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【経済インサイド】地方に都市部の高スキル人材 副業解禁の流れでマッチング

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IMPACT(インパクト)・ファウンデーション・ジャパンの新たなプロジェクト「キャリアモデル開発センター」の応募者による第1回ミーティング=4月19日、仙台市若林区(提供写真)
IMPACT(インパクト)・ファウンデーション・ジャパンの新たなプロジェクト「キャリアモデル開発センター」の応募者による第1回ミーティング=4月19日、仙台市若林区(提供写真)
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 都市部のさまざまなスキルを持った人材と、地方を副業でつなぐ取り組みが広がっている。東京など大都市の大手企業に就職し、知識や経験を得てもなかなか生まれ故郷に戻れない地方出身者が多い。大手企業を中心に広がる「副業」解禁の流れとも相まって、地域に優秀な人材を送り込む動きが広がれば、地域経済の浮揚につながる可能性を秘める。

 東北地方で起業支援を手がける「IMPACT(インパクト)・ファウンデーション・ジャパン」(仙台市若林区)は4月、東北各地で社会課題の解決にあたる社会起業家育成のための新たなプロジェクト「キャリアモデル開発センター」を始めた。

 首都圏など全国から起業を考えている人、または培ってきた経験や能力を生かした無報酬のボランティア活動を意味するプロボノを公募。あわせて東北各地の企業や民間団体からは、子育てや介護などを中心に解決に迫られている社会課題を提案してもらう。その両者をIMPACTがすりあわせる。

 具体的には、応募者がIMPACTのスタッフとともに、応募者自身の経験や能力を客観的に再評価。IMPACTが社会課題の解決のための複数の仕事を組み合わせ、東北での副業を提案する。

 IMPACTでは過去にも、東京の起業家に東北の魅力をアピールするセミナーやイベントを数多く実施してきたが、なかなか東北地方に来てもらえないという。都市部の人が、生まれ故郷に戻って仕事をしたいと思っても、子供がいる場合は転校なども必要となり、簡単に一家で移住という訳にはいかない。そこで、副業という形で故郷に貢献したいという人の思いに応えた格好だ。

■週末に立ち寄り助言も

 同じように、豊富な経験と優れた知識を持つ人材を地方に環流させようとしているベンチャー企業がgrooves(グルーブス、東京都港区)。同社の地域貢献副業マッチング(お見合い)サービス「スキルシフト」は、都市部で働く優秀な人材と、地方の中小・ベンチャー企業とを副業で結びつける。

 具体例としては、経営企画やマーケティングに精通した首都圏の大手企業に勤務する人が、副業で通勤途中や週末に地方の中小・ベンチャー企業に立ち寄り、販路開拓などで助言する、といったケースが挙げられる。

 平成29年12月に始まったこのサービス。すでに首都圏などのビジネスマン約1300人、地方の中小・ベンチャー企業約130社が登録している。鈴木秀逸スキルシフト事業部長は「特に地方では企画職の経験を持つ人材が少なく、企業の新規事業展開が難しい」と話す。

 副業によるわずかな時間とはいえ、専門知識を持つ人材の協力が得られる。地域活性化の切り札としてスキルシフトを活用したい、と自治体からの相談も相次いでいる。

 このほかにも、社会起業家育成支援などを手がけるETIC(エティック、東京都渋谷区)は、会社を辞めずに地方企業の課題解決に参画できるプロジェクト紹介サイト「YOSOMON(ヨソモン)!」を28年に開設した。シューマツワーカー(東京都渋谷区)など、副業支援サイトを運営する各社も力を入れている。

 副業による人材の地方環流を促進しようと、政府も動き出した。5月15日に開かれた未来投資会議(議長・安倍晋三首相)では、今夏にまとめる成長戦略の骨子が示され、副業や兼業、中途採用や経験者採用などを通じて多様な人材の活用を求める方針が打ち出された。

 これに先立ち、金融庁も昨年1月、金融機関の監督指針を改定し、銀行が取引先企業に対して行う人材紹介業務を付随業務として認めた。人手不足が深刻になるなかで、取引先の人材に関する課題解決を後押しするのが狙いで、横浜銀行や大垣共立銀行、常陽銀行などが参入している。

■本業への波及効果も

 一方、副業を解禁した企業からは、本業への波及効果を期待する声もある。

 28年に副業を解禁したロート製薬。主力製品の目薬は売上高の約3割で、残りの7割はスキンケア商品と食堂などの新規事業で占める。同社のホームページには「健康と美に関する、あらゆるソリューション(課題の解決策)を提供する会社」と紹介されている。副業で従業員に多様な経験を積ませて新たなスキルや知見を身につけ、それを新規事業への“種まき”に生かすことを狙っている。全国各地で食をテーマにした新規事業が次々と立ち上がっており、地方の企業との協業によるビジネスも広がっている。

 今後、リニア新幹線が整備されれば、平日は東京などの都市部、週末は生まれ故郷で、といった働き方も可能になる。副業解禁がきっかけとなり、都市部と地方の人材格差の縮小が進みそうだ。(経済本部 松村信仁)

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