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【朝鮮半島を読む】日韓慰安婦合意が違憲に? 憲法裁の構成が変化

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9人の判事が並ぶ韓国憲法裁判所の法廷(共同)
9人の判事が並ぶ韓国憲法裁判所の法廷(共同)

 2015年に締結された日韓慰安婦合意が、韓国で憲法違反になる可能性が出てきた。現在、韓国の憲法裁判所で慰安婦合意の違憲性をめぐる審理が継続中だが、最近、新たに任命された憲法裁判事2人が左派・革新系で、憲法裁の構成が慰安婦合意に否定的な流れに偏ってしまったためだ。

 文在寅(ムン・ジェイン)大統領は4月中旬、朴槿恵(パク・クネ)政権下で任命された2人の保守系判事の退任に伴い、2人の左派・革新系判事を任命した。憲法裁の判事は裁判所長を含む9人で構成されるが、今回、保守系の判事は4人から2人に減り、中道・革新系が7人となった。

 違憲判断は憲法裁判事6人以上の賛成で下せる。中道・革新系は慰安婦合意に否定的なスタンスに立つことが多いことから、関係者をやきもきさせる事態になっている。

 憲法裁判事のうち、大統領自らが指名できるのは3人で、ほか3人は国会が選出、残り3人は最高裁の裁判長が指名する。任期は6年で、再任は何度でも可能だ。

 今回、大統領に指名された憲法裁判事の1人は株式のインサイダー取引の疑惑を指摘されていることから野党側は反発。韓国の最大野党で保守系の自由韓国党、羅卿●(=王へんに援の旧字体のつくり)院内代表は4月20日、文政権に対する糾弾大会で「政権が憲法裁判事を思いのままにし、憲法裁判所ではなく『親文在寅裁判所』を作ろうとしている」と非難した。

 韓国の憲法裁は1960年に改正された憲法に、その設置が明示されていたが、61年の軍事クーデターで頓挫。翌62年に改正された憲法で憲法裁は憲法委員会に格下げされ、有名無実化していた。

 民主化運動の末、87年に改正された憲法により、ようやく翌88年設置された国民悲願の司法機関だ。憲法違反に関する判断や弾劾審判、政党解散の審判などを行っている。

 韓国の司法は、軍事独裁政権下で権力の道具と化し、民主主義や国民の基本的権利を守れなかったという負い目がある。一方、民主化闘争によって誕生した憲法裁に対する国民の信頼は厚い。憲法裁は三審制とは別に国民が直接訴願でき、公権力による権利の侵害から自分たちを守ってくれる司法機関とみているからだ。

 韓国の憲法裁が下した重要決定には、韓国政府が元慰安婦らの賠償請求権に関し、日本に協議を申し入れるなどの具体的な措置を取らなかったのは違憲との判断(11年8月)や韓国国会が可決した朴槿恵大統領(当時)の弾劾訴追を妥当とする判断(17年3月)などがある。

 韓国の司法はかつて国民を守れなかったという悔恨からか、法よりも韓国で「民心」と呼ばれる世論や国民情緒を重視し過ぎる傾向がある。「憲法の上に国民情緒法がある」と揶揄(やゆ)されている。

 日韓慰安婦合意の翌年に韓国で実施された世論調査では、約6割が「合意は破棄すべき」と答えている。左派・革新色を強めた憲法裁が日韓慰安婦合意に違憲との判断するか注目される。(外信部編集委員 水沼啓子)

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