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【一聞百見】噂の京都さんかく…「御所南スイーツ」を世界へ “努力する天才”ショコラティエ、垣本晃宏さん(49)

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遅咲きだからこそ「全ての経験が今に生きています」と話す垣本さん =京都市中京区(永田直也撮影)
遅咲きだからこそ「全ての経験が今に生きています」と話す垣本さん =京都市中京区(永田直也撮影)
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 洋菓子のブランド名といえば大抵は横文字だ。ところがいま、漢字で京都の人気エリアの名を掲げた「御所南チョコレート研究所」の新スイーツ「京都さんかくショコラサンド」が登場し、話題を集めている。仕掛け人は京都出身の世界的ショコラティエ、垣本晃宏さん(49)。営むパティスリー(洋菓子店)「 ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ・カキモト)」は京都市中京区の御所南エリアにあり、首都圏からのリピーターも多い超人気店だ。御所南ブランドのさまざまなスイーツを、世界に売り込みたいと夢を膨らませる。(聞き手 編集委員・岡田敏一)

■ The center of Kyoto …「洛中」の中でも全国から注目「御所南」

 京都・洛中の中でも最近、全国的に注目を集める地域が「御所南」だ。京都御苑のちょうど南側、広さ約0.7平方キロのエリア。近年おしゃれな飲食店などが続々開業。人気の観光スポットで知られるようになった。そんなエリアに平成28年4月にオープンした「アッサンブラージュ・カキモト」は、カウンター10席の小ぢんまりした店舗だが、その名前は“世界的な天才パティシエが満を持して出店したお店”として、全国のスイーツ通の間で響き渡っている。

 味はもちろん、究極の美しさや繊細さを競うスイーツの世界でその名を知られた人だけに、気難しくて神経質な芸術家タイプの人では…と恐る恐る店に伺ったが、意外にも気さくで、ざっくばらんな印象。「いろいろ遠回りしましたよ」という半生を、長時間にわたって振り返り忌憚(きたん)なく話してくれた。

 京都府宇治市生まれ。ごく普通の家庭で育ったが、1つだけ少し違ったところがあった。「幼稚園の頃から卵焼きを巻いたり、自分が作った料理を人にあげたりするのが好きだったんです」。早くも料理人の素質を見せてはいたものの、中・高校時代はラグビーに打ち込んだ。ところがやはりスポーツではなく料理、それもパティシエの道へ。

 「小中高と図工や美術の成績はずっと5段階の5だったので、そういう才能というか、美的感覚が生かせると思った」からだが、週末も休めない厳しい世界に飛び込むことに最初は迷いがあった。「結局、遊びたいので自分が学んだ大阪の製菓専門学校の事務職員になった」。ところが「やはりパティシエにならねば」と思い直し、旧京都ロイヤルホテルでさまざまなケーキを手がけるようになる。

味はもちろんデザインにもこだわった垣本さんのスイーツは宝石のよう=京都市中京区(永田直也撮影)
味はもちろんデザインにもこだわった垣本さんのスイーツは宝石のよう=京都市中京区(永田直也撮影)
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御所南エリアの「 ASSEMBLAGES KAKIMOTO (アッサンブラージュ・カキモト)」 =京都市中京区(永田直也撮影)
御所南エリアの「 ASSEMBLAGES KAKIMOTO (アッサンブラージュ・カキモト)」 =京都市中京区(永田直也撮影)
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 パティシエを目指し、確かな一歩を踏み出したわけだが、ここからジェットコースターのような半生が始まるのだった…。

いま注目の「京都さんかくショコラサンド」の外箱
いま注目の「京都さんかくショコラサンド」の外箱
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■料理しながら放浪の旅

 京都の有名ホテルでさまざまなケーキ作りに奮闘し、約3年半。働くホテルに1人のケーキ職人がアルバイトでやってきた。阪神大震災が起きた平成7年のことだ。当時、神戸市の洋菓子店で働いていたが、店が被災し、このホテルで働くことになったのだった。彼との出会いで新たな世界が開けた。「ハーブを使うなど、僕が経験したことがない彼のケーキ作りのノウハウを間近で見て『こんな考え方もあるのか』と衝撃を受けたんです」

 震災から約1年半後、誘いを受け、復興した神戸で彼が開業させた洋菓子店「神戸菓子sパトリー」で働くことに。約1年、フランス菓子からパン作りまでを学んだ。その後、同店のレストラン部門でデザート担当をひとりで任された。「とはいえ魚をさばいたり、オードブルを盛りつけたり。料理の補助もやり、いろいろ学べました」。ここで約2年。「習うこともなくなりまして。珍しい香辛料や食材にも触れ、大抵の料理は材料を見るだけで調理法が分かるようになりましたね」

 いかにも天才なのだが、「これから何をしていいか分からなくなった」と突然、店を辞めて単身、沖縄の西表島に移住してしまう。「29歳か30歳の冬でしたかね~」と、記憶すらあいまいなところも天才らしい。「料理人を探しているという噂をちらっと聞いて…。海や魚も好きで、ちょっと行ってみよか、みたいなノリ」で、民宿で料理人として約8カ月働いた。「朝食を作り終えたら、海で泳いでましたね。そして夕方から夜まで夕食作りという日々でした」

 そして、稼いだお金を手に今度は観光しながら沖縄本島に渡り、鹿児島から熊本、山口を経て、島根から日本海沿いの街を転々とした。パティシエを目指して確かな一歩を踏み出したはずが、気が付けば職業は“旅人”に。お金もいよいよ底を付いてきた。

 「そろそろ働かんと、しゃあないな~」と思い始めた頃。電話がかかってきた。神戸に開業した自身の店に自分を誘ってくれた、あの恩人だった。「ええかげん、働け!」。大阪市の洋菓子店「アトリエ・アルション」でシェフパティシエとして働くことに。「ひとりで全部を任されていたので、経営の勉強ができたことも大きかった」と振り返るが、その後の人生を決定づけたのは、ここで働き始めて洋菓子のコンクールの存在を初めて知ったことだった。

味もデザインにもこだわった「 ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ・カキモト)」のケーキの数々 =京都市中京区(永田直也撮影)
味もデザインにもこだわった「 ASSEMBLAGES KAKIMOTO(アッサンブラージュ・カキモト)」のケーキの数々 =京都市中京区(永田直也撮影)
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 「34歳のときでした。自信はあったんですが、最初に出場した近畿のコンクールでは38人中37位。ショックでしたね」。ほぼ最下位という屈辱の結果に奮起。放浪の旅を経て、いよいよ天才がパティシエとして本領を発揮するときがくる。

独創的なスイーツで「御所南ブランド」を世界に発信する垣本晃宏さん =京都市中京区(永田直也撮影)
独創的なスイーツで「御所南ブランド」を世界に発信する垣本晃宏さん =京都市中京区(永田直也撮影)
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■遅咲き 全ての経験を糧に

 34歳で製菓のコンテストで成果を出すという目標を見つけた垣本さん。師匠にも付かず、講習会を受けながら試行錯誤を続ける日々が4年ほど続いたが、一向に成果は出なかった。「これでダメだったら、もうパティシエになるのは諦めよう」と、挑んだチョコのオブジェ作りの技術などを競う国内の大会で約100人の参加者中、3位を獲得。以来、さまざまな技術を会得して世界大会でも着実に結果を出す。

 2年に1回、仏リヨンで開かれる「クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー」では、2011(平成23)年になんと氷彫刻の部門で個人優勝。翌年には仏パリで開催される世界最高峰のチョコレート創作コンクール「ワールド チョコレート マスターズ」の日本予選で優勝。世界大会で2013(平成25)年と18(平成30)年に総合4位となった。ただの天才は“努力する天才”としてついに結果を出したのだった。

 そんな垣本さんのポリシーは「他人と同じことはしない」ということだ。「クリスマスにもバレンタインデーにも特別なことはしません。百貨店の催事にも出店しません」。何より、口に入れたときの味わいが違う。「パティシエ」「ショコラティエ」「キュイジニエ(料理人)」という3つの顔を持つ垣本さん。その“とがった”才能が生み出す独創的な発想は他の追随を許さない。

 例えばチョコに、ミョウガとグレープフルーツや、セロリとパイナップルといった常人が思いつかない食材を組み合わせる。口溶けのやさしさにもこだわり抜く。ケーキも同様で、モンブランにレモンの香りを付けたり、コーヒーとアズキとワインといった誰もしない組み合わせで驚かせる。「口に入れて、3つの味が順番に出てくるだけでなく、3つが微妙に混ざりながら5つの味を主張するような味わいが楽しめるのが特徴ですね」。そもそも店名の「アッサンブラージュ」とはフランス語で「組み合わせる」「寄せ集める」といった意味。垣本さんのスイーツに懸ける思いを具現化している。

注目を集めるスイーツ「京都さんかくショコラサンド」
注目を集めるスイーツ「京都さんかくショコラサンド」
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 「40歳から成功を収めた遅咲き」を自称する垣本さんだが、最近は長い遠回りが無駄ではなかったと痛感している。「全ての経験が今に生きています。おかげで、ケーキもパンもフランス料理も本格的に1人でこなせます。日本では僕だけです」と笑う。実際、店のディナーコースは垣本さんが本格フレンチに腕を振るう。

 開業した平成28年、御所南はまだ観光客が積極的に訪れる場所ではなかったが、いまやグルメ雑誌が特集を組む人気ぶりだ。それに着目し、垣本さんが芦屋の洋菓子ブランド「アンリ・シャルパンティエ」( http://www.henri-charpentier.com )とタッグを組んで生み出した“御所南スイーツ”第1弾が「京都さんかくショコラサンド」だ。京都銘菓をイメージした三角形で、チョコクリームをチョコのパイで挟み、上品な甘さにほんのり香るシナモンのアクセントが絶妙だ。10月6日からジェイアール京都伊勢丹( https://www.isetan.mistore.jp/kyoto/shops/floorB1.html )で販売が始まった。

 店近くに開いたサロン「京都御所南チョコレート研究所」で、さらなるスイーツを開発する。「スイーツの力で“御所南”の名前が世界に広まれば面白い」。新たな目標に向けて日々、邁進(まいしん)している。

     ◇

 【プロフィル】垣本晃宏(かきもと・あきひろ) 昭和45年、京都府宇治市生まれ。平成28年、京都市中京区の“御所南エリア”にパティスリー(洋菓子店)「アッサンブラージュ・カキモト」( http://assemblages.jp )を開業。

「ちょっと行ってみよか、みたいなノリ」だったと西表島への移住を振り返る垣本さん =京都市中京区(永田直也撮影)
「ちょっと行ってみよか、みたいなノリ」だったと西表島への移住を振り返る垣本さん =京都市中京区(永田直也撮影)
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