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【映画深層】社会派サスペンス衝撃作「狂覗」 徹夜続きも「映画中毒だから」できる

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社会派サスペンス衝撃作「狂覗」 徹夜続きも「映画中毒だから」できる

映画深層更新
映画「狂覗」の1場面 1/7枚

 わずか5日間で撮り上げた。うち4日は一睡もしていない。「この業界、徹夜といっても、だいたい2時間くらいは休むんです。でもうちらの場合は完徹(完全徹夜)ですからね。もうホント、カメラはずーっと回りっぱなし。でもそんなに大変じゃなかったなと思うのは、この後に作ったもう1本のほうがひどかったんです。7日間で撮る予定だったが、5日目でみんなおかしくなり始めて、危険を感じたほど。こっちはぎりぎり手前で踏みとどまりましたから」と、7月22日公開の「狂覗(きょうし)」を手がけた藤井秀剛(しゅうごう)監督(42)は豪快に笑う。

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ヒチコックに憧れて取り入れた色は

 「狂覗」は劇作家、宮沢章夫(60)の戯曲「14歳の国」を原案に、藤井監督の個性が思いっきり炸裂(さくれつ)した衝撃作だ。

 舞台は中学校の教室。体育の授業で生徒が誰もいない中、教師たちが抜き打ちの荷物検査を行おうとしていた。ある教師が瀕死(ひんし)の状態で発見され、犯人捜しを命じられた生活主任の森が4人の教師を集めたのだが、新任の谷野はこの検査のやり方に疑問を呈す。実は谷野は、以前の赴任校で起きた事件がもとで、心に傷を負っていた。

 というストーリーもさることながら、全体を覆うセピア色の不穏な色調に、教室内の密室劇から急に場面が妄想や回想に飛躍する大胆な構成、さらに斜めや真横のショットを駆使した目まぐるしいカット割りと、凝った映像が次々と繰り出される。

 音声も、アフレコによるせりふが、常に鳴り響く音楽と大音量の効果音の中で飛び交い、まあちっとも心穏やかに見せてくれはしない。

 「幼少期から(サスペンス映画の神様と称された英国の映画監督)アルフレド・ヒチコック(1899~1980年)に憧れて育っているので、その影響はすごくある。特に気を使ったのが妄想のシーンで、中学生たちの危うさと純粋さと性の部分の3つの要素を取り入れた色にしようと思っていた。でもいざ編集でやってみると、その色が出なくて苦労しましたね」と藤井監督。ちなみにどういう色なのかと聞いてみると、「あの色だった、ってことで、理屈ではなかなか」だそうで、結果的には満足しているという。

その1行が面白ければ命懸けで手伝う

 ヒチコックに憧れた藤井少年は、小学校3年のころから8ミリで映画作りを始めている。もともと母方の祖母が、旧満州の奉天(現瀋陽)で満州3大映画館の1つといわれた大陸劇場を経営していて、戦後は福岡に引き揚げて映画館を再建。藤井監督の母親はそこで育っており、東京出身の監督は生まれたときからずっと映画が身近にあった。

写真ギャラリー

  • 映画「狂覗」の1場面
  • 映画「狂覗」の1場面
  • 映画「狂覗」の1場面
  • 映画「狂覗」の1場面
  • 映画「狂覗」を手がけた藤井秀剛監督(藤井克郎撮影)
  • 映画「狂覗」を手がけた藤井秀剛監督(藤井克郎撮影)