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いま注目 高齢化先進県の認知症予防策

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 高齢化が進み認知症患者も増える中、鳥取県は鳥取大などと連携し、独自の認知症予防プログラムを開発した。運動や知的活動、座学を組み合わせたプログラムを週1回継続して行うもので、高齢者136人を対象にした実証事業で効果が確認されたという。

運動+知的活動+座学

 「5の倍数で胸の前で手をたたき、7の倍数で両手をあげましょう」。昨年12月、同県琴浦町で開かれた「とっとり方式認知症予防プログラム普及フォーラム」。作業療法士の指導で高齢者らが足踏みしながら拍手をしたり、手をグー・パーに動かしたりする運動に取り組んでいた。

 同県が開発したのが「とっとり方式認知症予防プログラム」。日本財団との共同プロジェクトで、平成28年に鳥取大、同県、同県伯耆(ほうき)町が協議会を設置して開発に着手した。認知症研究の第一人者として知られる鳥取大医学部の浦上克哉教授を中心に、県内の医療や福祉、リハビリの専門職などが検討し、29年に完成した。

とっとり方式認知症予防プログラムの運動に取り組む人たち(鳥取県提供)
とっとり方式認知症予防プログラムの運動に取り組む人たち(鳥取県提供)
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 「とっとり方式-」は運動と知的活動、座学の各プログラムで構成され、12~15人で週1回、2時間実践する。

 運動では準備運動の後、足踏みをしながら拍手をしたり、椅子から立ち上がり、中腰になる「椅子スクワット」を行ったりする。知的活動は計算やお手玉、カレンダー作り、パズルなど。琴浦町でのフォーラムでは、参加者はバスケットボールを数人でパスする動画を見ながらパスした回数を答えるクイズに挑戦した。

 これに、4週間に1回の座学が行われ、認知症の症状や予防に有効な生活習慣などを学ぶ。

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認知機能改善などに効果

 伯耆町では29年7月~30年11月、高齢者136人を対象に「とっとり方式-」の実証事業を実施。実施前後の認知機能や身体機能を測定し、比較・分析したところ、認知機能が改善し、上・下肢の筋力や柔軟性で身体機能が向上するのが確認された。運動、知的活動、座学の3つを組み合わせたプログラムの医学的効果が証明されたのは全国初という。

 参加者に行ったアンケートでは「頭がはっきりしてきた。生活にも積極的になった」「自分なりに物事が少し勉強になった」といった感想が寄せられた。参加者の9割以上が「引き続き参加したい」と答えたことから、伯耆町では修了者を対象にした「フォローアップ教室」を開催している。

 県長寿社会課の向井京子係長は「同じ目的に取り組むことで交流の輪が広がり、高齢者の表情も変わってきた。教室をきっかけに交流が進んだのも大きな成果」と話す。

「軽度認知障害を見逃すな」

 もともと「とっとり方式-」は、16年から行われている同県琴浦町の認知症予防の取り組みがベースとなっていた。

 同町では、浦上教授が開発したタッチパネル式のコンピューター「物忘れ相談プログラム」を使って町内の65歳以上に認知症の検査を実施。「今日は何曜日?」など簡単な質問に答えてもらい、認知症やその前段階の軽度認知障害(MCI)の可能性を判断している。

 その結果としてMCIが疑われる場合、予防教室を紹介し、有酸素運動や知的活動などに取り組んでもらう。これを3カ月間続けると、認知機能が改善する効果が表れ、町の介護保険費用の削減にもつながっているという。

普及フォーラムで成果を発表する鳥取大医学部の浦上克哉教授=鳥取県琴浦町
普及フォーラムで成果を発表する鳥取大医学部の浦上克哉教授=鳥取県琴浦町
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 浦上教授が、認知症予防のポイントにあげるのがMCIを見逃さないこと。放置すれば5年以内に認知症になる恐れがあり、「MCIの人に適切な予防を行えば、1割が正常に復帰でき、4割はMCIにとどまることができる」と強調する。

認知症予防が課題

 鳥取県の高齢化率は29年4月現在で全国平均の27・5%を上回る30・4%。県内高齢者の2万1千人が認知症と推計され、認知症予防が喫緊の課題となっている。

 そのため県は、市町村の担当者を対象にした「とっとり方式-」の説明会や、指導者養成の研修を開催。介護施設やサロンで行いやすいようにプログラムのパンフレットやDVDを作成し、全県展開を目指している。

 浦上教授は日本認知症予防学会の理事長を務めており、全国各地の講演会でとっとり方式を紹介。これまでに東京都渋谷区など20以上の自治体から県に問い合わせがあった。浦上教授は「これまで『認知症予防に本当に効果あるのか』という声にこたえられるものがなかった。全国に広がってほしい」と話している。

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