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【外交安保取材】中国の「一帯一路」意識 日本とEUの蜜月

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 安倍晋三首相は9月下旬、米ニューヨークで国連総会などの外交日程をこなした後、欧州連合(EU)本部のあるベルギーの首都ブリュッセルへと足を延ばした。目的は、中国が進める巨大経済圏構想「一帯一路」に代わる選択肢として、国際基準に沿った世界各地への協力を日EUで主導する狙いだった。

 「道ひとつ、港ひとつにせよ、EUと日本が手掛けるなら、インド太平洋から西バルカン、アフリカに至るまで、持続可能で偏りのない、そしてルールに基づいたコネクティビティ(連結性、つながり)をつくることができる」

 安倍首相は9月27日、ブリュッセルで開かれた「欧州連結性フォーラム」で基調講演し、日本がEUと協力し、東欧やアフリカで質の高いインフラ整備を進める考えを表明した。

 フォーラムには欧州各国の首脳や閣僚らが参加したが、開催は安倍首相の参加が絶対条件だったという。

 「安倍首相が参加するなら、ブリュッセルで国際会議を開きたい」

 外務省幹部によると、今年5月ごろ、外交ルートを通じてユンケル欧州委員長のこんな要望が届いた。

 日本側が「国連総会出席後に参加可能」と返答すると、ユンケル氏は9月下旬のEU加盟国への訪問予定をキャンセルして、フォーラムの準備を進めた。テーマは「欧州とアジアの連結性」だったが、安倍首相ありきだったこと自体が、EUが日本との関係を重視していることを示している。

 その裏側にあるのは、欧州にも影響力を強める中国に対する警戒感だ。

 「一帯一路」は開発支援を通じてアフリカなどの途上国を「債務のわな」に陥れているとの批判も強いが、中国は欧州でも、インフラ投資などを通じて中東欧諸国16カ国との経済協力を強化する枠組み「16+1」を主導している。

 これに今春ギリシャが加わり、西欧諸国の間には「中国は、欧州の統一を阻害する行動に出ている」(日欧外交筋)と懸念が高まっている。

 EUが今年3月にまとめた対中戦略に関するリポートには、この懸念が端的に表れている。リポートは、中国を技術産業のリーダーシップをめぐる「経済的競争相手」であり、ガバナンスの代替モデルを進める「システミックなライバル」だと位置づけた。

 安倍首相はフォーラムの基調講演で、こうしたEUの対中観の変化と日本への期待に呼応するように、名指しを避けながらも中国を意識した発言を織り交ぜた。

 「日本と欧州を結ぶコネクティビティを確かなものにするには、地中海、大西洋へとつながる海の道であるインド・太平洋が、自由で開かれたものでなければならない」

 「(日本は)質の高いインフラを提供し、債務のわなに陥らない支援に尽力する。これは、EUがアフリカに対してなす約束と寸分たがわない」

 講演後、安倍首相はユンケル氏と、持続可能な途上国支援などに関する日EUのパートナーシップの共同文書に署名した。この中では、「一帯一路」と異なる選択肢として、国際基準を重視する持続可能なインフラ投資やデジタル経済のルールづくりを日EUが主導していく姿勢を示した。

 ユンケル氏が欧州委員長に就任してから5年間で安倍首相と重ねた会談は計20回。この間、日EUは、世界貿易の約4割をカバーする経済連携協定(EPA)や戦略的パートナーシップ協定(SPA)を結び、「かつてないほど緊密な関係」(外務省幹部)になったとされる。

 EPA、SPAをめぐっては昨年夏、安倍首相が西日本豪雨への対応のため、7月11日に予定していたベルギーでの協定署名をキャンセルし、一時は「これで発効は半年ぐらい遅れる」(同)との観測も出た。しかし、このときユンケル氏とEUのトゥスク大統領は「だったら晋三、ぼくらが行くよ」と提案し、署名式は直後の7月17日に行われ、EPAは今年2月に発効した。

 ユンケル氏は10月末で欧州委員長の任期を終える。安倍首相は、日EUの発展に尽くした友人へのねぎらいの言葉で基調講演を締めくくった。

 「ここまでわれわれが歩んだ道のりとその達成に、誇りを抱きます」

(政治部 原川貴郎)

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