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【国際情勢分析】「G20は成功」多極世界を目指すプーチン氏の世界観

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 日本が初の議長国を務めた6月末の20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)について、ロシアのメディアは好意的に評価している。「ロシアにとっても世界にとっても、有意義かつ成功裏に終わった」(独立新聞)。プーチン露政権の目指す「多極世界」がG20サミットに体現されていたことへの満足感が表れていた。(前モスクワ支局長、外信部編集委員兼論説委員 遠藤良介)

 ロシアは2014年のクリミア併合で主要8カ国(G8)から追放され、米欧の対露経済制裁を科された。しかし、プーチン政権は「G8はもはや廃れた組織だ。戻りたいとはみじんも思わない」(高官)としている。決して強がりではなく、プーチン大統領の世界観が根底にはある。

 先進7カ国(G7)首脳会議は1998年にロシアを加え、G8となった。91年にソ連が崩壊し、ロシアが市場経済への体制移行で混乱と困窮にあえいでいた時期である。G7は民主化への期待を込めてロシアを加えたが、「半人前」の扱いだった。

 プーチン氏は、その90年代に政官界の階段を駆け上り、99年に首相、2000年に大統領に就任した。当初はG8も通じた米欧との協調に関心を有したプーチン氏だが、徐々に意欲は失われていく。

 米国は02年、ロシアとの弾道弾迎撃ミサイル制限条約(ABM条約)から一方的に脱退。ミサイル防衛(MD)システムの開発を進め、戦略兵器の分野でロシアを引き離しにかかった。04年には、旧ソ連バルト三国など7カ国が一気にNATOに加盟した。03年のイラク戦争も、ロシアの反対を押し切って火蓋が切られた。

 冷戦終結後、ロシアは敬意をもって西側に迎えられるどころか、押し込まれる一方だ。プーチン氏はこうした“被害感情”を蓄積させ、大国復活路線へ傾斜していく。プーチン氏が唱え始めたのは、米国の「一極支配」を打破し、「多極世界」を構築するということだった。

 ロシアの言う多極世界とは、いくつかの大国が勢力圏を分け合い、世界の主要問題について決定するイメージだ。ソ連のような超大国は無理だとしても、ロシアは世界の「極」の一つとなることを目指す。

 G20サミットで、プーチン氏は12カ国の首脳と会談を行い、孤立感の払拭を印象づけた。日米の「自由で開かれたインド太平洋戦略」の向こうを張り、中露印などによる新興5カ国のBRICS首脳会議を行った。NATO加盟国のトルコには、ロシア製の新鋭防空システム「S400」導入を改めて確約させた。

 ロシアがイランや北朝鮮、シリア、ベネズエラといった「問題国家」の政権と手を組んでいるのも「多極世界」の発想からである。ロシアはこれらの国への影響力をテコにして米国に主張し、国際舞台での存在感を高める思惑だ。G20ではトランプ米大統領との約1年ぶりの会談も実現した。

 新興国の台頭と世界の多極化が実際に進んだ今、民主主義の価値観を軸にしたG7の意義が改めて問われよう。

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