演説する安倍晋三首相=1月20日、参院本会議場(酒巻俊介撮影)
参院本会議で施政方針演説する安倍晋三首相=1月20日、参院本会議場(酒巻俊介撮影)

 憲法改正に意欲を示す安倍晋三首相だが、自民党総裁としてのタイムリミットは着実に迫っている。立憲民主党をはじめとする主要野党は抵抗姿勢を強め、与党からも悲観論が上がっている。首相はこのままむなしく「時間切れ」を迎えるのか、それとも一世一代の勝負に出るのか。

 「夢を夢のままで終わらせてはならない」

 首相は1月20日の施政方針演説をこう締めくくった。直接的な言及はなかったが、筆者には悲願である憲法改正を指しているように聞こえた。

 これに先立つ16日の自民党中央政治大学院の会合では、「歴代の総裁が時代に応じて全力を尽くしてきたが、党是である憲法改正はいまだ成し遂げることができていない。必ずや、今度こそ成し遂げたい」と訴えた。

 もともと憲法改正に強い意欲を持つ首相だが、これらのメッセージの裏側には、残された任期への意識もあったのではないだろうか。

 首相の党総裁任期は来年9月まで。総裁4選の可能性も取り沙汰されるが、規定通りにいけば残された時間は1年8カ月しかない。客観的に見れば、任期中の憲法改正はすでに「赤に近い黄信号」(自民党中堅)の状況だ。

 憲法改正には、国会に憲法改正原案を提出し、衆参それぞれ3分の2の賛同を得て発議する必要がある。改憲原案の国会審議には少なくとも2国会を要するとされることから、できれば今国会中、遅くとも今秋召集の臨時国会には改憲原案を提出する必要がある。

 しかし、憲法論議の場となる国会の憲法審査会の動きは鈍い。手続き法に過ぎない国民投票法改正案でさえ野党の反対でまともに議論されず、5国会連続で継続審議となっている。与野党に争点のない法案でさえこのありさまなのだから、改憲原案の提出など「夢のまた夢」なのだ。

 野党の反発を覚悟のうえなら、改憲原案を国会に提出はできる。原案の提出には衆院100人、参院50人の賛同が条件となるが、自民党は単独でもこのハードルをクリアしている。

 ただ、発議に成功するかは見通せない。衆院はともかく、参院の議席は連立を組む公明党を合わせても成立条件の3分の2に届かない。その公明党も、憲法への自衛隊明記など自民党改憲案には慎重な姿勢で、すんなり付いてくる公算は小さい。

 仮に憲法改正に前向きな日本維新の会や国民民主党の一部議員を抱き込み、なんとか国会発議にこぎつけたとしても難関は続く。国会発議から60日~180日後に国民投票を実施し、過半数の賛同を得る必要があるが、国民にそれまでの過程が「強引だ」と映れば否決されるリスクが大きい。

 首相の腹心である自民党の甘利明税調会長が23日のCS番組収録で、首相の任期中の憲法改正実現は「日程的に厳しい」と指摘したのは、こうした窮状が背景にあるからだろう。

 では、首相はこのまま時間切れを待つのだろうか。期待半分だが、政治生命をかけた乾坤一擲の勝負に出る可能性は少なからず残されていると記者はみている。国民の中に憲法改正の機運が高まり、議論さえ拒む野党への逆風が強まれば、首相はリスクを覚悟で憲法審査会を動かそうとするのではないか。

 憲法審査会には「中山方式」という暗黙の紳士協定が存在する。国家の最高法規である憲法論議を深めるため、与党は少数政党にも均等に発言機会を与え、強行採決などを避ける「度量」を持つ。その一方、野党は党利党略を排す「良識」を保つというものだ。

 しかし、審議拒否を繰り返す今の野党に良識は感じられない。首相がいつまでも度量を示し続けるとは限らない。

 自民党憲法族も「首相が野党への批判を控え、ひたすら憲法議論を呼びかけているのは、議論に乗らない野党の姿を浮き彫りにするためだ」とみる。

 憲法改正という歴史的な偉業を実現できるのか、大きな岐路を迎えている。そのリトマス試験紙となるのが、主要野党が採決を拒み続けている国民投票法改正案への対応だ。

 首相が意を決して動き出した場合、野党は「数の横暴」などとキャンペーンを張るだろうが、改正案を人質に取り、議論すらしぶり続けたこれまでの姿勢も審判を受ける日がやってくる。

(政治部 石鍋圭)

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