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【話題の肝】東京五輪を前にLGBTへの理解、深めよう 「素の自分」でファッションショー…大学で支援広がる

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東京五輪を前にLGBTへの理解、深めよう 「素の自分」でファッションショー…大学で支援広がる

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 「誰もが暮しやすい社会になってほしい」-。ゲイやレズビアン、バイセクシュアルやトランスジェンダーなど、性的少数者(LGBT)の理解者を増やそうという動きが、大学生の間で少しずつ始まっている。特に日本は、2020年東京五輪を間近に控え、差別と偏見のない社会づくりが問われている。海外のアスリートの中にはカミングアウト(告白)している人も少なくなく、対応の姿勢を各国が注目するからだ。啓発アニメの制作や既存の男らしさ、女らしさにとらわれないファッションショーなど若者らしい感性が光る形で、取り組みが進んでいる。(油原聡子)

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五輪に向けて、多様性認めて

 「目標は2020年の東京五輪までに、差別と偏見のない多様な生き方を認める社会を作ること」

 LGBTについての支援啓発活動を行なっているのが、民間団体「青山BBラボ」は、こんな目標を掲げている。

 青山学院大学総合文化政策学部の岩渕潤子客員教授の授業をきっかけに昨年生まれた。これは大学の正規のカリキュラムで、今年は、学生7人が参加している。

 団体の代表を務める、岩渕教授は「海外では、日本よりもLGBTが認められている国もあり、アスリートでLGBTを公表している人もいる。日本でも、多様性を受け入れる社会が求められている」と話す。

 今年度は、アメリカ・シカゴの映像作家の男性が作ったアニメの日本語吹き替え版を制作している。物語は、フライドポテトやフランクフルトなど、ジャンクフードを模したキャラクターたちが通う高校が舞台。LGBTをはじめ、いじめや体形の悩みなど、10代後半から20代前半にかけて直面する悩みを取り上げた内容だ。

 岩渕教授は「LGBTは本人がカミングアウトしない限り周囲から分かりづらく、議論が難しかった。このアニメで、10代の子供たちに何らかの気づきになってもらえれば」と話す。

 同大3年の村上諒子さん(21)は「自分はLGBTのことを分かっていなかったけれど、活動を通じて、実は自分の周囲にいてもおかしくないと認識できた。知らないのは、知ろうとしていないからで、知ろうとすることが大事なんだと思えた。アニメを見た若い人が自分の親に話して、広がっていったら良い」と話す。

 電通が行なった「LGBT調査2015」によると、日本のLGBTの割合は、7・6%とされている。岩渕教授は「誰もが過ごしやすい社会を作るには、LGBTではない人たちが行動していくべきではないでしょうか」と話している。

ファッションで多様性を表現

 若い世代に、LGBTについて知ってもらい、理解者になってもらおうという取り組みもある。

 会場に設置された大型モニターに、一人の男性が映し出された。「僕は、ゲイです」。男性は性的指向について気づいたきっかけや、悩みやファッションについて語り続ける。「ゲイについて、言葉は知っていたけれど、どんなものか具体的には知りませんでした」「メンズやレディースじゃなくて、その人の個性で服が選べたらいい」

 30分ほどのドキュメンタリー映像に登場したのは5人。心と体に違和感のあるトランスジェンダーの人やLGBTの理解者の女性もいた。

 平成27年12月10日、明治大学駿河台キャンパスで開かれた「ジェンダーグラデーションファッションショー」だ。ドキュメンタリー映像に登場した5人が再び登場。ゲイの男性が花のモチーフの付いた衣装を着用。パンツスタイルのウェディングドレス姿を披露した人もいた。

 ショーは、ファッションを通して、大学内にLGBTの理解者を増やそうと、明治大学情報コミュニケーション学部ジェンダーセンターが主催したキャンペーン「メイジ アライ ウィーク」(同12月7~11日)のイベントの一つだ。アライとは、「同盟者」を意味する英語からきており、LGBTの理解者のことだ。

 実行委員会の学生代表を務める、同大3年の松岡宗嗣さんは「ファッションという身近なテーマなら、若い世代に届きやすいと思った。LGBTの通いやすい大学になってほしい」と話す。

 イベントのきっかけは、今春に行なわれた明治大学情報コミュニケーション学部の授業。松岡さんはゲイで、学生に向かって講演、アライの必要性を訴えた。授業後のアンケートでは、学生の9割が「アライ」について肯定的に捉えていることが分かった。松岡さんは「若い世代は、LGBTについての知識がないだけで、明かな偏見はないのかと思った」と話す。

 授業を担当した、田中洋美准教授は「話をしてくれた2人は、どこにでもいるさわやかで普通の大学生。聞いていた学生たちは、当事者を初めて見た人も多く、衝撃を受けたようです」と話す。

 都市部の大学では、当事者サークルが存在するところもあるが、周囲からの差別や偏見を恐れ、LGBTであることを隠して学生生活を送っていることがほとんどだ。「LGBTを隠していると、自分の話ができずに大学生活が楽しめない。理解者を増やすことで、LGBTの通いやすい大学にしたかった」と松岡さん。

 そこで、LGBTの理解者を増やそうと、松岡さんらが企画を同大情報コミュニケーション学部のジェンダーセンターに持ち込み、「メイジ アライ ウィーク」の開催が決まった。

 ファッションショーの衣装は実行委員会のメンバーが作製。さらに、白いファッションアイテムを身につけて写真を撮影し、インターネットに投稿する「アライ イン ホワイト」も実施した。「光の3原色を混ぜると白になる。LGBTだけでなく、みんな多様性のなかの一つだという意味を込めて、白をテーマにしました」と松岡さん。

 実行委員会によると、キャンペーン全体の参加人数は千人を超えたという。松岡さんは「予想より多くの人がイベントを好意的に受け止めてくれた。LGBTに限らず、どんな違いに対しても認め合い、生きやすい社会にしていきたい」と話す。