PR

【ビジネス解読】韓国、大気汚染で脱原発政策やり玉 なお頑なな文在寅大統領

PR

韓国ソウルの大統領府で、年頭の記者会見を開いた文在寅大統領=1月10日(AP)
韓国ソウルの大統領府で、年頭の記者会見を開いた文在寅大統領=1月10日(AP)
その他の写真を見る(1/3枚)

 韓国で文在寅(ムン・ジェイン)大統領の脱原発政策がやり玉に挙げられている。きっかけは深刻な大気汚染。「原子力発電所より先に石炭火力発電所を縮小しないからだ」と与党の重鎮国会議員が発言したのが始まりで、待っていたかのように野党や原発業界が加わり、文大統領に、いい加減に目を覚ませと迫っている。脱原発が大気汚染の“主犯”なのかは不明だが、民意も無視した政策に再び厳しい目が向けられている。

 ■北京よりも汚染民

 「ソウルの方が北京より空気が良くない」。1月中旬、ソウル中心部の「光化門広場」を訪れた中国人観光客はこう述べ、残念がったと韓国紙ハンギョレ(日本語電子版)が伝えた。超小粒子状物質「PM2・5」で広場一帯はかすみ、マスクも必携。旅行気分はどこかに吹き飛んでしまったようだ。

 韓国は年明けからPM2・5による大気汚染がひどく、自動車の運転などを制限する非常低減措置が数日実施された。韓国通信社の聯合ニュース(同)によれば、文大統領は側近に「眠れない」と話すほど解決方法に悩んでいるという。

 こうした中、与党「共に民主党」の宋永吉(ソン・ヨンギル)議員が原子力業界主催の新年会で、政府の脱原発政策が大気汚染の悪化を招くと主張。PM2・5と地球温暖化問題が非常に深刻で、二酸化炭素(CO2)排出量が多い老朽化した石炭火力を早急に転換しなければならない、と指摘した。SNS(会員制交流サイト)上でも「まず削減すべきはCO2とPM2・5排出とは関係ない原子力ではない」と発信した。

 聯合ニュースによると、青瓦台(チョンワデ、大統領府)は報道官が記者会見で脱原発政策とPM2・5の濃度上昇に関連はないとの立場を示して火消しに走ったが、事態が収まる気配はみられない。文政権の脱原発政策は、既存原発を寿命まで使い、新規原発は建設しないというのが柱だが、押さえ込んだはずの新規原発の賛否をめぐる議論が再燃。韓国紙の中央日報(日本語電子版)は、野党「自由韓国党」が工事を中止した(新規の)新ハンウル原発3、4号機について国民の意見集約を要求すると伝えた。

 さらに、脱原発の是非を問う国民投票の実施を求める声まで聞こえ始めた。同じく野党の「正しい未来党」の金寛永(キム・グァンヨン)院内代表は「脱原発について国会とともに社会的議論を始めるべきだ」とし、「世論調査レベルでなく、国民投票を通じて国民の意見を確実に聞いて最終決定しなければならない」と話した。

 中央日報は、世界最高権威の学術誌「サイエンス」が「温暖化を防ぐには原発が必要だ」という社説を掲載したことを紹介した。社説では「再生可能エネルギーは発電量が不安定であるため、安定的で炭素排出が少ない発電源とともに使用する必要がある。原発がその代案だ」と主張。また「原発ではなく太陽光、風力だけで温暖化を防ごうとすれば電気料金は2、3倍に上がるだろう」と予想する。その上で、「韓国やスイスのように脱原発を進める国は(原発を活用する)強力な措置が必要」とした。

 同紙はこの社説について経済性と安全性、温暖化防止効果などを科学的に考慮して出した結論だと主張。東京電力福島第1原発事故を経験した日本も一時は「原発ゼロ」を宣言したものの再稼働していることも取り上げた。これに対し、文政権は理念にとらわれたように脱原発を一方的に推進中だと厳しく非難した。ちなみに国民の68%は「原発の比率拡大または維持」を希望しているという。

 ■33万人が署名

 脱原発政策反対と新ハンウル3、4号機の建設再開に向けて国民に署名を呼び掛けている運動本部は1月下旬、33万人が署名した請願書を青瓦台に提出した。「国民誓願掲示板」の青瓦台の答弁基準である20万人を大きく上回る数だ。署名者は今も増え続けている。

 韓国内で脱原発政策の修正を要求する動きは活発化しているが、文政権に耳を傾けようという態度は見られない。文大統領は財界人との懇談会で「エネルギー政策転換の流れは中断されないだろう」といい、かたくなな姿勢を崩さない。1月中旬には原発解体研究所を設立し、解体産業を育成していくことを明かした。新規原発の建設中止に続く具体策を明示した格好で、脱原発政策に対する修正要求に徹底的に対抗していく構えだ。

 ハンギョレによれば、文政権が打ち出した既存原発を設計寿命まで使用する政策だと、韓国が「原発ゼロ」になるのは2082年だ。ドイツは22年、台湾が25年、スイスが29年に設定したことに比べ、「亀の歩みの脱原発」といわれる。当然、文氏の大統領任期中に実現するわけもなく、日本の専門家は「本気度を疑う」と指摘する。

 振り返ってみると、酷暑となった昨夏は電力不足が懸念されるとして、まさかの原発の追加稼働に踏み切った。節操のなさに多くの韓国民が首をかしげたのは記憶に新しい。インターネット上では「(韓国の)反原発は宗教的だ」「(原子力)発電技術の衰退」といったコメントが散見される。(経済本部 佐藤克史)

この記事を共有する

おすすめ情報