PR

生活保護などめぐり与野党が火花 後発薬原則使用は「劣等処遇」?「医療費抑制」?

PR

 生活保護受給者や生活に困窮する低所得者の制度改正をめぐり、政府案と野党案が今国会で激しく対立している。生活保護受給者に対し安価なジェネリック医薬品(後発薬)使用の原則化などを盛り込んだ政府案に対し、野党側は「差別だ」と反発。野党は代替案を出し手当や支給額の増額を打ち出したものの、財源が明示できていない。これら法案の審議を早期に決着させなければ、今国会の目玉となる「働き方改革」関連法案にも大きく影響を与えるのは必至だ。

医療費80億円削減も

 「生活保護世帯のみに適用することは差別的な取り扱いであり、劣等処遇ではないか」(初鹿明博議員=立憲民主党)

 「医療上の裁量権に影響を与える問題だ」(長谷川嘉一議員=同)

 13日に開かれた衆院厚生労働委員会。政府の制度改正案に対し、野党側から批判が噴出した。

 これまで生活保護受給者については、希望すれば先発薬が処方されていたが、政府の改正案では安い後発薬の使用を原則化した。厚労省によると、昨年の受給者の後発薬使用割合は72・5%で、全体の65・1%を上回る。しかし医療扶助費は平成28年度1兆7622億円で、生活保護費全体の48%に上る。医療費の抑制は喫緊の課題だ。

 厚労省の担当者は「受給者の医療費は全額公費でまかなっている。自己負担が発生しないため、削減意思が働きにくい」と説明。目標としている使用割合80%が実現すれば、国費負担が80億円(事業費ベースで100億円)削減できるという。ただ、どの薬が効果的かは専門的範疇(はんちゅう)にあり、「医師の裁量権」への影響を危惧する野党側の指摘ももっともだ。

欠席戦術に転換

 こうした議論が深まるかと思いきや、野党側は急遽(きゅうきょ)、戦術を転換させた。

 立憲民主、希望、無所属の会、共産の野党4党派は18日、衆院厚労委を欠席。裁量労働制の下、社員の過労死が発覚した野村不動産について、東京労働局の特別指導の経緯の集中審議を求めたが、与党側が拒否したからだ。そこには今国会の目玉である働き方改革関連法案の成立を阻止しようとする思惑が垣間見える。

 野党筆頭理事で西村智奈美議員=立憲民主=は記者会見で「指導や監督の中立性が約束されないと働き方改革の議論が全く意味のないものになる」と強調。特別指導の基準が不明確であり、厚労省側の詳しい説明を求めた。

 一方、与党側としては生活保護などに関する改正案を早期に可決し、働き方法案の審議に入りたいという意図がある。与党側の理事の一人は、野党の要求に応じて一定時間の集中審議をしてきたとして「働き方関連法案の審議に入らせないための遅延行為と言われても仕方ない」と反論した。

「世帯分離」でも対立

 与野党が対立する論点はもう一つある。

 現行制度では、生活保護世帯の子供が高校卒業後に「金を稼ぐ力」が獲得できるとして「世帯分離」され、保護支給額が下がるが、野党は分離を廃止するよう求めた。政府案では、進学時に一時金(自宅生10万円、下宿生30万円)を支給する新たな制度も追加し、批判の回避に努めている。

 一方で、立憲民主や民進など野党6党は「貧困の連鎖を断ち切る」として、「子どもの生活底上げ法案」(通称)を提出。法案には、生活保護基準の不利な改定への歯止めや、児童扶養手当の月額1万円アップ(現行4万2500円)などを明記した。520億円の経費を見込んでいるが、具体的な財源については「予算の無駄を省き、種々の税制改正をする」(尾辻かな子議員=立憲民主)と述べるにとどまっている。

 政府案は貧困対策として、無料・低額宿泊所に対する改善命令の創設といった規制強化も盛り込んだ。生活困窮者の支援を目的とした札幌市の共同住宅で1月、11人が死亡した火災を受けたものだ。

 どちらの法案に軍配が上がるか。数を頼りに与党側が野党案を排除することも可能だが、その後の働き方改革関連法案の審議への影響を懸念している。国会会期末は6月に迫っており、猶予はない。

この記事を共有する

おすすめ情報