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【防衛最前線(103)】前海上幕僚長がMCH101ヘリコプターにこだわったワケ

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前海上幕僚長がMCH101ヘリコプターにこだわったワケ

防衛最前線(103)更新
海上自衛隊が掃海機として運用しているMCH101ヘリコプター(海自提供) 1/8枚

 海上自衛隊トップとして不本意な去り際だったに違いない。武居智久前海上幕僚長は勇退した12月22日の6日前のタイミングで、訓戒処分を受けた。

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 問題になったのは、海自の次期多用途ヘリコプターの機種選定をめぐる武居氏の発言だ。防衛省は特別防衛監察の結果、部下に特定の機種名を例示したため、選定手続きの公正性が十分に確保されなかったと結論付けた。

 「特定の機種」とはMCH101ヘリコプターだ。

 平成27年3月26日、機種選定の経過報告を受けた武居氏は、その内容に疑問を持った。選定基準から判断すれば小型機のSH60Kが有利になってしまうからだ。23年3月の海上自衛隊会議では「大型の機体が必要」と決まっていたはずだが…。

 MCH101は32人が搭乗可能で、航続距離は1370キロであるのに対し、SH60Kの乗員は12人で航続距離800キロ。災害時の負傷者輸送も念頭に置いた当初の運用構想からすれば、MCH101が有力候補となる。

 だが、武居氏に示された選定基準は必要な乗員が少数で、低価格のSH60Kが選ばれやすい内容になっていた。防衛省関係者は「海幕と(防衛省背広組の)内局の協議の結果、コストを重視することになった。大型ヘリは艦載機として不都合という意見もあった」と説明する。

 大型機のMCH101が不利になる選定基準のままでいいのか。海自は同型機を掃海機などとして6機しか保有しておらず、維持・補修費用が高コストとなる。反対に、SH60Kは74機調達しており、1機でも墜落したり不具合が発生したりすれば、点検のためすべてのSH60Kの運用が止まってしまう-。そう考えた武居氏の一言が命取りだった。

 「運用構想上は、例えばMCH101などの大型機が必要とされていたのではなかったのか。海自として小数機種運用の負担の軽減など幅広く、防衛構想や海自航空機の防衛力整備にも目を向けた検討が必要だ」

 防衛監察本部関係者は「具体的な機種名を挙げていなければ問題なかった」と指摘する。

 武居氏の発言を受け、海幕幹部は大型ヘリが有利となるよう選定基準の修正を内局担当者に要請。基準修正に必要な海幕内部の会議も行われておらず、監察本部は「このような手続きは、適切なものとはいえず、海幕内での円滑な業務の遂行に支障を与えるものであった」と報告した。

 「不適切と監察された事項があることを深く反省し、国民の皆様の信頼回復に努めます」

 12月16日に記者会見した武居氏の表情には悔しさがにじんでいた。海自幹部は武居氏の胸のうちについて「自分は軍事的合理性を重んじて指示しただけだという思いがあったのではないか。逆に、なぜ選定基準が大型機から小型機に変わってしまったのか、今でも腑に落ちないと思っている」と代弁する。

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  • 海上自衛隊が掃海機として運用しているMCH101ヘリコプター(海自提供)
  • 海上自衛隊が掃海機として運用しているMCH101ヘリコプター(海自提供)
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