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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】競争から固定へ…迫る仕分けの時

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楽天との練習試合で適時打を放つ阪神の北條=宜野座(山田喜貴撮影)
楽天との練習試合で適時打を放つ阪神の北條=宜野座(山田喜貴撮影)

 鳥谷か北條、糸原か上本、木浪のさあどっちだ!? 阪神・矢野燿大(あきひろ)新監督(50)の選手仕分けの準備が始まります。沖縄春季キャンプは今週の19日から第5クールに突入し、残すは2クールになりました。新監督は総勢43人の1軍キャンプで激しいポジション争いをあおってきましたが、難題はこれからです。競争の結果、つまり選手の取捨選択を監督が決めなければなりません。金本前監督の1年目は競争をあおったものの、開幕後もポジションを固定できず、最後まで戦う形が見えませんでした。レギュラー決定の時期と明確な理由-。これが新監督に課せられた重要な仕事です。

 ■気温とともに定位置争いも

 沖縄の「かりゆしホテルズボールパーク宜野座」で行われている阪神1軍の春季キャンプ。矢野新監督の初めてのキャンプとして大いに注目を集めています。新外国人のマルテやジョンソン、新人の近本や木浪らが躍動する姿を見て、「今年こそ優勝や」なんて手応えを感じているファンの方が多くいるのではないでしょうか。

 沖縄は2月中旬以降、グッと気温が上昇してきます。今年も同じように中旬を迎えて日中の暖かさが増してきました。それと同時に阪神の1軍枠争いやポジション争いの熱もヒートアップする一方ですね。今年の1軍キャンプには投手22選手、捕手4選手、内野手9選手、外野手8選手の総勢43選手が選ばれていますね。1軍枠は昨季までより1人増えたとはいえ29選手、ベンチ入り25選手ですが、まず1軍枠に誰が残るのか。そして投手を除く8つのポジションのレギュラーは誰なのか? そろそろ気になり始める頃です。

 「常に競争というのを頭に置きながら、どうやったら(競争が)激しくなるかなっていうのを考えながら(1軍)メンバーを選考したつもり」

 これが矢野監督のキャンプ直前のコメントでしたね。総勢43選手という大所帯も競争の激化を想定してのものでした。新監督の思惑通り、福留と糸井の両ベテランを除く選手たちは切磋琢磨(せっさたくま)してきたと思いますね。

 ■鳥谷vs北條、糸原vs上本、木浪

 特に内野陣では遊撃と二塁が激しい競争を続けています。自ら「ショートで勝負させてください」と矢野監督に直訴した鳥谷が体をシェイプアップしてキャンプに臨みました。練習メニューも若手と同じで、意気込みのすごさを感じますね。

 しかし、昨季に遊撃のポジションを奪いかけた北條も黙ってはいませんね。14日に行われた楽天との練習試合(宜野座)では3番・遊撃で出場すると、三回1死一、二塁から右前に先制打を放ちました。

 「カウント3-2でランナーが走る状況だったので、一番ダメなのは三振かフライだなと。いい形のライト前を納得する形で打てたと思います。まだムダな打席が多い。しっかり自分のことをやって、相手(鳥谷や木浪)よりも上にいけるようにとは思っています」

 結果を出した直後、北條はギラギラしたライバル意識を隠そうともせずに前を向いていました。

 競争の激しいポジションはお隣の二塁も同様ですね。昨季は糸原が143試合に出場し、打率2割8分6厘、本塁打1本で打点35、得点79をマークしました。今季から福留に代わりキャプテンにも就任しました。レギュラー争いの1番手であることは間違いありませんね。しかし、新人のドラフト3位・木浪聖也内野手(24)=ホンダ=が楽天戦(14日)でも途中出場ながら、4-1で迎えた七回2死三塁で右前タイムリー。本職は遊撃ですが、二塁のポジションにも虎視眈々(たんたん)です。

 さらに昨季は5月5日の中日戦(甲子園球場)で左膝を負傷。後の診断で左膝の前十字靱帯(じんたい)を損傷していたことが判明、6月に再建手術を受けた上本博紀内野手(32)も元気な姿で練習に取り組んでいます。実績はあるだけに体さえ元気なら十分にレギュラーを狙える存在ですね。

 外野陣でも右翼・福留と左翼・糸井は決定的ですが、中堅は第1候補のドラフト1位・近本に対して高山、中谷、江越が争っています。

 ■あおるだけでは…求められる決断

 「競争」を選手に求めてきた矢野新監督の狙いはここまでズバリと的中しているわけです。ただし、激しい競争の結果をいつかは出さないといけません。しかも、争っている遊撃でも二塁でも中堅でも、または捕手でも、争っている選手たちがある程度は納得し、周囲もうなずく結論の出し方が矢野新監督には求められます。新監督にとってはここが今後の一番のキモです。さらに言うなら、取捨選択した理由がある程度は理解されると同時にその取捨選択する時期も重要になります。

 「競争をあおったのは金本前監督も同じだった。特に監督1年目は超変革というスローガン通りに若手を競い合わせて、全てのポジションを白紙化した。それはそれでいいけど、結果としてポジションはシーズンに入っても決まらず、本番の公式戦でもアレコレと選手を試すように起用していたろう。あれでチームとしての戦う形が生まれてこず、チーム力が上がってこなかった。ある時期にはレギュラーを固定化して、明確に戦う形を整えないといけない」

 これは阪神OBの言葉です。矢野新監督に今後、問われるのは金本前監督のテツを踏まない決断とその時期となるのです。

 遊撃は鳥谷か北條か、二塁は糸原か上本か、二遊間で言うなら木浪もあり得るでしょう。3月29日、開幕戦のヤクルト戦(京セラD大阪)でレギュラーポジションにいるのは誰なのか。決めるのは競争をあおった新監督自身なのです。

 そして、周囲の誰もがある程度は納得する決め方となれば、これは練習試合やオープン戦での結果しかないでしょうね。例えば鳥谷は守備力はどうなのか? 北條との打撃力の比較は? 上本は糸原と総合力ではどっちが上なのか? 木浪もどうか? 中堅で見るなら近本と高山、中谷、さらには江越や俊介とどっちが上か? 矢野監督のジャッジを下支えし、周囲が納得するのは実戦での結果しかないでしょう。

 さらに言うなら、一度下したジャッジにこだわるべきです。少々、打撃の調子が落ちたからといって、他の選手を取っ替え引っ替えするなら、金本前監督が通った道です。3月中旬には矢野阪神の1年目としての戦う陣形を示すべきでしょう。その仕分け作業の準備がキャンプ後半を迎える今の時期から始まります。

 事業仕分けならぬ、選手仕分け-。矢野監督のやりたい野球の全貌が明らかになるのはその仕分け作業の結果に他なりません。新監督としての最初の大仕事がそろそろ始まろうとしている…これが第5クールを迎える矢野阪神の核心ですね。 

     ◇

 【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日、午後10時から「NEWS TONIGHT いいおとな」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/iiotona/caster.html)の『今日のトラコーナー』や土曜日午後6時45分からの「まさと・越後屋のスポーツ捕物帖」(http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/)に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」( http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html )ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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