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【ビジネス解読】サウジが米国にラブコール 原油価格引き上げ狙い トランプ氏の本音は

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ウィーンで開かれた石油輸出国機構(OPEC)の会合に出席するサウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相(中央)=2019年12月5日(AP)
ウィーンで開かれた石油輸出国機構(OPEC)の会合に出席するサウジアラビアのアブドルアジズ・エネルギー相(中央)=2019年12月5日(AP)

 石油輸出国機構(OPEC)の盟主であるサウジアラビアが、世界一の産油国となった米国に秋波を送っている。サウジはロシアなどと歩調を合わせた原油生産量の削減で原油価格の引き上げを狙うが、この10年で生産量を倍増させた米国の動向を無視できないためだ。これに対するトランプ米大統領はガソリン価格の値上がりを警戒し、原油価格は安くあるべきだというのが持論。ただ、トランプ氏はこのところ、減産に動くサウジへの目立った批判を避けており、本音ではサウジ同様に原油高を望んでいるとの見方もある。

 「オクラホマやテキサスにはたくさんの良い友人がいますよ」

 サウジのアブドルアジズ・エネルギー相は2019年12月6日にウィーンで開かれた記者会見で、米国の産油地域の名前を挙げて協調へのラブコールを送った。

 記者会見ではOPECとロシアなど10の非加盟産油国による協議「OPECプラス」が減産幅の拡大で合意したことが公表された。1バレル=50ドル台で推移していた原油価格の引き上げが狙いだ。

 しかし、18年にロシアとサウジを抜いて世界一の産油国となった米国はOPECプラスに参加していない。シェールブームに沸いてきた米国の同年の生産量は日量1099万バレルで、08年の500万バレルから倍増。原油価格の上昇にブレーキをかける要因となってきた。

 実際、ニューヨーク原油先物市場の指標銘柄は記者会見があった6日に1バレル=59.20ドルと約2カ月半ぶりの高値を付けたものの、その後は60ドルの壁を越えられない状況が続いた。13日に米中の貿易協議が「第1段階」の合意に達すると、世界経済の不透明感が弱まったとして60ドルを超えたが、市場関係者の間では「OPECプラスの減産幅拡大は値動きに大きな影響を与えなかった」ともみられている。

持論は原油価格引き下げ

 一方、サウジとは対照的に、トランプ氏はこれまで「原油価格は安くあるべきだ」との持論を繰り返してきた。19年4月26日には記者団に対して、「ガソリン価格を下げなければならないとOPECに言ってやった」と発言。18年7月にはツイッターへの投稿で「市場を独占するOPEC」が価格を引き上げていると主張し、「今すぐ価格を下げろ!」と圧力をかけた。

 自動車社会の米国の消費者はガソリン価格の動向に敏感で、1ガロン=3ドルを超えると「ガソリン高」が意識されるという。ガソリン価格は19年5月初めに1ガロン=2.89ドルをつけており、トランプ氏がOPECを牽制(けんせい)した時期と重なっている。

 原油価格の上昇で国家財政を下支えしたいOPECやロシアなどと、来年の大統領選での再選を見据えて有権者の負担感に神経をとがらせるトランプ氏との間で、原油価格をめぐる思惑がぶつかり合う形だ。

 ただし、トランプ氏は今回のOPECプラスの合意をめぐっては目立った批判をしていない。背景にあるとされるのが米国の原油生産者の状況だ。低い原油価格が不都合なのは、OPECプラスも米国の生産者も同じ。米国内の原油採掘装置(リグ)の稼働数は19年12月13日時点で667基となり、1年前から約24%も減少している。

 このためOPECプラスによる減産幅の拡大は「米国のシェールオイル生産者に救いの手が差しのベられた」(米メディア)とも報じられた。19年12月中旬までの米国内のガソリン価格は1ガロン=2.5ドル程度で推移しており、消費者感情の面からみても原油価格の値上がりを容認する余地はある。

OPECの「地盤沈下」

 しかし、米国とサウジの足並みが完全にそろうわけではない。今後、ガソリン価格が上昇することがあれば、トランプ氏がOPECを批判する可能性は高い。さらに米国の生産者とOPECが協調することは米国の独占禁止法上、問題視されることが確実で、サウジのアブドルアジズ氏自身、「法的な制約があることは分かっている」と認める。

 それでもサウジが米国との協調に視線を注ぐのは、OPECの「地盤沈下」が指摘されているからだ。OPECは石油危機があった1970年代前半には世界の原油生産の6割近いシェアを占めていたが、近年のシェアは40%台前半。OPECプラスの枠組みでみればシェアは60%を超えるとはいえ、今度はサウジとロシアの主導権争いが取り沙汰される。サウジから米国へのラブコールにはロシアを牽制する意味合いもありそうだ。(経済本部 小雲規生)

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