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【防衛最前線(104)】悲劇の教訓受け選ばれた次期飛行点検機「サイテーション680A」

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悲劇の教訓受け選ばれた次期飛行点検機「サイテーション680A」

防衛最前線(104)更新

 「私どものかけがえのない家族が果たせなかった分まで国防という崇高な任務を全うされますようお祈り申し上げます」

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 昨年10月22日に防衛省で行われた平成28年度の自衛隊殉職隊員追悼式で、平岡奈々子さんは静かに語った。

 平岡さんの夫、平岡勝2等空佐は航空自衛隊のU125飛行点検機の元機長。4月6日、鹿児島県の山中に墜落し、平岡2佐ら乗員6人が殉職した。

 飛行点検機は自衛隊基地の航空管制施設が航空機の着陸を誘導するために発する電波などの機能を確認するための装備。空自はU125を3機、YS11を2機の計5機態勢で運用していた。

 U125は対地接近警報装置(GPWS)を装備しており、地面への急速な接近や急降下があった場合に警報装置が作動する。だが、墜落の危険がなくても誤作動する場合があり、「パイロットが『また誤作動か』と思って音を消すことはよくある」(空自関係者)という。事故機は警報が鳴った2秒後に音を消しており、これが事故原因の1つになったと考えられている。

 平岡2佐らの殉職から約半年後。防衛省は新たな飛行点検機として、米テキストロン社製の「サイテーション680A」を選定したと発表した。ビジネスジェット機などに使われることが多い汎用機だが、事故で失ったU125の代替機として1機、老朽化したYS11の後継機として2機を取得する。

 機種選定では、U125事故の教訓を生かすことが重視された。サイテーションは山の標高など地図データと衛星利用測位システム(GPS)を利用した強化型のGPWSを搭載。警報の誤作動を防ぎ、乗員が的確に危険回避措置をとることができるようになることが見込まれる。

 今回の選定ではカナダ・ボンバルディア社のチャレンジャー650、仏ダッソー・アビエーション社のファルコン2000Sも提案されたが、すべてが強化型PSWSを搭載していた。事故再発防止を願う平岡さんらU125事故の遺族の意思が選定基準にも反映された形だ。

 サイテーションが選ばれる決め手となったのは、価格の安さと、短い滑走路でも安定して離着陸できるなどの機能・性能面だ。

 他の2機種が乗員19人であるのに対し、サイテーションは10人で、機体全長も約1~2メートル短い。これが価格に反映され、機体購入費は1機約33億4000万円で、20年分の燃料費(約20億4千万円)や支援器材費(約9千万円)が低く抑えられた。

 一方、飛行点検機は日本最東端の南鳥島(東京都)での運用も行うため、約1370メートルの短い滑走路でも離着陸しなければならない。サイテーションは約899メートルでも離着陸でき、要求を満たしていた。硫黄島(同)から南鳥島へ向かう途中で天候条件などから空自入間基地(埼玉県)に引き返す際に必要となる航続距離(3260キロ)も確保されている。

 防衛省は平成31年度末までに2機を取得。32年度から運用を開始するとともに、3機態勢を整えたい考えだ。(杉本康士)

写真ギャラリー

  • 航空自衛隊のU125飛行点検機。サイテーションとともに運用される(空自提供)
  • 航空自衛隊のU125飛行点検機。サイテーションとともに運用される(空自提供)
  • 航空自衛隊のU125飛行点検機。サイテーションとともに運用される(空自提供)
  • 航空自衛隊のU125飛行点検機。サイテーションとともに運用される(空自提供)
  • 航空自衛隊のU125飛行点検機。サイテーションとともに運用される(空自提供)
  • 航空自衛隊のU125飛行点検機。サイテーションとともに運用される(空自提供)