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【ビジネス解読】沈む中国の自動車市場 減税・補助金の“カンフル剤”で副作用も

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 中国の自動車市場が2年連続の前年割れに沈む公算が大きくなってきた。昨年28年ぶりに前年実績を下回った市場は、今年8月まで14カ月連続の前年割れと低迷、販売不振から欧米有力メーカーの撤退観測まで出る状況だ。世界最大の自動車市場に何が起きているのか。

販売不振色濃く

 自動車業界団体の中国汽車工業協会が今月発表した8月の新販売台数は、前年同月比6・9%減の196万台。市場全体の8割強を占める乗用車が7・7%減の165万3000台と引き続き低調だったほか、中国政府が普及に力を入れている、電気自動車(EV)を中心とする環境対応の「新エネルギー車」も15・8%減の8万5000台と、2カ月連続でマイナスとなった。

 販売不振は色濃く、7月末には英紙フィナンシャル・タイムズが「撤退を余儀なくされる企業が出ることも懸念される」として、具体的に米フォード・モーターとプジョーを傘下に持つ仏PSAグループの工場稼働率低下を問題視した。実際、ロイター通信によると、PSAグループは今月に入り、撤退にこそ至らないものの、提携先である中国の東風汽車との合弁事業に関し、工場の整理統合など大規模なリストラ策の実施方針を発表している。

 中国政府は新車需要を喚起するため、8月下旬に渋滞緩和や環境対応でナンバープレートの発給を制限する新車登録規制の緩和を打ち出した。ただ、年前半の落ち込みを踏まえ、中国汽車工業協会は既に、昨年並みの約2810万台としていた2019年の市場見通しを下方修正。前年比4・7%減の約2668万台と、マイナス予測へと転じている。

 昨年来の自動車市場の沈下の背景には、米中貿易摩擦などによる景気減速や家計債務の積み上がりに伴う消費意欲の減退があると指摘されている。

 だが、問題はそれだけではない。市場全体の低迷にもかかわらず、トヨタ自動車とホンダの上半期(1~6月)実績はそれぞれ12・2%増、22・4%増と2桁の伸びを記録。日産自動車も8月まで3カ月連続のプラスを確保し、日本車は売れている。なぜか。

 新車需要の落ち込みの一因には、特に地元メーカーを悩ませている政府による“政策不況”の側面があったようなのだ。

厳しい排ガス規制

 中国政府は今年、世界最高水準の厳しい排ガス規制の導入を前倒しした。新規制の「国6」は、従来基準の「国5」に対し4~5割の大幅な性能向上を求める内容。まず20年7月に第1段階の「国6a」、23年7月により厳しい「国6b」を適用する計画だったが、主要都市で「国6a」の導入が1年早められ、上海や広州など一部の大都市では「国6b」の適用が4年も前倒しされた。

 北京の冬の風物詩とも揶揄され、社会問題化している深刻な大気汚染への対策のようだが、急な規制強化の前倒しは当然、混乱を招く。新排ガス基準を満たしていない車は敬遠され、政策導入時期の急な変更で疑心暗鬼になった消費者は新車購入を手控える。

 欧米の厳しい排ガス規制への対応で「国6」対応が進んでいた日本車に対し、割を食ったのが景気減速と政策変更の“ダブルパンチ”の直撃を受けた地元の中国メーカーだ。

 苦境は数字にはっきりと表れている。中国ブランド車の1~8月期の乗用車販売は前年同期比19・5%減と落ち込み、市場シェアも3・5ポイント減の38・9%と4割を切ってしまった。EVなど新エネルギー車の販売が7月に2年6カ月ぶりに減少に転じ、8月も2桁減となったのも、政府が購入補助金を最大5割減らしたためだ。

 そもそも中国政府は、景気浮揚策で、経済成長への波及効果の大きい自動車産業に、たびたび減税や補助金の「カンフル剤」を打ってきた。意図的に需要を作り出しては、環境問題が浮上するとナンバープレート制限や排ガス規制強化で需要を抑える。強引なアクセルとブレーキの市場管理を繰り返してきた。

 新車の普及期は、旺盛な購入意欲が需要の反動減など政策の副作用を吸収したのだろうが、今の市場の風景は、それなりの車を作れば売れる、右肩上がり時代の終焉を示している。

 年間販売が米国の約1・5倍の約2800万台にまで膨れあがり、環境規制も強化された市場は欧米の先進国に近い構造に変質。投資体力や技術力に劣るメーカーは淘汰される弱肉強食の時代に突入したようだ。(経済本部 池田昇)

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