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【防衛最前線(107)】自衛隊で第二の人生 北海道と本州をつないだフェリーの「はくおう」「ナッチャンWorld」

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自衛隊で第二の人生 北海道と本州をつないだフェリーの「はくおう」「ナッチャンWorld」

防衛最前線(107)更新
「はくおう」(防衛装備庁提供) 1/5枚

 自衛隊には戦車や護衛艦、戦闘機をはじめ多様な装備品が存在する。いずれも自衛隊向けに作られた“オーダーメード”ばかりだが、その数少ない例外が、島嶼防衛や災害派遣時の輸送手段として期待されている民間輸送船「はくおう」と「ナッチャンWorld」の2隻だ。かつて北海道と本州を結ぶ高速フェリーとして活躍した性能を生かし、さまざまな訓練や昨年4月の熊本地震などで大活躍。有事における補給の“切り札”として第二の人生を忙しく送っている。

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 2隻は現在、フェリー会社や商社など8社が共同で設立した特別目的会社「高速マリン・トランスポート」(東京)が所有し、平成28年3月から37年12月まで10年近くの契約で、自衛隊が優先的に利用する権利を持っている。契約に先立ち、陸上自衛隊が26年夏ごろから2隻を訓練輸送などに利用しており、この“お試し期間”を経て採用された形だ。

 普段は自衛隊の訓練や災害派遣などに利用。緊急時には72時間以内に出航できる態勢を取ることが義務づけられている。また、他国から武力攻撃を受けるなどして防衛出動の事態に至った場合は、自衛隊に船そのものを提供して海上自衛官や予備自衛官が乗組員となり、現場海域へ向かう。

 自衛隊がこの2隻を選んだのは、その輸送力と速力に注目したからだ。

 以前は新日本海フェリーで活躍していたはくおうは、総トン数約1万7300トン、全長約199メートル、全幅約25メートル。乗客507人や大型車約200台を運ぶことができ、速力も29・4ノットまで出すことができる。

 また、ナッチャンWorldは、東日本フェリー(現在は解散)などで青函航路の高速フェリーとして活躍した双胴船で、総トン数約1万700トン、全長約113メートル、全幅約30メートル。乗客508人や乗用車110台、大型車50台を運ぶことができ、速力も40ノットまで出すことができる。

 いずれも自衛隊の輸送艦で最も大きい「おおすみ」型と比べても遜色なく、新しく建造するよりも費用は安くて済む。防衛装備庁によると、優先利用に伴う契約金額は2隻で約250億円だ。

 既に自衛隊の利用に合わせた改修も施され、このうちナッチャンWorldは昨年秋に終了。交代する形ではくおうが今年3月までの予定で改修中だ。改修作業では、海水から飲料水を作る「造水装置」の設置や座席の取り外し、戦車や装甲車といった重量物を搭載するための補強などが施されている。

 なお、名称は民間フェリー時代を踏襲している。それぞれの母港は、はくおうが相生港(兵庫県)、ナッチャンWorldが函館港(北海道)だ。

写真ギャラリー

  • 「ナッチャンWorld」(防衛装備庁提供)
  • 自衛隊の統合演習で車両を輸送した「はくおう」=平成27年10月(防衛省統合幕僚監部提供)
  • 自衛隊の統合演習に参加した「はくおう」=平成27年10月(防衛省統合幕僚監部提供)
  • 自衛隊の統合演習で車両を輸送した「はくおう」=平成27年10月(防衛省統合幕僚監部提供)