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【「鬼筆」越後屋のトラ漫遊記】阪神再生のキーマン高山は覚醒するか

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打撃練習する阪神・高山俊。来季は覚醒するか=安芸市営球場(撮影・水島啓輔)
打撃練習する阪神・高山俊。来季は覚醒するか=安芸市営球場(撮影・水島啓輔)

 高山は福留を代打要員に追いやることができるのか。来季はレギュラーを奪えるか否かの分水嶺(ぶんすいれい)です。矢野燿大(あきひろ)新監督(49)の下、高知・安芸秋季キャンプでは若手選手たちが汗を流していましたが、中でも注目は来季、プロ4年目を迎える高山俊外野手(25)です。2015年のドラフト会議で1位指名された期待の星がこの2年間は大不振。来季もダメならチームにとっても大きな痛手です。球団内からは「福留が元気なうちに競り勝って、福留を代打に追いやるぐらいにならないとダメ」という厳しい声も…。東京六大学の安打製造機は覚醒しますかね。

自主性重んじ、来季巻き返しの活力生まれるか

 矢野新監督が就任して迎えた高知・安芸市営球場での秋季キャンプ。選手たちの自主性を重んじる新監督の考えで、実戦形式の練習ではノーサインを貫いています。

 「(サインは)出さないよ。(自分で)考えた方がいいじゃん。自分がどうしたいか? いつも言うように指示を待ってやるのと、自分からやりにいくのとでは受け止め方も違う。考えて、自分でやるのはすごい大事。来年の初めの方もなるべくそういう形で考えさせて…自分らがどうするかというのを持って、プレーしてくれたらと思っている」

 選手の発想力を高め、“やらされている”ではなく“自分たちでやる”という意識をチーム内に芽生えさせようという矢野流のキャンプ。どちらかといえば、“こちらの言うことを聞かないと使わない”的な空気が重く立ち込めていた金本前監督の指導姿勢を180度転換させました。

 このコラムでも書いた通り、グラウンド内のムードも前体制のようなピリピリ感が薄れました。アチコチでコーチと選手が、そして選手同士が談笑しながら練習に取り組むシーンが見受けられます。矢野新監督が言う「俺は監督、監督したくないのよ。自分のことも監督と呼ばなくていいから、さん付けで呼んでいい」というライト感覚が背景にあるからですね。

 首脳陣が一方的に抑圧するのではなく、主役である選手が自分の考えや発想で練習に取り組み、野球に没頭する。そうした環境の中から最下位転落の暗いムードを振り払い、来季の巻き返しへの活力を生み出したい…という新監督の狙いが見えてきます。

 「良く言えば和気藹々(あいあい)でチーム一丸になって戦う…となるが、成績が悪ければ『そんな仲良しこよしでやっているからやろ』と批判される。阪神はファンやマスコミを含めて注目度が高いから。要は結果だね。今の流れが結果に連動すればいいという話」とは阪神OBの言葉です。まさにその通り。監督1年目の来季の成績こそが現状を評価されるかどうか…の試金石です。

プロ4年目の分岐点…ドラ1位の肩書きも過去の勲章

 そして、来季が試金石となる、いやプロ野球人生の分水嶺となる選手こそが、プロ4年目を迎える高山俊外野手(25)ですね。15年のドラフト会議で1位指名。ヤクルトとの競合の結果、金本前監督が交渉権獲得のクジを引き当てて、阪神に入団しました。ヤクルトの真中監督(当時)がNPB(日本野球機構)の判を「交渉権確定」と間違えてガッツポーズ。その後、実は阪神が交渉権確定のクジを引き当てていたことが分かった珍しいシーンがありました。

 高山は明大時代はリーグ記録の131安打をマークするなど「東京六大学の安打製造機」という異名を誇っていました。待望のスラッガー獲得に球団内外は沸き立ったものです。プロ1年目の16年は134試合に出場して打率2割7分5厘、65打点、8本塁打を記録し新人王を獲得しました。通算13回の猛打賞は1958年(昭和33年)の長嶋茂雄(巨人)の14回に次ぐ、リーグ2位の記録でしたね。

 誰しもが、このまま順調に育ち、2~3年後は阪神のクリーンアップを打っていると思いましたよ。ところが、プロ2年目の17年は103試合出場で打率2割5分、24打点、6本塁打。続く今季はわずか45試合出場で打率1割7分2里、14打点の1本塁打。まさにジリ貧の状態で、気がつけば島田海や今年のドラフト1位・近本(大阪ガス)らにお尻を突かれていく立場になっています。

 金本前監督にとっても投の藤浪、打の高山の成績不振は大きな誤算だったはずですが、それは矢野新監督にも同じことが言えます。投の藤浪、打の高山が復活、いや覚醒しないと来季も厳しい戦いになるのは目に見えているからです。では、高山は来季、どうでしょうか。

 「打撃は元に戻る可能性はある。金本前監督の指導で、投球をミートするインパクトゾーンを捕手寄りに変えた。手元に引きつける打撃になったんだが、そこから左方向に引っ張る意識が強すぎた。結果として右サイドの開きが早くなってしまった。インパクトゾーンはそのままでいいから、真ん中から外のボールは左方向に打てばいい。そして緩い変化球がくればバットのヘッドがかえるから打球は右方向に飛ぶ…というのが理想。本人も分かっていると思う」

 阪神OBの言葉です。言ってみれば、金本前監督の現役時代の打撃スタイルの追求を止めることで、2年間の不振から脱出することができる? という見立てですね。

 確かに新体制になった秋季キャンプで、高山のバットからは快音が奏でられるようになりましたね。何が何でもボールを引きつけて、右方向に引っ張る…という意識を捨てることができた効果かもしれません。

福留を代打要員に追いやることができるか

 時間はもう待ってくれません。高山にとって来季は本当に重要な1年になります。なぜならプロ4年目です。もうドラフト1位入団というアドバンテージはどこにもありません。中谷、江越や島田海、近本らと横一線の勝負になります。競り負ければ、レギュラー獲得など遠のくばかりです。

 「本当に強いレギュラーになるためには、来季は福留を代打要員に追いやるぐらいでないといけない。福留が衰えてからポジションを与えられるようでは、弱いレギュラーで、見通しも暗い。そういう意味では来季が勝負だ」とは球団内の声ですね。

 福留は来季、42歳を迎えます。しかし、今季も123試合に出場し、打率2割8分、72打点、14本塁打。見事な成績を残しています。13年から阪神でプレーしていますが、常に打線の中核ですね。来季も体調を整えて頑張るはずです。福留という高くて厚い壁を乗り越えることができるかどうか、が高山の今後の野球人生を左右する大きなポイントになりそうですね。

 何度も書きますが、投では藤浪、打では高山の2人。矢野阪神にとっては来季のキーパーソンになるはずです。まさにオフ返上の意気込みで取り組んでほしいものです。

     

【プロフィル】植村徹也(うえむら・てつや) 1990(平成2)年入社。サンケイスポーツ記者として阪神担当一筋。運動部長、局次長、編集局長、サンスポ特別記者、サンスポ代表補佐を経て産経新聞特別記者。阪神・野村克也監督招聘(しょうへい)、星野仙一監督招聘を連続スクープ。ラジオ大阪(OBC)の金曜日、午後10時から「NEWS TONIGHT いいおとな」( http://www.obc1314.co.jp/bangumi/iiotona/caster.html )の『今日のトラコーナー』や土曜日午後6時45分からの「まさとと越後屋のスポーツ捕物帖」( http://www.obc1314.co.jp/bangumi/okini/ )に出演中。「サンスポ・コースNAVI!」( http://www.sanspo.com/golf/tokushu/golf-t24944.html )ではゴルフ場紹介を掲載、デジタルでも好評配信中。

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