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大阪の古刹にロシア人僧侶 外国人観光客にも評判

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ロシア人副住職のドミトリー・ヴォルコゴノフ・慈真さん=大阪市平野区の如願寺
ロシア人副住職のドミトリー・ヴォルコゴノフ・慈真さん=大阪市平野区の如願寺
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 飛鳥時代に聖徳太子が創建したと伝わる大阪市平野区の古刹(こさつ)「如願寺(にょがんじ)」に、ロシア人の副住職がいる。ドミトリー・ヴォルコゴノフ・慈真(じしん)さん(30)。若い頃から日本文化に憧れ、実家が寺の女性と結婚したのを機に、日本で本格的に修行して僧侶に。寺の宿泊施設を利用して外国人観光客らを受け入れる「寺泊(てらはく)」にも積極的で、「日本と世界の懸け橋になりたい」と意気込む。

(井上裕貴)

 「よいお参りでした」。長身の袈裟(けさ)姿で境内に立ち、流暢(りゅうちょう)な日本語で参拝者に話しかける。

 如願寺は、弘法大師空海を宗祖とする真言宗御室(おむろ)派の寺。外国人のイメージとはかけ離れているため、平成29年に副住職に就任した際は「どういった縁で僧侶に?」「どこから来たのですか?」などと質問されることも多かったという。

 しかし、その立ち居振る舞いは僧侶そのもの。檀家(だんか)を法事で訪れたり、参拝者の相談に耳を傾けたりすることも日常茶飯事だ。

 それでも「外国人の自分が、まさかお坊さんになるとは…」と不思議な縁を振り返る。

日本に憧れ

 ロシア・ウラジオストク出身。最初は中学生の頃、地域の合気道教室で日本文化に触れた。対戦相手の力を利用する「平和的」な考えの日本の武道に感銘を受けた。

 高校生の時、交流事業でウラジオストクの姉妹都市・新潟市に初来日。おいしい寿司(すし)と熱い温泉が印象に残っているという。

 地元の大学に進学すると日本史を専攻し、空海を研究テーマに選んだ。単なる宗教家としてだけでなく、貧しい人にも手を差し伸べる優れた人間性を知り、ますます没頭した。

 大学を卒業後、ウラジオストクでフリーの通訳になった。日本文化への憧れを抱き続け、休暇のたびに日本を訪れた。

 空海の足跡をたどるため四国八十八ケ所巡りのお遍路へ。道中、宿がなく困っていると地元の寺の住職が宿坊を提供してくれた。菓子店でミカンをもらうこともあり、何度も日本人の温かさに触れた。

結婚、そして住職からの誘い

 平成25年、現在の妻、奈央子さん(36)と出会って人生の転機を迎えた。ウラジオストクで通訳をしていた際、実家が如願寺の奈央子さんが日本人観光客のツアーガイドとして訪れたのだ。すぐに意気投合し、遠距離恋愛を経て27年に結婚した。

 当初はロシアで生活することを考えたが、奈央子さんの父親で住職の雅昭さん(75)から「一緒に寺で働いてくれないか」と誘われた。最初は思いもよらない提案に驚いたが、すぐに「大好きな日本と空海に関わる仕事がしたい」と受諾した。

 仁和寺(京都市右京区)で1年間の修行に入った。外国人でも他の日本人修行僧と扱いは同じ。毎日午前5時には起床し、読経。掃除や勉強にも励んだ。

 「厳しい修行を乗り越えた時、以前の自分と全く違う自分になった気がした。前よりも木は緑に、空は青く見えた。生きているだけで幸せだと思った」

外国人もおもてなし

 外国人の僧侶として意識しているのは、日本と世界の懸け橋になることだ。

 副住職になると、翌30年3月には、寺を宿泊施設として活用し外国人観光客らを受け入れる「寺泊」を始めた。寺の横にある古い民家を買い取り、民泊として申請。内部には畳の部屋や床の間があり、本格的な日本の暮らしが味わえる。

 インターネットなどで知って訪れる外国人はロシア人だけでなく、米国人やフランス人、中国人ら多彩。そのため英語とロシア語、日本語の3カ国語を巧みに使いこなし、相手に合わせて丁寧なもてなしを心掛ける。

 寺泊では、朝の読経のほか、書道、茶道などの体験もできる。書道体験では慈真さんが自ら、慣れない手つきの外国人観光客の後ろから手を添え、筆の使い方を教える。利用した外国人からも、「日本の伝統文化を一度にたくさん味わえる」と好評だ。

 ただ、建物の老朽化が著しかったため昨年5月から一時休業。境内に新しい施設を建設中で、今年夏からの再開を目指している。再開後は瞑想(めいそう)体験や太鼓を使った勤行など、さらに本格的な仏教の世界を味わえる寺泊を計画中だ。

 「僧侶として、まだ始まったばかり。これからも日々学んで精進し、一生日本で暮らしたい」と目を輝かせる。

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