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【バドミントン通信】エース桃田の交通事故 求められる危機管理

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1月15日、交通事故に遭った遠征先のマレーシアから帰国したバドミントンの桃田=成田空港(戸加里真司撮影)
1月15日、交通事故に遭った遠征先のマレーシアから帰国したバドミントンの桃田=成田空港(戸加里真司撮影)
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 バドミントン男子シングルス世界ランキング1位の桃田賢斗(NTT東日本)が遠征先のマレーシアで遭った交通事故は、発生から2週間がたった。徐々に当時の壮絶な状況が明らかになってきた。顔面裂傷と全身打撲を負った桃田の回復具合は順調といい、3月中旬の全英オープンでの実戦復帰も視野に入れる。一方、日本バドミントン協会は来月の世界バドミントン連盟(BWF)理事会で、再発防止の議論を提起したい考えだ。(運動部 久保まりな)

■当初は放心状態

 「事故がありました」

 車に同乗していた平山優コーチ(日本ユニシス)から日本代表の中西洋介コーチの元に電話が入ったのは、現地時間13日午前5時1分だった。

 桃田らがホテルを出発したのは午前4時半。前日までのマレーシア・マスターズを終え、インドネシアに行く日本代表本体と別部隊で帰国するため、クアラルンプール国際空港に向かう途中だった。

 中西コーチや日本代表の朴柱奉(パク・ジュボン)ヘッドコーチ(HC)らが高速道路の事故現場にかけつけたのは、午前6時ごろ。流血していた桃田は路肩に座り、呆然とした表情を浮かべていた。中西コーチは、「放心状態というか。会話という会話になっていなかった」と振り返る。「僕、大丈夫ですか? バドミントン、大丈夫ですか?」と尋ねた桃田に、朴HCが「大丈夫」と返答する場面もあったという。

 ほどなくして救急車がやってきて桃田は病院に搬送された。手術後は徐々に落ち着きを取り戻し、付き添った朴HCに、「(負傷した顔は)ハンサムに戻りますかね」と冗談を言う余裕もあった。

 それでも、事故の衝撃は少なくない。運転手は死亡し、4列目に座っていた平山コーチは、2列目まで飛ばされた。桃田は、運転席のすぐ後ろに座っていた。朴HCは、「彼は運転手が亡くなったのはわかっていなかったのでは」と推測するが、中西コーチは「(その後)車に乗ったときに、事故のことを意識してしまった」。フラッシュバックも懸念される。

 桃田は現在、静養に努めている。日本協会は、3月11日開幕の全英オープン(バーミンガム)を復帰戦にしたい方針だ。

 すでに東京五輪出場を確実にしている桃田は世界ランキングも、2位に3万ポイント以上の差をつけている。仮に復帰がこの試合に間に合わなくても、五輪出場自体に大きなダメージはない。ただ、同大会は格付けが高く、五輪前最後の、世界各国から有力選手が集う大会になる。それだけに、朴HCは「本人がやりたいと思う」と話す。日本協会関係者も「彼は、試合勘を大事にする選手なので」と代弁した。

■求められる危機管理

 海外を転戦するアスリートにとって、移動の不安は常に付きまとう。バドミントンの国際大会では、現地での移動は開催国の国内競技団体(NF)が準備する。今回の車は、マレーシア協会が手配したものだった。

 日本で開催する際は、大型バスで移動させたり、少数の場合はハイヤーや安全なタクシー会社を使ったりしている。日本協会関係者によると、国によって経済や交通事情が異なるため、各国で移動手段などを統一することは現実的ではないという。

 しかし、BWFの理事を務める日本協会の銭谷欽治専務理事は、2月中旬に行われるBWF理事会で、再発防止の議論を求めたい考え。「事故が再発しないような、しっかりとした輸送体制など、問題提起をしていきたい」と訴える。

 加えて、選手にも「シートベルトを締めるとか、一番前や一番後ろの席はやめるとか、改めて徹底したい」と銭谷氏。桃田の完全復活を願いつつ、選手を守る危機管理の強化も求められている。

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