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【ソウルから 倭人の眼】対日関係の特効薬は「約束守ること」 それを知っている韓国

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韓国・釜山の日本総領事館近くの公園前歩道に置かれていた徴用工像(今年3月、名村隆寛撮影)
韓国・釜山の日本総領事館近くの公園前歩道に置かれていた徴用工像(今年3月、名村隆寛撮影)

 平成から令和へと日本が新しい時代を迎えるなか、隣の韓国では相変わらず日本との関係をめぐる内部葛藤が続いている。元徴用工だと主張する者や遺族らによる集団追加訴訟の動きがある一方、釜山の日本総領事館前への「徴用工像」の設置については、いまさらながら是非論が起きている。日韓関係を未来志向的に改善したい韓国だが、自らがこだわる過去に縛られ、身動きでない状態にある。(ソウル 名村隆寛)

■宴の後の危機感

 韓国で今年は、日本の朝鮮半島統治下の1919年に起きた「三・一独立運動」と、中国上海での「大韓民国臨時政府」の設立から100年。「抗日」の2大記念日の式典を3、4月に終えた今、目の前にあるのは悪化の一途をたどる対日関係だ。その現実への危機意識が、韓国では以前にも増して高まっている。

 いわゆる元徴用工をめぐる訴訟で日本企業に賠償を命じた韓国最高裁の判決、日韓合意に基づく元慰安婦のための財団の一方的解散、海上自衛隊機へのレーダー照射、韓国国会議長による「天皇謝罪発言」。昨年10月からの半年間、韓国側が起こした出来事は日韓関係の悪化に拍車をかけた。

 韓国の非を認めようとしない政治家やメディア、活動家は「韓日関係悪化は安倍(晋三)のせいだ!」と責任を日本に丸投げしたままだ。そう叫ぶ以外、日本に反論ができない。最近、対日関係で韓国を“いい気分”にさせたのは、日本の水産物輸入禁止をめぐり世界貿易機関(WTO)の上級委員会が日本の逆転敗訴の判断を示したことぐらいだ。

 だが、韓国では、対日関係をこのままにしていてはまずいという危機感が出ている。背景にあるのは、低迷続きの経済と国際情勢だ。

■「好調な日本」の一方で

 韓国メディアは伝統的に、やたらと自国と日本を比べたがる。そのメディアが最近、ますます気にしているのが好調な日本の経済と活発な外交活動だ。韓国に駐在している筆者は日本の好況を皮膚では感じられないが、韓国人から見れば「うらやましいほど」(韓国紙)だという。

 また日本について、米国との良好な関係を維持していることに加え、中国との関係も改善しているとみており、韓国は外交的孤立を深めているそうだ。韓国自身がそう感じているから、その通りなのだろう。

 この「経済・外交で好調」な日本と「経済はダメ、外交で孤立」する韓国という対照的な姿、韓国だけが取り残されているといった自覚が、韓国の焦燥感を駆り立てているようだ。国の現状に警鐘を鳴らす者は「いつまでも日本との歴史問題にこだわっていては失うものの方が多い」と危機感を募らせている。

■条約違反は分かっている

 そのことを象徴するように、全く同じ主張の社説を、複数の韓国紙が同じ日に掲載した。

 全国民主労働組合総連盟(民主労総)が中心の市民団体が、釜山の日本総領事館前に何度も設置を試みた「徴用工像」の問題だ。昨年5月と今年3月の設置阻止に続き、釜山市は4月12日、総領事館近くの歩道に置かれていた像を撤去した。しかし、その後、呉巨敦(オ・ゴドン)市長が「市民や労働者の皆さんに心配をかけたことを謝罪する」と表明。結局、市民100人で構成する協議の場を設け、28日に像の設置場所を決め、5月1日までに設置することとなったが、協議は中止となった。

 「抗日闘争」などと叫ぶ市民団体(労組)の圧力に及び腰で、腫れ物に触るかのような釜山市の対応に、朝鮮日報(4月19日付)は社説で「法を執行する機関が“不法”を前に謝罪し膝を屈した。この世にこんな国があろうか」と批判。「国内法違反だけでなく、外国領事館近くの歩道に労働者像(徴用工像)を設置するのは、韓国も加入している外交関係に関するウィーン条約にも反している」と断じた。同紙社説は17日にも、韓国の条約違反を指摘している。

 また、中央日報(19日付)も「韓国が加入しているウィーン条約によると、外国公館の正面に少女像や労働者像を設置してはいけない」と問題視した。

 日本政府は、総領事館周辺への像設置が「ウィーン条約の規定に照らして問題である」(菅義偉官房長官)との立場で、両紙社説は日本政府の見解と同じだ。康京和(カン・ギョンファ)外相も昨年、海外メディアとの記者会見で韓国の条約違反を事実上認めた。

 徴用工像の設置を認めることが、「(外交)公館の安寧の妨害又は公館の威厳の侵害を防止するため適当なすべての措置を執る特別の責務を有する」とした同条約に反することを、韓国は分かっているのだ。

■何もできない文政権

 ウィーン条約違反を自覚しているのなら、2011年にソウルの日本大使館前に慰安婦像が不法に設置された時点から、韓国は問題視するべきだった。しかも、慰安婦問題をめぐる15年の日韓合意で韓国政府は「日本政府が公館の安寧・尊厳の維持の観点から懸念していることを認知し、適切に解決されるよう努力する」と約束した。なのに像は撤去されていない。しかも、合意1年後には釜山の日本総領事館前にも慰安婦像が置かれた。2つの慰安婦像は今、地元自治体の保護下にある。

 慰安婦像は放置しつつも、徴用工像の設置をかろうじて阻んだ背景には、「対日関係の傷口をこれ以上広げてはならない」という文在寅(ムン・ジェイン)政権なりの判断が働いたものとみられる。ただ、日韓関係を悪化させた慰安婦像の問題は今や、韓国側が起こした数々の懸案の一つに過ぎない。この8年間、特にこの半年で、韓国は日本との約束事がなかったように問題を蒸し返し、物事を複雑にし続けてきた。

 韓国の常識派は事態を深刻視しているが、解決法は簡単。韓国が国際条約や協定、日本との合意、約束を守ればいいだけの話だ。最初からそうしていれば、韓国は自縄自縛になって困ったり、国の将来を憂いたりすることも防げたはずだ。

 韓国が日本に対してまいた種は多く、最悪の日韓関係として実ってしまった。自らまいた種は自分で刈り取らねばならない。責任感のある国なら、そうするだろう。

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