PR

【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】FA西獲得も、残る不安要素とは

PR

阪神との入団交渉に臨む西勇輝投手(右)。左は矢野燿大監督、中央は谷本修球団本部長=7日午後、大阪市内のホテル
阪神との入団交渉に臨む西勇輝投手(右)。左は矢野燿大監督、中央は谷本修球団本部長=7日午後、大阪市内のホテル

 西獲得でも虎投には気になる“死角”があります。阪神はオリックスからフリーエージェント(FA)宣言した西勇輝投手(28)の獲得に成功しました。プロ10年で74勝65敗、2ケタ勝利が通算5回の右腕を得たことは矢野燿大監督(50)にとっても心強い限りですね。それでも投手陣に対して「本当に心配」という球団内外の声は消えません。なぜか? 新たな首脳陣の中で1軍での投手継投策を実践したことがあるのは新監督だけ。清水ヘッド、福原投手コーチ、藤井バッテリーコーチは継投策については初体験なのです。全てが「矢野頼み」で果たして大丈夫でしょうか?

勝ち戦での出馬

 念願の右腕を獲得できましたね。オリックスからFA宣言した西投手を残留を求めるオリックス、獲得に動いたソフトバンク、DeNAと争った末に阪神は競り落としました。「自分をどれだけ必要としてくれるか、その熱意を共有したい」と話していた西のハートを射止めたのは矢野阪神だったのです。

 このコラム(11月11日アップ)でも書きましたね。阪神の勝利宣言は矢野新監督の出馬になる-と。金本前監督を事実上、解任してまで就任させた新監督にいきなり“負け戦”はさせられない球団とすれば、矢野出馬は“勝ち戦”の時だけです。それが実現したことはすなわち、勝利宣言なのです。

 「西はFA宣言前の事前調査で好感触だった。いけると踏んだから手を挙げた。最後はソフトバンクとの勝負だったが、今年のソフトはそこまでの熱意というか、意欲が見えなかったことも幸いしたね」とは球団関係者の言葉です。

 今季はリーグ2位ながら、日本シリーズでは広島を破って日本一に輝いたソフトバンクはオフの補強策で浅村(西武FA→楽天)に続き、西でも阪神に敗れて連敗。舞台裏にあるのは3軍制を敷き、若手の有望株がゴロゴロいる余裕だったのかもしれません。何が何でも欲しい…と思う切羽詰まった球団と、入ればプラスアルファと考える球団のスタンスの差が交渉相手には「そんなに自分のことを必要と考えているのか?」と思わせた要素かもしれませんね。あくまで想像ですが…。

 西はプロ10シーズンで74勝65敗。今季は25試合に登板して10勝13敗、防御率3・60です。投球回は162回1/3ですね。計5シーズンで2ケタ勝利をマークしていて、投げた試合は大崩れしないのが特長です。内外角に投げ分ける微妙な制球力があって、力勝負のパ・リーグよりも、繊細な攻防の多いセ・リーグ向きの投手という評価もあります。

気になる発言…心配な投手陣

 「西の加入は大きい。今年の阪神の先発投手陣で2ケタ勝利はメッセンジャー(11勝7敗)だけで、そのメッセも来季は38歳。後の先発投手陣の名前を見ても、かなり厳しい状況だった。西が入れば、いきなり開幕投手の有力候補で先発ローテの軸にもなり得る」

 阪神球団の内部からは歓喜の声すら聞こえてきます。しかし、そうした歓喜の声のすぐ横で気になる発言も聞こえてくるのです。

 「来季の投手陣は本当に心配だ」

 どうして心配なのか。それは先発投手陣の顔ぶれでもなく、リリーフ陣の不安要素でもないのです。投手の力を最大限に生かす継投策についての不安視だったのです。

 「金本体制から矢野体制に移り、コーチ陣は1軍と2軍をシャッフルした。新たに加わったコーチは清水ヘッドだけ。新たに1軍ベンチで投手継投に関わるコーチの名前を見てごらん。清水ヘッドは外野守備や走塁面専門のキャリアで、福原投手コーチや藤井バッテリーコーチは1軍でのコーチ経験が初めて。つまり1軍での投手継投の経験がない。経験があるのは矢野監督だけだ。新監督に代打起用から、作戦面や投手継投のすべてを任せることになりかねないんだ。それで本当に大丈夫なのか」

未経験者ばかりのコーチ陣

 阪神OBの言葉です。球団内には「矢野監督は作戦コーチも歴任していて、投手継投も大丈夫」という声はあります。しかし、新監督としてベンチで采配を振るうプレッシャーも重く、なにより試合の行方を左右する投手継投策については常に独断専横というわけにもいかないでしょう。リリーフ陣をどういうタイミングで準備させるか、誰をチョイスするか…は投手コーチの重要な任務でもあります。監督に的確な助言をしなければなりませんね。ところが、未経験者ばかりのコーチ陣は新監督にとっては頼りになるどころか、大きな重荷になる心配もあるのです。

 来季の先発陣の顔ぶれは西にメッセンジャー、藤浪、小野、岩貞、秋山に才木、岩崎らすぐに8人ぐらいの名前が浮かびます。他球団と比べても質量ともに勝っているイメージはありますね。リリーフ陣も藤川球児、能見、桑原、望月にドリス(再契約できれば)に新外国人のジョンソンと駒は豊富です。

 ただ、先発投手はいつも完投というわけにはいかず、逆に継投策に出る試合の方が圧倒的に多いでしょう。タイプの違うリリーフ陣をどんな形で送り出すか。タイミングと人選を間違えば、豊富なリリーフ陣も宝の持ち腐れになりかねません。特にセ・リーグは投手が打席に立つため、より継投策は繊細さを求められます。それを全て矢野新監督に委ねるのはあまりにも負担が大きく、危険でもあります。

 「本当なら経験豊富なヘッドコーチか投手コーチがそばについて、相談しながら継投策を進めるのがベストだったろう。それが金本前監督の突然の解任と、今季のコーチ陣に来季の契約の内示をしていたために、新たな投手コーチを呼べなかったんだろう。結果として清水ヘッドコーチは阪神を取り巻く環境を知らない人だし、投手部門や打者部門も超軽量になったんだろう。矢野新監督の負担はあまりにも大きいし、厳しいと言わざるを得ない」

 阪神OBは顔をしかめていました。

 待望のFA補強成功にケチをつける気持ちなどさらさらありません。むしろ、西の獲得は阪神球団の功績…と拍手を送ります。ただ、ひとりの先発投手を獲得できたからと言って、投手陣が万全になると思うなら、それは妄想の類いです。西の加入を本当のプラス材料にするためには、どうすればいいのか。ベンチワークを含めて検討してほしいと願いますね。

    

 【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日、午後10時から「NEWS TONIGHT いいおとな」( http://www.obc1314.co.jp/bangumi/iiotona/caster.html )の『今日のトラコーナー』や土曜日午後6時45分からの「まさとと越後屋のスポーツ捕物帖」( http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/ )に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」( http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html )ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

この記事を共有する

おすすめ情報