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【ビジネス解読】「ココカラ」争奪は序章 薬局に再編の荒波

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顧客に寄り添った接客が高いリピート率につながっている
顧客に寄り添った接客が高いリピート率につながっている

 ドラッグストア大手のココカラファインをめぐり、同業のマツモトキヨシホールディングスとスギホールディングス(HD)が、それぞれ資本提携や経営統合の提案で“求愛”している「ココカラ争奪戦」。業界トップの巨大企業連合は実現するのか。市場が注目する合従連衡の動きの背景を探ると、安倍晋三政権のある政策が再編の背中を押している構図がみえてきた。

 そもそも、なぜマツキヨとスギHDはココカラを奪い合うのか。そのヒントは、スギHDが6月1日に公表したココカラとの経営統合協議開始の合意に関する文書にあった。

 「両社は、今後市場の拡大が続くと考えられる調剤を核とした医療・介護事業領域を強化し、ヘルスケアカンパニーを目指す戦略で一致している」。この一文にある“調剤”がキーワードだ。

調剤事業の強化

 ドラッグストアの経営では、処方箋に基づく調剤事業の利益貢献度が大きい。値引き競争の激しい日用品などに対し、保険制度の下、政府が公定価格を決める調剤は安定した利益を確保できるからだ。

 ちなみに、ココカラの平成31年3月期決算データでみると、売上総利益率はドラッグストア事業(日用品など)の28・1%に対し、調剤事業が38・7%と10ポイント以上高い。マツキヨの同期の決算データでも、利益率は日用雑貨が25・3%、医薬品(調剤以外も含む)が40・7%だ。

 「スギ薬局」を展開するスギHDはもともと、全1190店舗の約7割の833店で手掛ける調剤事業が強み。プライベートブランド(PB)商品などのイメージが強いマツキヨも、実はここ数年は調剤事業を重点的に強化している。27年3月期に228店だった調剤薬局(併設店含む)は、31年3月期には289店に拡大。全国の薬局から加盟店を募り、経営や調剤業務を支援するグループ化のプログラムも実施している。

 ココカラは規模では両社に及ばないが、他の業界大手に先駆けてテレビ電話による服薬指導に参入したり、スマートフォンのお薬手帳アプリなど独自のITインフラでも先行したりしており、この点で格好の提携相手だったわけだ。

医薬分業による環境変化

 もっとも、マツキヨとココカラが4月に資本業務提携の協議開始を公表した直後に争奪戦となったのは、安倍政権の医薬分業ビジョンに基づく薬の公定価格見直しという環境変化があった面も大きい。

 政府は、医師と薬剤師の役割を明確化する医薬分業を、高齢化の進展に対応して進化させようとしている。薬局・薬剤師に対して、単に医師の処方した薬を出すだけでなく、調剤の薬歴管理や服薬指導、さらには在宅ケア、健康増進・予防の支援などを求める政策を推進している。

 薬のもらいすぎの防止や継続的な健康管理で、増え続ける医療費を削減する狙いがあり、その実現に向けて診療報酬を改定。28年度からは、調剤薬局の機能によって薬代の算定ベースとなる保険点数にメリハリをつけた。

 病院前の「門前薬局」など、多数の処方箋をこなし単純な調剤を主とする薬局の保険点数を下げて報酬を抑える一方、服薬情報の一元管理や24時間対応などの条件を満たす、地域の「かかりつけ薬局」の報酬を手厚くする内容だ。その結果、薬局にはこれまで以上に情報管理のITインフラ整備や専門知識を持つ薬剤師が求められている。

 しかし、IT投資も薬剤師の増員も一朝一夕にはいかない。当然、薬剤師の人手不足感は強く、新年度入り直前の今年3月の医師・薬剤師の有効求人倍率(パート除く)は5・94倍に達している。1倍を超えると、求人が求職者を上回ることを示す有効求人倍率で、5倍は突出した高さ。直近の6月統計でも4・51倍と高水準が続く。

 そうなると、人員確保の面だけでなく、IT投資負担の軽減の面でも有効な経営手段として浮上するのが、資本提携などのM&A(企業の合併・買収)だ。

 政府は6月に閣議決定した「経済財政運営と改革の基本方針2019」(骨太の方針)に、令和2年度の診療報酬改定に向けて、かかりつけ機能のあり方や薬剤師の業務実態を踏まえて調剤報酬の適正化を図る方針を明記。今後、報酬改定を通じて政府のビジョンに沿った経営改革の加速を薬局に迫っていくとみられる。

 ココカラ争奪戦の行方は8月中にも決まる見通しだが、生き残りをかけた薬局の合従連衡はむしろこれからが本番かもしれない。(経済本部 池田昇)

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