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【教育再考】世間知らずの教職員に民間研修が急増中 接客業、電話応対、果ては大型船の操舵まで

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世間知らずの教職員に民間研修が急増中 接客業、電話応対、果ては大型船の操舵まで

教育再考更新
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 大学卒業後すぐに教壇に立つケースが多いことから、「世間知らず」と批判されることも多かった学校の教員が、民間企業で研修を行うケースがこの10年間で倍増している。近年、人材供給の要である学校現場に対する企業の関心は急速に強まっており、社会人経験者の採用枠を増やす傾向も出ている。閉ざされたイメージのあった教育現場は、社会に開かれていくのだろうか。

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 海運大手「日本郵船」で行われる教員研修。参加した教員数人が、操舵(そうだ)室の機能を再現したシミュレーターで大型船の操舵作業を体験した。

 航行中、船員たちは、何かの危険に気付いた場合、常に声をかけ合うことでコミュニケーションを図る。情報の共有によって危険を回避することが、命を守ることに直結する。

 学校現場では、教員間のコミュニケーション不足で「いじめ」についての情報が共有されず、結果的に子供の自殺という最悪の結果につながる事例も報告されている。命を守ることに直結する研修として教員の関心も高く、教員らは役割を分担しながら真剣な表情で操舵に取り組む。同様に、工場での研修も安全管理の手法や意識が学校現場に通じるとして注目度が高いという。

 企業での教員研修を仲介している「経済広報センター」によると、同センターの平成27年の研修には前年より260人多い過去最多の教員1409人が参加。平成17年の633人から倍以上に増えた。

 同センターの教員研修は、昭和58年に1社5人からスタート。製品事故やリコールなどの不祥事が相次いだ危機感から、企業側が「企業の社会的責任」(CSR)を重視した風潮もあり、8年には55社へと急増した。「総合的な学習の時間」が取り入れられ、体験学習などが注目されたことも追い風となった。

 近年では、優秀で社会適応力の高い人材を求める立場から、教育現場に実社会への理解を深めてもらいたいという思惑から、企業側が積極的に研修を受け入れているという。

 大手スーパーの「イトーヨーカ堂」では、店舗での売り場実習などでの接客研修を実施。保険大手「第一生命保険」では電話応対を模擬体験させるなど、それぞれの企業が独自の研修プログラムを行っている。

 同センターの研修参加者は、勤続10年目の教員が中心。職場の“兄貴分”として後輩の育成に眼を向け、学校の中核を担う年代だという。担当者は「中堅教員らは、風土の異なる民間企業で若手への接し方をどのようにしているのか、といった人材育成の観点から強い関心を示すという。民間企業でも、共有の課題を抱えているということで励みにもなっている」と話した。

 一方、学校側からも、社会人経験者を教員として活用しようとする動きが強まっている。

 文部科学省によると、教員を採用している68の都道府県・政令市や自治体連合で、社会人経験者向け特別採用試験を実施しているのは40団体にのぼり、平成17年度の20団体未満から倍増している。民間企業の社員らが教壇に立つ「出前講座」も、平成26年度以降、大手企業を中心に536企業・団体(9月3日現在)が参加している。

 文科省の担当者は「子供の可能性を開花させるには、学校教育に多様な力が必要だ」と、民間と学校の交流の深まりに期待を寄せている。