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【ビジネス解読】「牛角」創業者が“お一人さま”向け格安焼肉店 全国展開は成功するのか 

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幸楽苑ホールディングスとの提携発表会で、幸楽苑ホールディングスの新井田昇社長(左)と握手する西山知義氏
幸楽苑ホールディングスとの提携発表会で、幸楽苑ホールディングスの新井田昇社長(左)と握手する西山知義氏

 炭火焼肉チェーン店「牛角」の創業者、西山知義氏が、都心で展開する1人客向けファストフード焼肉店「焼肉ライク」の全国展開に乗り出す。中華そばチェーン「幸楽苑」を運営するなど郊外店の運営に定評がある幸楽苑ホールディングスと提携するなど、郊外を含め全国で300店舗を目指す。家族や仲間が網を囲んで食べ飲みする焼肉文化においても、“お一人さま”ビジネスは成り立つのか。

 ■回転寿司がモデル?

 「都心では1万円、2万円、5000円、1000円台のお寿司屋さんがある。しかし、焼肉店では1000円台はほとんどない」

 昨年12月26日、東京都内で開かれた焼肉ライクの発表会。西山氏はこう述べた後、「1000円台」の回転寿司について、滞留時間が短く高い回転率を実現し、低価格、高い原価率でも収益が出るビジネスモデルに触れた。

 寿司業界では、ファストフード業態の回転寿司が成長したことで、業界の半数超を回転寿司が占めているという。西山氏は、焼肉業界もファストフードの出現により拡大する伸びしろがあるとみているのだ。

 西山氏が注目したのは、外食先として人気がある焼肉店が、「1人で行きにくい業態ランキング」でフランス料理店に続く2位だったことだ。そこで、「1人でも気軽に行ける焼肉屋さん。おいしい、安い、価値が高い」(西山氏)をコンセプトに、1000円台で食べられる焼肉店を目指す。

 焼肉ライクでは、(1)1人1台の専用ロースターを設置(2)リーズナブルな価格設定(3)お好みの部位、タレ、量を選ぶことができるシステム-を採用。客の注文をタブレット端末で受け付けたり、店内で肉のカットをしないなど、高い回転率による収益の確保と、熟練の調理人を不要とする店舗運営を行う。

 事実、肉市場は有望だ。近年、肉の健康面への印象が変わっているからだ。赤身肉に含まれる脂肪を燃焼する成分「L-カルニチン」の存在など、肉ダイエットに関する記事がさまざまなメディアで取り上げられている。西山氏は「肉はヘルシーという認識が広がっている」と話す。

 リクルートライフスタイルが1月7日に発表した首都・関西・東海の各圏における外食市場調査では、焼肉・ステーキ・ハンバーグなどの専業店の昨年11月の市場規模は前年同月比12・9%増の約341億円だった。三大都市圏の年間市場規模は4100億円程度とみられ、拡大傾向にある。1人で焼肉を楽しむ“ソロ焼肉”というワードは、日経トレンディによる2019年のヒット予測にも取り上げられた。

 西山氏はこれからの外食業界を取り巻く環境のキーワードとして、「個食」「健康」「簡便」を挙げる。背景には、人口減少と少子化、女性の社会進出による共働き世帯の増加、若者世代のスマートフォンの“ながら”食文化などがある。

 もともと、お一人さまは、独身の女性が高級レストランで食事をしたり、温泉旅館に泊まったりする、「自分へのご褒美」にスポットライトが当たった。その後、一人で食べる個食への対応に注目が集まっている。

 ■郊外で受け入れられるか

 食品業界では、個食市場に注目した動きが活発だ。1人用鍋調味料、1人用お節、電子レンジで温めて食べる1人前商品などだ。12年ごろから広く言われるようになった、クリスマスを1人で過ごす「クリぼっち」対応でも、コンビニエンスストア各社が昨年、相次いでお一人さま向けのケーキを発売し、好調だった。

 ただ、既存の焼肉ライクの店舗の業績が順調なのは、都心の駅近くにあり、帰宅帰りの会社員らの「ちょっと贅沢(ぜいたく)したい」というニーズを満たしているからだ。果たして家族層が多い郊外に進出した場合にも当てはまるのだろうか。

 西山氏は、郊外における焼肉店の単価は食べ放題で2800円前後が相場で、1000円台で食べられる焼肉店のニーズは高いとみる。一方で、「焼肉ライクの良さは滞留時間が短いことだ」とも指摘しており、店のレイアウトやメニューなどを工夫し、ファストフード店の良さを生かしつつ、家族層を取り込みたい考えだ。

 西山氏は「人件費が上がっても(経営が)耐えうるようにしなければならない。そのために、付加価値を高めてお客さまに喜んでもらわなければならない」と話す。

 焼肉ライクは、焼肉文化の常識を覆す“革命”となるか。(経済本部 鈴木正行)

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