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【野口裕之の軍事情勢】中国の狼藉に苦しむ国は「ウルヴァリン戦略」を学べ! 米軍の対中国軍戦略はコミック・ヒーローがもたらした…

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中国の狼藉に苦しむ国は「ウルヴァリン戦略」を学べ! 米軍の対中国軍戦略はコミック・ヒーローがもたらした…

野口裕之の軍事情勢更新

 UFO(未確認飛行物体)追跡や超常現象の研究まで手掛けた米軍のこと。コミックや映画のヒーローをヒントに軍事戦略を打ち立てても不思議あるまい。安全保障問題を得意にするウエッブ誌ザ・ディプロマットに掲載された米空軍大佐の論文に登場した《ウルヴァリン戦略》は、中国の軍事力を背景とした狼藉におびえる東南アジアの国々を、奮い立たせるカンフル剤に成り得るかもしれない。ウルヴァリンはイタチ科の小動物クズリの英語名。米コミックX-MENやハリウッド映画の主人公の一人で、鉤爪を武器にするミュータント(超人)でもあるが、体長1メートルに満たない動物のクズリもまた勇敢で粘り強く「小さな悪魔」と畏敬される。自分より大きなオオカミやコヨーテ、ピューマ、果てはヒグマなどの獲物を奪い取るという。空・海軍力で中国にかなわぬ東南アジアの国々が、凶暴な大国・中国を牽制する秘策とは…

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小動物クズリのごとく

 大佐は論文で、南シナ海における米国の同盟・友好国に、乱暴に総括すれば「クズリを見習え」と言っている。

 《クズリは食には適さず、側に寄れば危険で、避けるべき厄介で攻撃的な捕食動物だ》

 要は、侵略して得られるメリットに比べ、失う代価の方が大きいと中国に思い知らせる抑止戦略。と、ここまでは安全保障のイロハで目新しくはない。ただ、小欄はクズリを例に採った表現手法は、中国に対抗したくとも対抗できぬ東南アジアの国々のプライドを喚起するためには、効果的だと感じる。

 クズリはちょっと見は愛嬌があるが、内に秘めた闘争本能は驚くほど旺盛だ。食糧事情が乏しい冬になると、シカやヒツジは言うに及ばず、前述した獰猛な肉食獣やヒグマが倒した獲物を強奪する。

 大佐はクズリが醸し出す戦略性に着目したが、戦略論に入る前に、クズリが備える「作戦」「戦術」レベルでの実力に触れる。

 小臼歯+アゴは頑丈で、小型の獲物は首部など急所に噛み付く。ところが、大型動物には「対称戦」を回避して「非対称戦」に持ち込む。例えば、木の上から「奇襲攻撃」を敢行し、強靱なアゴで脊髄や延髄といった「敵中枢をピンポイント攻撃」する。四肢は短く丈夫で10~15キロを無休で走破し、「行軍」距離は1日最長45キロに達する。足の構造が特殊で、表面張力を利用した時速40キロでの、カンジキを履いたような「雪中行軍」を特技とする。泳げる上に昼夜を問わず行動可能な「全天候型」。岩の割れ目や木の根元、他の動物の古巣に草や葉を敷いて、高度に「カムフラージュ」した「根拠地」を建設する。