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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】藤浪2軍の激痛…波紋は大きいぞ

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表情がくもる阪神・藤浪晋太郎 =ナゴヤドーム(撮影・水島啓輔)
表情がくもる阪神・藤浪晋太郎 =ナゴヤドーム(撮影・水島啓輔)

 激痛の藤浪開幕2軍…。阪神球団は傷ついた右腕の再生に総力を挙げなければなりません。阪神・藤浪晋太郎投手(24)は12日の中日戦(ナゴヤD)に先発、4回無安打1失点ながら4四死球の乱調。矢野監督と話し合った結果、2軍で無期限の再調整をすることが決まりました。4年前、エースの座が目前だった右腕がどうしてここまで“崩壊”したのか。全てを藤浪自身の問題とはせず、球団として原因を究明し、再生策を見いださないといけません。「阪神は藤浪さえ育てられなかった」というレッテルがさまざまな部分に大きな弊害を起こすからです。

自慢の投手陣引っ張る存在が…

 来週末の29日からシーズンは始まります。矢野阪神の初年度にはどんな戦いが待っているのか、期待感と不安感が入り交じります。他球団の戦力分析を行っていた球団関係者は「打撃力はセ・リーグ6球団の中で低い方かもしれない。でも、投手力はウチが一番いいと思う。投手中心の守りの野球を貫ければ、いい戦いができるのではないかと思っている」と話していました。

 確かにセ・リーグの中で打線の迫力、厚みでは少々、ひけを取るかもしれませんが、先発からリリーフなど投手陣のバリエーションは阪神が頭ひとつ抜けていると思います。春季キャンプ中に取材した他球団の監督も異口同音でしたね。

 「実はリーグで一番強いのは阪神だと思っている。あの投手陣はすごい」(広島・緒方監督)

 「阪神は西とガルシアを補強し、投手陣の厚みはすごい。勝負はロースコアの戦いとなる」(巨人・原監督)

 「阪神は投手がいい。そう簡単には打ち崩せない。だから、いかに阪神に点を与えないか…が鍵だと思っている」(ヤクルト・小川監督)

 DeNA・ラミレス監督と中日・与田監督も同じトーンの発言でした。

 しかし、厚みがある投手陣の中で本来ならば先発ローテーションの軸を担ってくれなければならないはずの右腕が、1軍から脱落してしまいましたね。もう痛恨どころか、これは私流に表現するなら激痛!!です。プロ7年目を迎えた藤浪が初めて開幕ローテから外れて無期限の2軍落ちとなったのです。

またも悪癖…どうして直らない

 開幕1軍=先発ローテーション入りを懸けた最後のチャンスだった12日の中日戦。相手の与田監督は1番から9番までスタメン9人全員、左打者を並べてきました。藤浪の投球が右打者の頭部付近にスッポ抜けることがあり、死球によるシーズンへの悪影響を考えた末のオーダーでした。それでも藤浪の制球は安定せず、4回無安打ながら4四死球の1失点。三回は亀沢の下半身に死球、2死一、三塁からマルテの失策で失点すると大島への初球は大暴投。球場内がざわつきました。

 試合後、藤浪は矢野監督と話し合った末に2軍落ちが決まりました。指揮官は「自分と戦っている。相手と勝負できていない感じ。一度、2軍に行かせようかなと…。今はちょっと結果ばかり出さなアカンみたいな。(それよりも)『こうやってやっていくんだ』というものをつかんだ上で。開幕に間に合わなかったとしても、何かをつかんで帰ってきた方が晋太郎のためやし、チームのためだと思う」と語っていました。

 「一から作り直すとかそういうことじゃないですけど、いいものを多く出していけるように練習を毎日毎日、一生懸命やっていきたいと思います」と藤浪もコメントしていましたね。

 春季キャンプ以降、紅白戦や練習試合、オープン戦3試合の全てで結果が出なかったわけですが、その内容もほとんど同じ。制球難に苦しみ、直球をストライクゾーンに“置き”にいって痛打を浴びるパターンです。

 春季キャンプのブルペンでもやや右腕を下げたスリークオーターでの投球はタイミングさえ合えばすごい直球が捕手のミットをたたきますが、投球の約3割は右打者の頭部付近にスッポ抜けたり、左打者の足下にひっかかったり。リリースポイントがバラバラで自分自身で球筋が描けない状態でしたね。今季は過去3年に比べれば積極的に投球練習を行っていましたが内容的には???でした。

 「藤浪はまさにちぎっては投げ…ちぎっては投げ…だったが、自分自身の不安感を打ち消すためにとにかくガムシャラに投げている感じ。ブルペンでの投球フォームも日替わりで変わっていたし、悩みの深いことが周囲に伝わっていた」とは阪神OBの言葉ですね。

豹変(ひょうへん)の要因は諸説さまざまだが…

 藤浪はどうしてここまで“崩壊”してしまったのでしょうか?

 大阪桐蔭のエースとして2012年、春夏連覇の偉業を達成し、その年のドラフト会議では4球団が競合した結果、当時の和田豊監督が左手で交渉権確定のクジを引き当てました。ルーキーイヤーの13年から3年連続の2ケタ勝利。15年には14勝(7敗)をマークし、阪神のエースの座が目の前にあったはずです。ところが、金本前監督が就任した16年から歯車が狂い始めました。そのシーズンから7勝11敗、3勝5敗、5勝3敗。それまでの3シーズンで35勝21敗だった右腕がまさに豹変してしまったのです。

 さまざまな原因が指摘されています。金本前監督の初年度、7月8日の広島戦(甲子園球場)では立ち上がりに四死球を絡めて失点。そのまま崩れる投球を続けていた藤浪に対して金本前監督は161球を投げさせる“懲罰続投”。この辺りからプライドが崩れてしまった…という説。

 脱力投法にかじを切ったのもこの時期ですが、投球フォームを改良するはずが、リリースポイントを見失う“イップス”になった…という説。それが原因で右打者の頭部にスッポ抜けるか、それを怖がって左打者のひざ元部分にひっかかる…悪循環に陥った、とも言われています。

 原因はどうであれ、今の藤浪からは12年に春夏連覇を果たした姿も、新人から3年連続で2ケタ勝利を飾った姿もまるで想像できません。そして、こうした急激な悪化は阪神球団に在籍している中で起きたことですね。一番の問題はここにあります。

 ■再生失敗だと球団に疑問符つきかねない

 藤浪のキャリアは藤浪自身が作るものです。ここで再起できないのであれば、藤浪が球界からいずれ去るだけの話です。しかし、あれだけ大器と騒がれ、実際にプロ3年間は2ケタ勝った投手がここまでどん底に落ちるとなると、チームとしての指導力や育成能力、もっと広範囲で見ればチームの環境面に疑いの目を向けられても反論できない状況になります。

 「阪神はあの藤浪さえ育てられなかった」という印象はプロ野球界だけではなく、アマ球界関係者にも強く持たれます。実際、昨年のドラフト会議直前も大阪桐蔭関係者から藤原、根尾らの進路について「阪神に指名されると藤浪のようにならないか?」という声が漏れていました。

 また、藤浪が2ケタ勝利を続けていたときによく耳にしたのは「藤浪はコーチのアドバイスを聞かない。チームの中で浮いている」という噂でしたね。スター選手を腫れ物のように扱い、結果として孤立を招く阪神の伝統的?な体質を見る思いでしたが、そうした環境面が低迷を招いたとすれば阪神球団は選手の管理方法を見直すべきでしょう。他球団では、実績を築いた選手がコーチの言うことを聞かなくなる…なんて話はあまり耳にしたことがありません。

 藤浪が1軍の先発ローテーに入れば普通に2ケタ勝利を計算できます。開幕2軍はそれを見事に抹消してしまいました。そして、スカウト活動や球団の選手管理そのものに対するマイナスイメージ…など各方面への悪影響ははかり知れません。

 阪神球団は総力を挙げて藤浪の再生に取り組まなければなりません。なにが原因で、何が本当の処方箋なのか。2軍落ちの末に今後も本人任せの再生プランならば、阪神球団が負う傷はさらに深く、取り返しがつかないものになるでしょう。

   

     

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日、午後10時から「NEWS TONIGHT いいおとな」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/iiotona/caster.html)の『今日のトラコーナー』や土曜日午後6時45分からの「まさと・越後屋のスポーツ捕物帳」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/)に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」(http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html)ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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