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【矢板明夫の中国点描】過去には得体の知れない注射で要人が… 劉暁波、薄煕来の2人が獄中で肝臓がんはミステリーだ

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中国点描

過去には得体の知れない注射で要人が… 劉暁波、薄煕来の2人が獄中で肝臓がんはミステリーだ

矢板明夫の中国点描更新

 中国の民主活動家で、遼寧省の刑務所で服役中の劉暁波氏(61)が末期の肝臓がんのために入院したことが6月末にあきらかになった。その直後、北京で投獄されている元共産党幹部、薄煕来氏も同じく肝臓がんになったと報じられた。5年に一度の党大会を秋に控え、中国の左派と右派を代表する二人の重要人物が同時に病魔に侵されたことは、今後の中国政治の行方にも大きな影響を与えそうだ。

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 劉氏は共産党一党独裁を否定する「08憲章」を発表して拘束され、2009年に懲役11年の判決を受けた。翌年、「中国における基本的人権のために長年、非暴力的な闘いをしてきた」ことを理由にノーベル平和賞を受賞した。改革派知識人の間では、中国の民主化運動を推進する中心人物になってほしいとの期待が強い。劉氏のことを、南アフリカで人種差別と闘い、民族和解を実現させた元大統領に例え「中国のマンデラ」と呼ぶ人もいる。

 一方、薄氏は、最高指導部入りが目された共産党の有力政治家だった。政策理念は習近平国家主席とかなり近く、中国建国の父、毛沢東の革命路線の信奉者である。12年の党大会の前に権力闘争に敗れた。薄氏は重慶市トップを務めた時代に「唱紅打黒」(共産主義を賛美しマフィアを撲滅する)キャンペーンを展開、治安を改善した実績がある。保守派や貧しい層に未だに根強い人気がある。

 13年秋、済南市の裁判所が収賄罪などで薄氏に対し無期懲役の判決を言い渡した時、ある共産党幹部は「劉氏と薄氏は、習政権にとって二つの時限爆弾だ」と表現した上で「刑務所の中にいる二人が、支持者の間で神格化され、反政府運動のシンボルになりかねない。政権内の反対派にも利用される可能性がある」と指摘した。

 中国共産党は今、秋の党大会に向けて、次期指導部のポストをめぐり各派閥による権力闘争が白熱化している。この時期に、劉氏と薄氏が同時に肝臓がんとなったことについて「政治的陰謀だ」との見方も共産党関係者の間で浮上している。

 投獄中に当局者から、得体の知れない薬を注射された元指導者、王洪文氏のケースがにわかに注目された。共産党副主席などを歴任した王氏は文化大革命中、一時毛沢東の後継者の有力候補となったが、1976年に失脚し、反革命罪を問われ無期懲役の判決を受けた。

 王氏と一緒に収監された軍長老の邱会作中将が晩年、香港で出版した回顧録によれば、王氏が邱氏に対し「彼らは私にある薬を注射した。夜は眠れない、胸が苦しくてつらい」と訴えたことがあった。王氏はその後、肝臓疾患のため50代の若さで死去した。文革後、王氏と一緒に失脚した政治家は数多くいたが、薬を注射されたのは王氏だけのようだ。「知名度が高く若い王氏は政治的再起する可能性があるため狙われた」と分析する声もあった。

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  • 薄煕来・元重慶市共産党委員会書記(新華社=共同)