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【びっくりサイエンス】宇宙膨張示す「ハッブルの法則」改名か 国際学会が提案 異論も噴出、年内にも結論

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ハッブル宇宙望遠鏡(NASA提供)
ハッブル宇宙望遠鏡(NASA提供)

 宇宙が膨張していることを示す著名な「ハッブルの法則」の名前が変わるかもしれない。米国の天文学者ハッブルより早く宇宙膨張を指摘した別の天文学者の名前を追加し「ハッブル・ルメートルの法則」に変更する案が国際学会で議論されている。年内にも結論が出る見込みだが異論もあり、行方が注目される。

現代宇宙論の支柱築いた大発見

 ハッブル(1889~1953年)は自身の観測を基に「遠い銀河ほど速く遠ざかっている」との法則性を発見し、宇宙全体が風船のように膨張していることを突き止めた。観測を行った天文台を訪れたアインシュタインに、「静止した宇宙」という考え方を捨てさせたことで知られる。現代宇宙論の支柱を築く歴史的な大発見だった。

 高校の地学の教科書にも「1929年にハッブルは、銀河の後退速度と、その銀河までの距離の間に比例関係が存在することを発見した。これをハッブルの法則という」と紹介されている。宇宙膨張といえばハッブルと、広く認識されている。

 ところがハッブルの「発見」の2年前に、宇宙の膨張を主張した人物がいる。ベルギーの天文学者ルメートルだ。

 アインシュタインの理論を使って「膨張する宇宙」「始まりのある宇宙」という考えを導き出した。理論だけでなく、ハッブルらの観測を基に膨張していることを示した。

 観測の精度を高め、明確な結論を出したのはハッブルだが、着想はルメートルの方が早かったようだ。だが知名度の低いフランス語の雑誌に論文を掲載したため、ほとんど注目されなかったらしい。

世界中の天文学者が賛否を電子投票へ

 ハッブルは美しい宇宙の写真で知られる米欧の「ハッブル宇宙望遠鏡」などでその名が広く浸透しているのに対し、ルメートルの認知度は低い。カトリック司祭でもあり、功名心がなかったことが背景にあるとの見方もある。

 ルメートルの名前は埋もれたままでよいのか。この問題意識から、ウィーンで先月開かれた国際天文学連合の総会では「現代宇宙論の発展に貢献したハッブルとルメートルの両者に敬意を表するため」などとして、執行委員会がハッブルの法則を「ハッブル・ルメートルの法則」に改名するよう提案した。

 投票の結果、賛成多数となったが、同連合は「決定に幅広い参加を担保するため」として、年内に世界約1万3500人の全会員を対象に電子投票を行う。

 国際天文学連合の名前は聞き覚えのある人もいるだろう。2006年の総会で太陽系の惑星の定義を明確化し、それまで惑星の一つに数えていた冥王星を、惑星に準じる天体として「準惑星」に“格下げ”した。

国際学会の説明に疑義も

 今回の提案は、そう簡単には決まらないかもしれない。インターネットではさまざまな異論が飛び交っている。「ルメートルの方が業績が早かったのなら、ルメートル・ハッブルの法則と呼ぶべきでは」「同時期に同じ法則を見いだしたロバートソンの名を入れないのか」「ハッブルの下で汗を流した助手のフマーソンはどうなる」といったものだ。

 デンマークの科学史家ヘルゲ・クラフ氏は「今回の総会で示された歴史的経緯の説明の一部は疑わしく、投票に悪影響を与える」などと強く批判する。例えばルメートルとハッブルは1928年の総会に出席し、観測される光の波長が本来より長くなる赤方偏移という現象と、星雲の距離の関連について意見交換したとされたが、クラフ氏は推測に過ぎないと指摘している。

 年内にもまとまる結論は、同連合として推奨する名称であって、天文学者や社会には使用を強制しないという。このため仮に改名されても、教科書が書き換わるかは分からない。

 今年3月には、宇宙論の発展に偉大な足跡を残した英国の理論物理学者ホーキング氏が死去している。今回の複雑な議論を見守りつつ、宇宙に対する考え方がどのように発展してきたのか振り返り、科学者の努力の足跡を再認識したい。(科学部 草下健夫)

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