産経ニュース for mobile

【野口裕之の軍事情勢】北朝鮮崩壊後は「中華人民共和国・高句麗省」誕生か 北はレアアースなど地下資源ごと呑み込まれる?

記事詳細

北朝鮮崩壊後は「中華人民共和国・高句麗省」誕生か 北はレアアースなど地下資源ごと呑み込まれる?

野口裕之の軍事情勢更新
中国遼寧省丹東の中朝国境付近で警戒する特殊警察部隊の装甲車 1/5枚

 北朝鮮に関する研究会に複数顔を出しているが、「北朝鮮崩壊後の後継政権」が頻繁にテーマにのぼる。幾つかのシナリオがあるが、今次小欄は世界屈指の埋蔵力を誇る北の《地下資源》を舞台回しにした「後継政権」を考察してみる。もっとも、このシナリオだと「後継政権」は事実上樹立されず、北朝鮮は中国に併呑され、代わって誕生するのが仮称ながらこちら。(※6月5日にアップされた記事を再掲載しています)

<< 下に続く >>

 《中華人民共和国・高句麗省》

 満州国だった中国東北地方に所在する吉林省/黒竜江省/遼寧省の現《東北三省》が「東北四省」になる想定だ。2000年前の朝鮮半島北部は漢王朝の支配下であったが、漢王朝崩壊で、朝鮮半島北部~中国東北地方にかけ高句麗王朝が興った。中国は、高句麗が中華民族が建てており中華圏だと主張する。史実かどうか、判断を下す学識を持たないが、ケタはずれの地下資源が眠る北朝鮮を、中国は「高句麗省」と決め付け、スキあらばソックリ頂戴したい野心を隠していることは間違いあるまい。

 国家の存亡を単一の原因に特定する手法は禁じ手ではあるが、北朝鮮領内の地下資源が支える「自前の核・ミサイル開発」を認識し、「国連安保理事会の制裁決議を受けてなお、なぜ北朝鮮が核・ミサイル開発を、むしろ加速させられるのか?」を分析する上では有効な手段であろう。さらに「中国による北・地下資源の乱獲」+「北朝鮮側の警戒と最側近粛清」など、中朝国境のキナ臭い情勢が一定程度あぶり出せる。一見逆説的ではあるが、中国側の「国連決議に従い、懸命に北朝鮮に制裁を科している」という抜群の「演技力」にも、中国が描く「東アジア秩序の中華化」戦略が透ける。

地下資源は核・ミサイル&通常兵器の「素」

 まず、レアアース(希土類)を含む北朝鮮内の地下資源埋蔵量から入る。が、閉ざされた国家のこと、確定的な数字に乏しく諸説が入り乱れる。ただ、世界屈指という見方では完全に一致する。日韓併合(1910~45年)以来「鉱物の標本室」と異名をとり、開発が進められてきた北朝鮮の地下資源の種類は、併合時代の朝鮮総督府や米国・地質資源調査局、大韓鉱業振興公社などの調べを総合すると、開発競争力を有する地下資源が最低でも20種で、うち8種が世界ランク10位以内に入る。

 例えば、マグネサイト2位(3位説アリ)▽黒鉛3位(4位説アリ)▽亜鉛5位▽タングステンとレアアース6位▽金と鉛7位▽鉄鉱石10位…。核兵器製造の中核的要素を占めるウランの採掘可能な推定埋蔵量は、確認埋蔵量が明らかな国々を破り、世界一との見方も日韓両国の公的機関の間で有力となっている。

 韓国国会の調査機関・立法調査所の調べでは、北朝鮮地下資源の潜在的価値は640兆円(異説アリ)にのぼり、韓国の23倍近くに達する。

 中には高熱への耐性を備えロケット・エンジンに、耐蝕性に優れ原子炉の素材に、おのおの適した種類も多い。核・ミサイル開発に貢献する物質を、日時・量に左右されず国内で採掘できる北朝鮮の地下資源環境は、日米韓にとり脅威だ。

 ところが、一部の地下資源は掘削条件に課題がある。質的にも、兵器や民生品に取り入れるにあたっては高い技術力が必要になる種類も散見される。莫大な資金が必要だということ。そうしたハードルを「支援」し、かなりな数の鉱山を「共同開発」してきたのが中国である。

写真ギャラリー

  • 中国遼寧省丹東から「中朝友誼橋」を渡って対岸の北朝鮮・新義州に向かうコンテナトラックの車列。中朝関係の悪化に伴い通行量は大幅に減少している
  • 中国の楊潔●(=簾の广を厂に、兼を虎に)国務委員(左)の表敬を受け、握手する安倍晋三首相=5月31日、首相官邸(斎藤良雄撮影)
  • 北朝鮮の労働新聞が掲載した、新型の中長距離弾道ミサイル「火星12」の発射実験に立ち会う金正恩朝鮮労働党委員長(中央)の写真(共同)
  • 北朝鮮の労働新聞が5月15日掲載した、新型の中長距離弾道ミサイル「火星12」と、金正恩朝鮮労働党委員長(中央)の写真(共同)