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「天下統一」から「忍者」まで NHK大河に絡め奇想天外な「明智光秀」像も

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明智一族の墓前で手を合わせる長谷川博己さん=5月、大津市
明智一族の墓前で手を合わせる長谷川博己さん=5月、大津市

 戦国武将、明智光秀の生涯を描く来年のNHK大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」。俳優、長谷川博己さんが演じる光秀のゆかりの地ではドラマ人気への期待感が広がるが、出版界でも光秀を描いた短編集の出版が相次いでいる。光秀の前半生は謎めいており、作品の中には“忍者光秀”も登場。本能寺の変で主君、織田信長を倒した戦国武将は、今も作家の創作意欲を刺激し、時代小説ファンの人気を保っている。

 「光秀は調べれば調べるほど正体がわからなくなるが、演じていく上でその神秘に気づいていけたら」

 「麒麟がくる」の収録前の今年5月下旬、光秀と一族の墓がある大津市の西教寺を訪問した長谷川さんは、自らが演じる光秀への好奇心をこう口にした。

 ドラマでは、戦国時代に翻弄されながらも生き延びる光秀の姿とともに、信長や豊臣秀吉らの運命も描く。俳優の本木雅弘さんらも共演する。

 大河ドラマの発表を機に、出版界でもドラマに絡めたラインアップを打ち出すのは“恒例行事”だが、今回も光秀に焦点をあてた刊行物が相次ぐ。

 文春文庫からは、「『麒麟がくる』をより面白く!」との帯をまいた海音寺潮五郎著『明智光秀をめぐる武将列伝』が出ている。もとは昭和41年刊行で、光秀のほか、斉藤道三、信長、秀吉、前田利家、黒田如水、徳川家康といった7人の武将の物語で構成。海音寺が描く光秀像は主君信長を倒したあとも、自ら起こした叛逆に最後まで良心の呵責を持つ-という「小心でまじめな性格」だ。

 光秀関連12本を収録した作品社の小説集「明智光秀」は、菊池寛、新田次郎、岡本綺堂、柴田錬三郎、正宗白鳥、山田風太郎、山岡荘八などスター作家を集めている。

 本能寺の変については、光秀の怨恨説、外部勢力による黒幕説など今でも諸説あるが、菊池の説はシンプルだ。秀吉などの武将が信長から離れた間隙をつく権力奪取だった、と。「優勝劣敗こそ天理、力こそ正義」の世界では「(謀叛は)別に怪しむほどのことではない」としている。

 「明智光秀の謎に豪華作家陣が迫る」という帯文句で売り出したのは文芸評論家の細谷正充さんが編んだPHP学芸文庫「光秀」。こちらは、冲方丁、池波正太郎、山田風太郎、新田次郎、植松三十里、山岡荘八の名前が並ぶ。

 編者の細谷さんが「ぶっ飛んでいる」と形容するのは、山田の「忍者明智十兵衛」だ。忍法帖というジャンルを確立した山田風太郎の真骨頂ともいえるが、自らの切断した肉体を再生させる忍法などは奇想天外。しかも、ストーリーの中でその忍法がカギを握るのだ。作品社に収録された短編でも、本能寺の変後、生き延びた光秀が秀吉を破って天下人になるというユニークな作品があり、山田ワールドを堪能できる。

 光秀をめぐっては、これまでにも数多くの作品が量産されてきたが、なぜ根強い人気があるのか。細谷さんは「光秀は信長や秀吉とは異なり、教養があり有職故実にも精通していた。いわば、体育会系の中の文系というイメージが強い」と指摘。その上で「信長の下で耐えに耐えて最後に謀叛を起こす。そして本能寺の変のあと、みじめな死に方をする。そんな人物像は日本人の好みにあうのではないか」と話す。

 謎めいた光秀の人物像に切り込む作家たちの創造性は、今もなお読者を飽きさせない。さて、来年の大河ドラマはどんな光秀をみせてくれるのか。時代小説ファンの注目度は高い。

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