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【アメリカを読む】イラン司令官殺害は自衛行動か トランプ政権、揺らぐ説明

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 米軍がイラン革命防衛隊の精鋭「コッズ部隊」のソレイマニ司令官をイラクで殺害したことに関し、同司令官が画策していたとされる攻撃をめぐるトランプ米政権の説明に不信の目が向けられている。政権は「差し迫った脅威があった」とするが具体的な証拠を示しておらず、説明にも揺らぎがみられる。殺害が薄弱な根拠に基づいていたとの見方が強まっていることは、イラク駐留米軍に対する反発にもつながる恐れもある。(ワシントン 住井亨介)

■政権内でトランプ氏と異なる見解

 「おそらく(イラクの首都バグダッドを含む)4つの米大使館だった」。トランプ米大統領は10日、ソレイマニ司令官が攻撃しようとしていた対象について、米FOXニュースのインタビューでこう述べた。

 トランプ氏はそれまでに在バグダッド米大使館が狙われていたとしていたが、インタビューでは詳しい状況について説明せず、他の3カ所については不明なままだ。

 ところが、この「4カ所の米大使館」への脅威をめぐって、政権内ではトランプ氏とは異なった見解が出ている。

 エスパー国防長官は12日、CBSテレビのインタビューで4カ所の大使館が標的になっていた証拠を問われ、「(そのような)情報は見ていない」と否定してしまった。

 エスパー氏は、「大統領が言ったのは、(バグダッド以外の)他の大使館にも攻撃がおそらくあるかもしれないと考えているということだ。私も他の安全保障チームも大統領と同じ見解だ」と取り繕ったものの、不自然さは隠しきれない。

 12日付のニューヨーク・タイムズは、複数の政権当局者の話として、攻撃の時期や場所については具体的なことが分かっておらず、米国務省当局者は「差し迫った」との表現を使ったことは「間違いだった」と話していると報道。計画の信憑(しんぴょう)性が揺らいでいる。

■与党議員も「最悪」とこきおろす殺害作戦

 トランプ氏の発言の前日には、ポンペオ国務長官がFOXニュースで、ソレイマニ司令官が計画していたとされる攻撃の「正確な時期、場所は分からない」と言及していた。

 トランプ氏には、司令官の攻撃計画がより大がかりなものだったと主張することで、殺害作戦を正当化する狙いがあったとみられる。だが、閣僚らの発言は、殺害作戦にしっかりした根拠があったのか、さらには自衛措置だったとする政権の主張が正当だったのか、逆に大きな疑念を生じさせることになっている。

 過去の政権では重要な軍事行動の際には、野党にも事前に通知して超党派の理解を得ることが多かった。民主党のペロシ下院議長らは、今回の司令官殺害では議会への正式通知が事後だったことを問題視し、殺害は「イランとの緊張を高め、米兵や外交官らを危険にさらした」と非難している。

 トランプ政権は非公開で議会上下院に殺害作戦について説明したが、具体的な証拠は示さなかったもようで、「まったく差し迫ったものはなかった」(ファッジ下院議員)などと、民主党議員の多くが否定的な見方を強めた。批判は与党・共和党からも出ており、同党のリー上院議員は「私が軍事関連で受けた説明で最悪のもの」とこきおろしている。

 トランプ氏はこうした懸念を一蹴する。ツイッターで「攻撃が差し迫っていたのか」「私のチームが(見解で)一致していたのか」について議論があるとしたうえで、「答えはどちらもイエスだが、彼(ソレイマニ司令官)のひどい過去を考えればそんなことはまったく問題ではない」と強弁した。

■イラクで高まる対米批判

 米国は2003年のイラク戦争以後、同国に米兵を駐留させてきた。現在は、イスラム教スンニ派過激組織「イスラム国」(IS)掃討などを目的に約5000人規模が駐留している。ソレイマニ司令官の「コッズ部隊」を通じてイランへの浸透を図ってきたイランにとり、駐留米軍は目の上のタンコブだ。

 司令官殺害後、イラク国会では、シーア派の親イラン勢力が主体となり、米軍の撤収を要求する決議がなされた。親イラン勢力がこの機に、イラクでの米国の影響力を削ごうとしているのは明白だ。

 そんな中で司令官殺害をめぐる米国の根拠説明が揺らげば、イラン側にいっそう対米批判の材料を与えることにもなりかねない。

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