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【経済インサイド】東電、台風停電で報告書、見通しの甘さ浮き彫りに

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電線の復旧作業に当たる東京電力の作業員=2019年9月、千葉県富津市(永田岳彦撮影)
電線の復旧作業に当たる東京電力の作業員=2019年9月、千葉県富津市(永田岳彦撮影)

 昨年9月の台風15号による千葉県で起きた長期間の大規模停電について、東京電力ホールディングス(HD)が、この間の対応の報告書を取りまとめた。報告書では、被害の状況確認不足や初動対応を反省するとともに、現場の状況を十分に確認しない段階で、小早川智明社長が復旧見通しの公表を決めたことが明らかにされた。

 政府から早期の公表を急かされたような発言があったものの、東電HDの経営陣が誤った方針を出したことが浮き彫りになった。だが、処分は厳重注意にとどまった。

 台風15号は9月9日の早朝、千葉市付近に上陸し、茨城県内を北東に進んで太平洋に抜けた。最大瞬間風速は毎秒58メートルの暴風となり、千葉県では送電鉄塔2基、電柱約2000本が倒壊し、最大93万戸が停電となった。

 復旧が進んだ他の地域に比べ、千葉県内では50万戸以上で停電が続いた。東電HDの送配電事業子会社である東京電力パワーグリッド(PG)は、9月9日に復旧の見通しを示さなかったが、10日午後7時過ぎ、「11日朝までに停電件数を12万戸にまで縮小させ、11日中の全ての復旧を目指す」と発表した。

 停電で冷房が使えず、猛暑による熱中症被害多発が懸念される中で、多くの被災者が安堵したが、この期待が、ものの半日で覆された。

 東電PGは11日朝8時前に緊急会見を開き、依然43万戸で停電が続いていると発表し、「全ての復旧を目指す」という前日の発表を覆した。その後は、エリア別に復旧までの期間を提示する方式に切り替えるなど、復旧見通しの公表方法を変更するなど、一貫性のない対応が続いた。

 東電HDはグループの復旧要員に加え、他の大手電力会社からの応援要請を拡大して復旧のピッチを上げたが、結果的には全戸の停電解消は24日となり、発生から2週間を要した。

 報告書では、9日から11日までの復旧見通し公表の経過が記されている。9日夕時点では、設備の巡視が全体の15%しか進んでおらず、要員も不足していた。しかし、本社の本部から派遣された応援要員が、その時点での停電回線数と投入要員数を基に、過去の実績や経験から推測した復旧見通しの発表を促したという。

 10日午後の本社の本部会議には、巡視が進んでいないことなども報告されていたが、東電PGの金子禎則社長が「3日以上の停電が残ることについて、大規模災害や人手不足だけを理由にしてお客さまに説明するのは難しい」と発言。また、現地被害状況を把握するために経済産業省から派遣されたリエゾン(連絡員)からも、「停電でお困りのお客さまにご理解いただくためには、単に人手がないというだけでは理由にならないのではないか」と、問題提起があったという。

 会社としてのメンツを重視する姿勢のほか、政府側から早期復旧の見通し表明を急かされたような発言もあり、一気に10日中の復旧目標公表の流れができたようだ。

 そういった中、本部会議では、巡視の遅れがある中で、復旧見通しの精度を確認する意見もあったが、最終的には東電HDの小早川社長が、11日中に復旧を完了させる見通しは「一定の合理的な推定に基づくもの」との認識を示し、10日夜の公表に至った。

 結果的にはこれらの誤った判断が混乱を招いたが、今回、報告書の発表と同時に、小早川氏と金子氏のみに厳重注意処分が下されただけだった。

 しかし、「11日復旧完了」を覆した11日朝の会見では、その遅れの理由を、11日未明に雷雨があり、作業ができなったことが主要因としていたが、今回の報告書にはその記述はない。見通し撤回の段階でも、現状確認が不足していた事実や、誤った判断をしていたことを隠そうという意識が働いていたようだ。

 報告書では今後の方向性として、対外公表には「巡視状況などを正確に把握したうえでの復旧見通しの見極め」が必要としている。

 しかし、政府は昨年の台風15号、19号の被害を重視し、「原則24時間、大規模災害時でも48時間以内に被害状況を把握すること」を電力会社に求める方針を決めている。この時間的な制約が課せられる中、十分な現状確認ができる体制を作ることができるか、東電に求められている。(経済本部 平尾孝)

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