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【ビジネス解読】かすむG20 白熱の議論を公開してみては…

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G20サミットであいさつする安倍晋三首相(中央)=6月28日、大阪市(代表撮影)
G20サミットであいさつする安倍晋三首相(中央)=6月28日、大阪市(代表撮影)

 国内で今年の大きな政治・経済イベントとして、6月末に大阪市で開かれた20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)が閉幕した。採択された「大阪首脳宣言」では、最大の懸案だった米中貿易摩擦について「自由で公平、無差別」な貿易環境を実現するよう努力すると明記し両国に自制を求めたものの、具体的な解決策には踏み込めずに終わった。G20の存在意義が問われ続ける中、激論が交わされているに違いない討議を思い切って全て報道陣に公開し、注目度を高めてはどうだろうか。

日本は「調停役」果たす

 今回のG20サミットで、議長国の日本は、首脳宣言の取りまとめに相当腐心したようだ。

 特に、目立ったのが地球温暖化防止の国際的枠組み「パリ協定」をめぐる表現だったとみられる。フランスを中心に欧州各国は協定にこだわった。マクロン仏大統領はサミット直前、「協定に触れず、野心的な目標を擁護できないなら」署名しない可能性を表明するなど強硬姿勢を見せた。これに対し、パリ協定からの脱退を宣言している米国が難色を示した。

 この結果、G20全体でパリ協定実施ガイドライン採択などの成果に「留意する」ことで合意。米国の完全な孤立が避けられた一方、前回サミットに続き、協定に基づかない米国の取り組みを個別記載する形に落ち着いた。政府関係者は「前夜になって米国が独立させる体裁を求めてきた」と打ち明ける。

 米中摩擦をめぐる文言でも紛糾した。米中それぞれが自国の批判と取られかねない表現に難色を示した。日本は「片方だけが批判されていると誤解されないよう」(政府高官)双方の問題点を指摘することで、米中から譲歩を引き出した。

 この結果、「反保護主義」こそ明記しなかったものの、「自由」「公平」など貿易戦争を過熱させる米中を牽制(けんせい)する文言を盛り込むことに成功した。自由貿易の基本原則を練り込んだ日本の努力の跡はうかがえ、議長の安倍晋三首相は「調停役」としての責務をまずまず果たしたといえるのではないだろうか。

 実際、経団連の中西宏明会長は「大阪宣言を取りまとめられた安倍首相の力強いリーダーシップに深い敬意を表したい」とコメント。日本商工会議所の三村明夫会頭は「反保護主義といった力強い表現こそ盛り込まれなかったが、自由で公正かつ無差別な貿易体制の推進という基本原則で一致できたことは評価したい」とした。

 G20メンバーではないが、招待国として出席したシンガポールのリー・シェンロン首相も首脳宣言に合意できたことを歓迎した。ただ、その一方で、自由貿易や温暖化対策などのテーマでは「目立った進展がなかった」と分析した。今回も反保護主義の文言が見送られたことを念頭に置いたものとみられる。

G20の存在意義低下?

 G20サミットの首脳宣言は、2008年のリーマン・ショック直後に開かれた初めての会議以降、毎回、反保護主義を明記してきた。しかし、17年に誕生したトランプ米政権に配慮し、昨年のアルゼンチンでのサミット以降、反保護主義は削除されたままだ。

 マクロン氏も閉幕後、「イラン問題について、また通商問題についても、G20サミットで最悪の事態は避けられたが、これは十分ではない」と遺憾の意を表明したようだ。

 仏フィガロ紙は2日付の論説で、「G20サミットで具体的な成果は何だったのか? ほんの少しだ」「G20の本質が多国間主義でなくなって久しい。G20以外では実現しないような2国間会談を行う場所になってしまった」と指摘した。

 確かに、サミット期間中の世界最大の関心事だった米中首脳会談では、トランプ米大統領と中国の習近平国家主席が、米政権が6月末に課すとした3000億ドル(約32兆円)分の中国からの輸入品への「第4弾」の追加関税を当面、課さないことで一致。併せて貿易協議を再開することで合意した。

 さらに、サミット直後の6月30日、トランプ氏は、南北軍事境界線上の板門店で北朝鮮の金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長と電撃的に面会し、サミットの余韻を吹き飛ばした。このため、メディアではG20の存在意義を問う声もちらほら出ていた。

 そこで提案である。G20の生討議を報道陣に公開してはどうだろうか。もちろん、「首脳同士の議論が公開されれば本音をしゃべりにくい」という声があるのは承知の上だ。しかし、「反保護主義に踏み込めなかった」「米中貿易摩擦を食い止める具体策は示せなかった」「G20の存在意義は忙しい各国首脳が定期的に顔を合わせる貴重な場」とメディアだけでなく、海外首脳からも揶揄(やゆ)される中、各国が主張をぶつけ合った白熱の議論を公開すれば、首脳宣言をまとめた日本の頑張りも正当に評価されるだろう。

 日本では、東京と大阪の財界がそれぞれ開くセミナーを原則公開するという先例もある。現場記者の時代によく取材した。共同声明や宣言は「予定調和」なのでそれほど面白くないが、議論をつぶさに見ると、それぞれの経営者はかなり本音をぶつけ合っており、大層面白かった記憶がある。

 さまざまな反対意見が噴出するのは予想に難くないが、大英断に踏み切らなければ、G20の存在意義は下降の一途をたどるだけだ。(経済本部 藤原章裕)

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