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【野口裕之の軍事情勢】9・11の予兆を米CIAに通報できる凄腕・仏諜報機関がついていけぬとは…

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9・11の予兆を米CIAに通報できる凄腕・仏諜報機関がついていけぬとは…

野口裕之の軍事情勢更新

 パリ同時多発テロを受け、テレビのワイドショーで数多くの素人コメンテーターが、フランス諜報機関の不手際を非難している。情緒的不満・不安を誘発するテロリストの狙いに寄り添う直感的発言は軽過ぎるが、百数十人もの人々が亡くなっており、ほめられた結果ではない。が、手の内を明かすため公表できぬ未然防止案件は今年だけで10件前後。仏諜報機関は3000人以上が殺された9・11(米中枢同時テロ/2001年)の予兆も察知し、米側に伝えていて、実力は並ではない。しかし、今回がそうであるように、攻撃手法・標的変更の「選択権」はテロリスト側に有る。テロの“進化速度”に、民主主義国家の諜報機関と法律がついてゆけぬのが現実だ。小欄は9・11の前後、イスラム教徒の多い英国に駐在したが、中東や南・中央アジアにエージェントを送り込んでいた諜報関係者の嘆きは印象的であった。

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9・11の予兆を米に通報

 「移民三世以降をリクルートして、時間をかけナマリや文化をたたき込めば、それなりに仕上がる。だが、コーラを飲み、ハンバーガーを食べ、毎日シャワーを浴びられる生活はいかんともしがたい。現地での任務に耐え切れず、半年~1年で帰国する若い高学歴者は多い」

 仏諜報機関も同種の悩みを抱えながら、国内外でエージェント育成を手掛ける。例えば…

 《仏国防省対外安全保障総局=DGSE》は2000年、ウサマ・ビンラーディン(1957~2011年)がアフガニスタンでロシア・チェチェン共和国のイスラム過激派と米仏独航空会社数社の旅客機乗っ取りを謀議した事実を掌握。最終的にユナイテッド/アメリカン両社に的を絞る。情報源は、イスラム武装勢力タリバンと交戦中のアフガン軍閥が、ビンラーディン率いるアルカーイダに潜り込ませた間諜だったが、DGSE自体も、欧州でリクルートしたイスラム教徒を「聖戦士志願者」として、アルカーイダ訓練キャンプに送っていた。DGSEはCIA(米中央情報局)に通報したが、なぜか食いつかなかった。8カ月後、両航空会社機はニューヨークの世界貿易センターや米国防総省に突っ込む。

 パリ同時多発テロでも、各機関は発生後3日もたたぬ内に、国内過激派拠点など168カ所を一斉捜索し、武器を押収するとともに23人を逮捕。主犯ら一味が潜伏していたアジトも急襲した。当然ではあるが、要注意人物に常続的監視を行っていた証左でもある。