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【安倍政権考】「また大阪か…」低迷続いたなにわの街、G20で奮起 

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インテックス大阪にある報道陣向け「ライブキッチン」ではお好み焼きやたこ焼きなどが振る舞われた=6月27日、大阪市住之江区(鳥越瑞絵撮影)
インテックス大阪にある報道陣向け「ライブキッチン」ではお好み焼きやたこ焼きなどが振る舞われた=6月27日、大阪市住之江区(鳥越瑞絵撮影)
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 20カ国・地域(G20)首脳会議(サミット)が幕を閉じた。ホスト役を務めた大阪は、かつてバブル経済の崩壊とともに失速の一途をたどり、ひったくりなどの街頭犯罪が多発した街だった。今回のG20サミットでは、安倍晋三政権とも連携しながら各国首脳やメディアへの「おもてなし」を展開し、会議を成功に導いた。かつて「天下の台所」「東洋のマンチェスター」ともうたわれた都市は、再生に向け貴重な体験を積んだといえる。

「おもてなし」で包み込む

 「フー・イズ・ヒー(彼は何者だ)!」

 G20サミット初日の6月28日夜、メーン会場となった大阪湾の人工島、咲洲にある「インテックス大阪」(大阪市住之江区)のプレスルームで、モニターを眺めていた外国人記者が驚きの声を上げた。

 映し出されていたのは、プレスルームから約10キロ離れた大阪迎賓館(大阪市中央区)で首脳夕食会の前に行われた文化行事での光景だ。全盲の世界的ピアニスト、辻井伸行さんが奏でる「ラ・カンパネラ」(フランツ・リスト作曲)の幻想的な調べに、プレスルームでは国内外から集まった報道陣がくぎ付けになった。

 G20サミットでは、この行事以外でもさまざまな趣向が凝らされ、首脳らや報道陣をもてなした。会場にたこ焼きやお好み焼きなどの大阪名物が食べられるブースを設けたほか、日本の最先端機能のトイレをアピールするため、便器や洗面設備などは一新された。

 高速道路を通行止めにするため懸念された一般道の目立った渋滞もみられず、「スムーズにいくかどうか心配」(政府関係者)との声は杞憂(きゆう)に終わった。吉村洋文大阪府知事はツイッターで「大阪人はマナーが悪いとよく言われるが、真実は逆だ」と胸を張った。

 今回のG20サミットを大阪で開催した理由について、安倍晋三首相は直前に放送された読売テレビ番組で「おもてなしは大阪だ。ホテルの数もあるし、食べ物もおいしい。大阪の人情にも期待している」と語っていた。大阪のホスピタリティに首相も満足したとみられ、今月6日に参院選大阪選挙区(改選数4)の応援演説のために再訪した首相は「大阪はやっぱり、やればできる。素晴らしい!」とたたえた。

橋下、松井両氏が転機

 晴れの舞台を迎えた大阪だったが、以前はG20サミットのような国際会議を迎えられるような状況ではなかった。

 バブル経済の崩壊による不況が直撃し、それまで大阪府と大阪市が競い合うように建てた巨大な「ハコモノ」のほとんどが負の遺産となった。そもそも、インテックス大阪があるベイエリア自体が「湾岸新都心」として開発する計画が頓挫した上、2008年の夏季五輪誘致にも失敗した場所だ。

 転機となったのが、平成20年にタレント弁護士だった橋下徹氏が府知事に就任したことだ。大阪市を特別区に再編する大阪都構想などのテーマで、既成政党との激しい軋轢(あつれき)を招いたが、強烈な発信力と存在感は大阪の地盤沈下を食い止めることに一役買った。

 橋下氏は知事や大阪市長に在職中、24年に第2次政権を発足させた安倍首相や菅義偉官房長官と良好な関係も築いた。首相らも悲願とする憲法改正で橋下氏と気脈を通じ、折に触れて大阪の課題についても話し合ってきた。

 他の自治体に類を見ない政権との太いパイプは、橋下氏から日本維新の会代表を引き継いだ松井一郎大阪市長の時代になっても変わらない。特に、頻繁に食事をする菅氏と松井氏の関係性は、政府と地元の意思疎通が欠かせないG20サミットの運営でも寄与することになった。

次はIR、万博

 長く東京一極集中の風下に立ってきた大阪にとって、サミットは自信を取り戻す貴重な成功体験になったといえる。吉村氏も閉幕後「大阪に新たな自信が生まれた」と周囲に語った。

 だが、大阪には息つく間もなく、カジノを含む統合型リゾート施設(IR)誘致や「2025年大阪・関西万博」の開催が控える。

 特に、IR誘致は政府が先の通常国会でカジノの規制・監督を担う「カジノ管理委員会」の設置を断念したことから、スケジュールが遅れる懸念が高まっている。このままでは、IRを万博の前年に開業し、相乗効果を図るという吉村氏らのプランに狂いが生じかねない。行政のリーダーとして、手腕が試される場面が続く。

 G20サミットに続くビッグ・プロジェクトを成功させ、大阪がさらに飛躍できるか。かつて街がすさんでいた頃、事件がおこるたびに聞かれた「また大阪か」という言葉がポジティブな意味で使われる日は、そう遠くないかもしれない。

(政治部 永原慎吾)

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